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さっきまで掌にあった雲が
もう何処かへ行ってしまった
同じように悲しみも
消えてなくなればいいのに

生まれたての孤独がまるで
マグマのように
身体の芯で煮えたぎる
強さへと姿を変えながら

深い眠りから目覚めるように
歴史という名の怪物に
飲み込まれながら生きていくんだ

操るように
操られるように
見渡す限りの生命と水の饗宴
自由という言葉の虚しさを抱えつつ

私は口紅を引き直す
ピリオドを打つみたいに
真っ直ぐに
つかまえられない心そのままに

真っ暗闇で繋いだ手
君のおでこにそっと口づけてみる
触れるか触れないかわからないくらいに


未来がガラスのように砕ける音を聞いた
これは大きな試練だと神々は口々に叫ぶ

今この瞬間に君を宝物にした事は
伝えないでおくよ
この原野の真ん中で
確かめられるものは何もないから

ただ君の一番近くに居られたらと思う
出来るだけずっと

私は私のピリオドに
小指を差し出して
ぎゅっと目を閉じる
もう二度と離さないで欲しいから


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読んでいただきありがとうございます。

ずっと昔、舞台をやっていた時に、本番前にメイクをするのですが、口紅を引く前と後では空気が変わったような気がしました。その事を思い出して。

女性の普段するメイクとはまた違うのかもしれませんが、あれは何でしょうね? もう後には引けないというか、覚悟みたいなものが降りて来るというか。

それと安曇野は今では緑豊かなイメージがありますが、近くにはアルプスの山々が迫り、川は網目のように流れ、荒れた大地だった時代の姿がまだ見え隠れしているようです。神様はまだ険しい自然の姿をして、私たちを睨みながらも見守ってくれているのかもしれません。

読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。