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ACS:腹部コンパートメント症候群

こんにちは。ぜぜまるです。
昨日は研修医の同期でおでん会をしました。冬のおでんはおいしいですね~。

前回の続き、腹部コンパートメント症候群の診断治療について説明していきます。

腹水・腹腔内出血などの増加により腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)が亢進すると、腹部コンパートメント症候群(abdominal compertment syndrome:ACS)を引き起こします。

ACSにより
・腹腔内臓器灌流圧の低下による臓器虚血
・下大静脈圧迫による心拍出量低下
・横隔膜挙上による換気不全
など多臓器不全に陥ってしまう、こわい病態です。

ACSの診断

腹腔内圧(IAP)は膀胱内圧で代用できます。尿道カテーテルに三方活栓と圧トランスデューサーをつければCVPや動脈圧ラインなどと同じ要領で膀胱内圧を測定できるため非常に簡便です。

○○では、IAP≧12mmHgを腹腔内圧亢進としており、さらにIAP>20mmHgで、新たな臓器不全があれば腹部コンパートメント症候群(ACS)と位置づけています。

腹部灌流圧(abdominal perfusion pressure:APP)は、平均血圧(MAP)から腹腔内圧(IAP)を差し引いて求められます。下の公式により、腹腔内圧が上がると腹部灌流圧が下がってしまい、臓器虚血に陥るというわけです。さらに言うと、腹部臓器虚血を防ぐために、腹腔内圧(IAP)を下げるか、平均血圧(MAP)をあげるかのどちらかで対応します。

APP = MAP - IAP
APP:腹部灌流圧 MAP:平均血圧 IAP:腹腔内圧

ACSの治療

腹腔内圧(IAP)を低下させるための治療ですが、

①腹壁コンプライアンスの改善
・鎮痛、鎮静、筋弛緩薬投与
・頭位挙上>30度

②消化管内容物の排除
・経鼻胃管、減圧
・直腸減圧
・胃、大腸蠕動運動促進薬

③腹部貯留液の排除
・腹腔穿刺
・経皮的ドレナージ術

④適切な体液バランスへの修正
・輸液の制限
・利尿剤
・膠質液(アルブミン)や高張液の投与
・血液透析、限外濾過

⑤臓器サポート
・適切な人工呼吸管理

重症病態の間は少なくとも4時間ごとにIAPを測定し、適宜治療を調節し、IAP<12mmHgを目標とします。


参考文献:白井邦博,「Abdominal compertment syndrome の診断と対処」,2015
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/30/6/30_748/_pdf/-char/ja