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元カレに新しい恋人ができたらしい、あれが最後だったのか。

23歳の9月から、24歳の6月まで付き合っていた人に、新しい恋人ができたらしい。

ときどき連絡を取っていたものだから、本人からご丁寧に連絡があった。

「彼女出来たから、連絡とか取れなくなっちゃった」

このメッセージを見て、悔しいけどちょっと笑ってしまった。半年くらい前、私に新しい恋人ができたときに送ったLINEがちょうどこんな文面だったのだ。(ちなみにその相手とは電撃で別れた。)くそ、こんな時までユーモアを忘れないあたりが。

ふーん、彼女できたんだ。

「カタブツな感じの人なのに、どうやって付き合うに至ったんだろう」と純粋に疑問を感じる。と同時に「これで私も、ちゃんと前に進めるんだろうか」と反射的に思う。そんな自分にハッとする。もう1年が経とうとしているのに、やっぱりまだ囚われていたんだろうか?

24歳の6月に、唐突に振られた。

「〇〇ちゃん(←私)のこと、根本的に信用できないんよ」と言われた。

日付が変わろうとする金曜日、いつものように電話をしていた。「お互い、嫌に思ってるところとか、直してほしいところってある?」という、よくある話題だった。軽いものを言い合った後で「ねえ、もっとないの?!」と私が聞いたのが間違いだったのか。ちょっと言いづらそうに、でも、はっきりとした声で「根本的に信用できないんよ」と言った。

「こ、根本的に信用できないってどういうこと?」ちょっと動揺しながら、笑い話になるのかな〜と思って聞いたら、返ってきたのは長い静寂だった。「え、信用できなくて、どうするの?…別れたいってこと?」恐る恐る聞いたら「そうするしかないんかなぁ」と、間延びしたような、でも妙にはっきりした声が返ってきた。「あー、入ったな。」と思った。この人は、このモードに入ると、もう何も聞かないんだよな。

それで、(ちょっと食い下がったけど)別れるということで承諾した。一旦、友達路線でいくことにした。別にヨリを戻したいと思っていたわけでもないけど、仕事も大変な時期だったし、完全に切れてしまうのはさすがに耐えられなかった。

その後もときどき連絡を取っていたし、一度だけ会うこともあったけど「これは、もう付き合うことないな」と思った。また信頼関係を一から築くのは難しいだろうな、というのが確信としてあった。多分、あっちも同じことを思っているということが、なんとなく表情で分かった。好きという気持ちはまだあるし、楽しいのに。一度切れた糸がもう元には戻らないことが分かって、無性に切なかった。こういうのを「情」って言うんだろうか。

その日の別れ際、漠然とした絶望感みたいなものを感じた。「あーこれが最後になるのかもしれないな」って思った。

あのとき会ったのが、話したのが、本当に最後だったのか。というか、あれが最後に「なった」のか。最後というのは、未来から遡って決まるんだな。

そんなことをボーッと考える。

思ったより大丈夫だな、なんて思いながら恐る恐る自分の胸のあたりを見る。なんかスースーすると思ったんだ。ぽっかり胸に穴が空いているってわけじゃないんだけど、ほんとに小さな穴が、確実に貫通しているのが分かる。息をするたびに、風が通り抜ける。怖くて向こう側は覗けない。

あいつ、私のことを家族とか職場の人に話すとき、私のことを「彼女」って呼んでたんだよ。それが、なんかやだなぁって思ってたんだよね。

あー、この先、あの優しさと愛情を独占できる人がいるのか。羨ましいな。

緩やかに離れていっていることは分かってて、もう近づかない離れ方だとも分かっていたけど、それでも、もう交わることはないのか。

やっぱりまだ、ほんのり好きだったのか。グラデーションが一気にゼロになるのってキツイなぁ。

まあ、なんとなく違和感はあったけど!!ミリ単位の違和感が、いきなり伏線になるこの感じ。

おい、なんで二回も失恋みたいなことをしなくちゃいけないんじゃ。

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台所に1Lの醤油がある。

まだ、3割程度しか使えていない。もったいなくてなんとなく料理に使っていたけど、賞味期限は既に切れているし、大きすぎて使いにくいから捨てることにした。

今日、300ml程度の新しい醤油を買ってきた。

古い醤油をシンクにドバドバ出しながら「そういえばこの醤油、あの人が買ってきたやつだ」と思い出す。私は当時、ほとんど料理をしなかったから「そんなに大きいの、使えないよ!」と思ったけど、毎日自炊をする彼からしたら、コスパのいい調味料だったんだろうな。

シンクに広がる醤油を見て「血みたいだ」と思う。

悪い血を、自分の体から抜いているみたいだ。

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