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不登校ちゃん、ボランティアをはじめるの巻

友達の娘、中学生。
2年間ほぼ登校していない。
彼女が最近ボランティアを始めた。

小さなカフェのお手伝い、夕方2時間活動している。
たまたま店の前を通りかかったら、彼女の姿がウインドウ越しに見えた。

学校に行かなくなって、彼女の母は長いこと悩んだ。
家では変わらない様子の彼女。
それがもどかしくもあったが、安心材料でもあった。
両親は登校を無理強いすることはせず、行かない選択をする彼女を受け入れて見守った。

学校を行かなくなった理由は、友達でも先生でもなかった。
毎日学校から出される宿題がこなせなくて、それを頑張ってやろうとしていた朝が続いていたが、ある日突然そのやる気の糸が切れた。

提出しなければならないのはわかっている。
だからやろうと頑張った。
でも追いつかなくなった。

行かない日々は、彼女にとっても不安だった。
このままでいいとは思っていないけれど、足が学校に向かない。
数ヶ月が過ぎた時、母親は何かの刺激にならないかと自分が通っているまつげパーマに一緒に誘った。
彼女にとって初めてのまつげパーマ。
母は中学生にはもったいないと思ったが、引きこもる生活をしている娘を外の空気に触れさせたかった。

親子で施術を受けた帰り道。
娘は母に言った。
「私、人を綺麗にする仕事がしたい」
と。
もともとメイクに興味がある子だった。
そこに火がついた。
施術中、若い担当のスタッフに娘は自分から話しかけた。
「まつげパーマをやるには資格がいるんですか?」
「美容に興味あるの?私の場合はね…」
教えてもらった美容学校に行きたいと言った。
レジにも一人で並べない娘が家族以外に喋りかける姿。
隣で施術を受ける母の頬に、涙が伝った。

この翌日から彼女の様子が変わっていった。
美容学校に行くためには入学試験に合格しなければならないと自分で調べ、学校の勉強に追いつこうと家庭学習を始めたのだ。

目標が決まったら、そこに向かって走るのみ。
勉強の遅れを取り戻したいと、自分で塾のパンフレットを取り寄せ、家庭教師をつけられないかと母親に相談しながら、苦手科目の克服に意欲を見せている。

次第に外に気持ちが向き始めたのを母は感じ取った。
中学生だからまだアルバイトは難しい。
それならボランティアという形で社会とつながることはできないか、と二人で動き出した。
近所にお気に入りの小さなカフェがある。
その店主に事情を話すとこころよく受け入れてくれ、閉店作業のお手伝いからはじめることになった。

学校に登校する、というレールから降りた娘のそばにいるのは思いのほかつらいものがある。
家以外に居場所があることが心強くありがたい、と母は話す。
娘が目標を持ったことは道の遠くに光がさしたようだと、家庭学習を頑張る娘を程よい距離で見守っている。

不登校のゴールは登校することではない、そもそもゴールなんてないのかもしれない。
迷いながらも自分で自分の道をんでいく過程に、伴走する人がいることが大事だと思った。

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