オペラの記録:バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)、ブリテン作曲《ピーター・グライムズ》(7月9日)

7月9日、バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)でブリテン作曲《ピーター・グライムズ》を観ました。

同オペラはシーズンの最後を『オーパン・フェスト』で飾ります。
同フェスティヴァルは1875年に第一回が開催されました。
世界中からオペラ・ファンが集まります。

今年の開幕はペンデレツキ作曲《ルダンの悪魔》新制作プレミエの予定でしたが、関係者の『病気』を理由に再々中止になってしまいました。

公演が行われたナツィオナールテアター。レインボーの旗が翻っています
内部
天井のシャンデリア
上演開始前


公演プログラム
プログラムに挟み込まれたポスター


私はブリテンの作品が大好きで、ヘアハイムの演出も素晴らしいと思っています。

しかし、ヘアハイムは昨年ベルリン・ドイツ・オペラで観たワーグナー《ニーベルンゲンの指環》の演出があまり良くなく、どうしたのだろう、と思っていました。もっとも優秀な芸術家がいつも素晴らしい仕事をするわけではなく、その出来には差があるのも当然です。
ただ、《ニーベルンゲンの指環》ともなれば、演出家と指揮者、歌手に対する要求のレベルも高くなるのはいたしかたないでしょう。

今回の《ピーター・グライムズ》、ヘアハイムらしいダイナミックさと、音楽を可視化し、それを歌手が表現する手腕は健在でした。

この写真にある、手前と奥の、ひとつながりになった壁と天井が上下と前後に動きます。
また、平たくなっているステージには一部せりが多用されます。
このスケールには息を呑みます。

ただ、第3幕、ステージの中央で前後を仕切るカーテンの奥で、大きな音と人の声が数回聞こえました。ステージ転換のための作業中であることは自明でしたが、この音は異常です。
何かがうまくいかなかったのでしょう。

そういう時には、インテンダント・ロージェをすかさず見るのですが、人の動きもあったように見えました。

ちなみに、オペラ劇場の場合、プレミエではなくても公演責任者として、劇場のトップ3の誰かがいるのが通常です。

コンサートの場合も同様で、責任者の席が決まっています。
公演中、何かが起きた場合に、もっとも飛び出しやすい場所にあります。

さて、第三幕、無事に仕切り幕も上がり、ステージ奥では村人たちのお祭りの場面が始まりました。バンドとダンスはステージ上に設られた高さ70センチほどのステージで行われます。
このステージの下にはセドリー夫人が潜り込んでおり、先ほどの音を聞いた以上、ドキドキしながら観ました。

ヘアハイムの演出はステージ転換が多く、技術陣泣かせです。

バイロイトの《パルジファル》(2008〜12)では大小合わせて120回以上の転換をおこなったそうです。
しかし、これはバイロイト史上に残る素晴らしい制作でした。

また、エッセン・アールトムジークテアターでの《ドン・ジョヴァンニ》も巨大な柱が何本も移動し、これにも驚きました。
当時のインテンダント兼音楽総監督のシュテファン・ショルテスは「『公演準備は4時間以内に収めること』と厳命していたけれど、あれは大変だった」と話していました。

そのヘアハイム、来シーズンからはアン・デア・ウィーン劇場のインテンダントに就任します。

カーテンコール
指揮者登場

FOTO:©️Kishi





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