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美術の記録:ブッフハイム美術館(バイエルン州シュタルンベルク湖畔)の特別展『青騎士とブリュッケ』

バイエルン州シュタルンベルク湖畔にブッフハイム美術館があります。
正式名称は「Buchheim Museum der Phantasie」(ブッフハイム・ファンタジー・美術館)。2001年5月23日に開館しました。建築費用38百万マルクの大部分をバイエルン州が負担しています。広さは約4000平方メートル。

イメージは湖畔に停泊する船、です。
湖側からはまさに船のような写真が撮れるはずなのですが、無理でした。
よく案内にはそんな写真が出ています。


これがHP(英語版)。


設立者はローター=ギュンター・ブッフハイム(1918〜2007)。
ブッフハイムは画家、写真家、著述家、蒐集家としても活躍しました。
一般には映画《Uボート》の原作者というとわかりやすいかもしれません。

この有名な映画の監督はペーターゼン。
この8月12日にロサンジェルスで亡くなりました。
ドイツ生まれでハリウッドで活躍、優れた映画を撮っています。
最近では毀誉褒貶はあったものの、個人的には《トロイ》がブラッド・ピットやダイアン・クルーガーの出演で印象的です。

ブッフハイム美術館内部に展示されたブッフハイム関連資料。

さて、画家でもあったブッフハイムは表現主義画家たちの作品を集めていました。
この美術館のコレクションの中心は表現主義、「青騎士」と「ブリュッケ」が中心になっています。
「青騎士」はドイツ語で「Blauer Reiter」、「ブリュッケ」は「Brücke」。
ここでは日本では一般的に通用している「青騎士」と「ブリュッケ」という名称を使います。

私は美術史の専門家ではないし、ここは講義の場ではないので表現主義についての解説は遠慮しますが、それでも簡単に記すと、(ドイツ)表現主義はちょうど100年ちょっと前に始まった芸術運動で、彼らに最も影響を及ぼしたのはゴッホ。
いくつかのグループがありますが、中でもミュンヘンの「青騎士」(カンディンスキーやマルク、1911年から)、ドレスデンの「ブリュッケ」(キルヒナーやヘッケル、1905年から)が中心でした。

この二つのグループの作品を、ケムニッツやヴッパータール、エムデンの美術館、個人の蒐集家の協力を得て、一堂に集め(全作品の3分の2以上)、その違いと共通点を確認するというのが、今回の特別展の主旨でした(7月16日〜11月13日)。

美術館入場チケット。バルコンからは湖に突き出したような「廊下」があります。
「船」に乗ったイメージですね。

実際の写真です。

もっとも建物寄りのバルコンではデッキ上のように昼寝をしている人がいました。


入場チケットと一緒にもらったもの。
バイエルン州にある「表現主義」コレクションの美術館の「割引券」です。
左上はブッフハイム美術館の分で切り取られました。

裏側に美術館の所在地と案内が出ています。


さて、特別展のパンフレットです。
表表紙と裏表紙は「青騎士」と「ブリュッケ」がタイトルと絵を変えて掲載されています。

これは「青騎士」のフランツ・マルク《青い仔馬》
こちらは「ブリュッケ」、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《ゲルダの肖像》




以下に「青騎士」と「ブリュッケ」の類似と相違の説明がドイツ語と英語で出ていました。

個人的にはやはり「青騎士」の中でも特異なカンディンスキーが一番tempting。
『音楽』との関係が濃密だからだと思います。

ちなみに、カンディンスキーとシェーンベルクの交友は有名です。
シェーンベルクは絵も描きました。
当時、20歳代前半の私、ウィーンの美術館でシェーンベルクの絵を見たとき、「まさか、作曲家のシェーンベルクなの?絵も描くの?」と驚いたのもいい思い出です。無知だったんです。

いうまでもないのですが、シェーンベルクはドデカフォニー(12音技法)という音楽史上の大革命を起こしました。


さて、今回の特別展、展示の仕方も特別です。

通常、美術館は作品の横に作者など情報が架けられているのですが、足元にあります。これにより、視線が縦に動き、絵を見るのに集中できる気がします。

さらに説明の最上部には「馬」と「橋」のマークが付けられ、どちらのグループか分かるようになっています。


また、作品が架けられている壁の色に注目してください。
「白」ではありません。「白」はニュートラルではないからです。

上記4作品を選んだ理由は・・・これだけで「青騎士」と「ブリュッケ」の違いと共通点が分かるでしょう?!

ドイツ表現主義が後世の芸術全般に与えた影響は計り知れないほど大きいものがあります。

表現主義の画家たちはとても貧しく、キャンバスを購入するのに十分な金がありませんでした。それが理由で、彼らの作品は紙、段ボールに描かれたものがたくさんあります。

さらに、彼らはアカデミズムの出身ではないことも重要だと思います。

既成のガチガチの方法では未来を築けない。

物事を客観的に捉えて表現するのではなく、主観を絵によって表現する。
「高められたレアリズムである印象派」とは対極にあります。

その莫大なエネルギーと熱量、意志の強さにはただただ打たれます。

そして、1933年、ナチスが政権を取ると、彼らは「退廃芸術」として抑圧、弾圧されました。

そんなことを思いながら、美術館の裏庭を散策しました。

ブリュッケ=橋です。


お腹が空いて、美術館のカフェで一休み。

ちょうど季節のかぼちゃのスープ
甘いものの誘惑には勝てません。


と指されても・・・我々の未来はどうなるのでしょう?


FOTO:©️Kishi

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