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コンサートの記録:ケント・ナガノ指揮ミュンヘン・フィル(12月17日、ミュンヘン・イザールフィルハルモニー)

12月17日、ケント・ナガノ指揮ミュンヘン・フィルのコンサートに出かけました。
最高気温0度を下回る中、連日の雪が解けません。

イザールフィルハルモニーは改修中のガスタイクの代替ホールです。
『GASTEIG HP8』となっています。

プログラム。

もうすぐクリスマス。
プログラムを開くとミュンヘン・フィルからのクリスマスの挨拶になっています。

ヤン・リシエツキがグリークの《ピアノ協奏曲》を弾きました。
彼はまだ27歳です。
この作品、超有名なのですが、実際のコンサートで聴くことはあまりありません。

コンサートが終わって、喝采の拍手を受けるナガノ。とても人気があります。

FOTO:©️Kishi


さて、第一曲のR.シュトラウス《町人貴族から》で事件が起きました。

前から2列目中央の女性が突然立ち上がり、入り口に待機している医療係員に大きく手を振ったのです(コンサートホールや劇場には待機しています)。
私は17列目中央でよく見えました。

その人の隣の若い女性の具合が悪くなったようでした。
手を振った女性の方にしなだれかかり、ぐったりして動かない様子でした。

医療係員がすぐ駆けつけ、周囲の人たちも助け・・・・さらに客席の多方向から少なくとも3人の男性が立ち上がり、その場に向かいました。お医者さんだったのでしょう。私の前の人もそうでした(上記写真に後頭部が写っています)。

結局、彼女を連れ出し、それが、すべて音楽の続く中静寂のうちに行われました。
指揮者にはこの様子が見えなかったのです。
しかし、聴衆とオーケストラ団員にはすべて見えたと思います。
その後、聴いている私も落ち着くまでに時間を要しました。


コンサートの途中で急病人が出ることは多くはありませんが、ないことではありません。

例えば、指揮中に倒れて、その後亡くなった指揮者もいます。
この7月にはミュンヘン・オペラでシュテファン・ショルテスが《無口な女》指揮中に倒れて亡くなりました。

以前、ルール・ピアノ・フェスティヴァルで、ピアニストのレイフ・オヴェ・アンスネスのリサイタルを聴いた時の出来事です。
アレーナ式のホールでステージの後ろにも客席がありました。
その、後ろの席から、いびきが聞こえてきたのです。そのいびきがどんどん大きくなり、アンスネスが突然立ち上がり、「弾けない」と言って下がってしまいました。
しかし、そのいびきは明らかに異常でした。

インテンダントのオーネゾルク氏が「休憩にします」と伝え、急遽、休憩になりました。

休憩後、オーネゾルク氏がステージに登場し、「先ほどの方は救急車で運ばれました。状態は快方に向かっているとのことです。では、この後、お楽しみください」
と挨拶しました。

「本当に快方に向かっている」かどうかは別として、責任者が出てきて報告、挨拶すると、聴衆も安心して音楽に集中できます。

ちなみに、ホールや劇場には責任者が座る場所が決まっており、何かあるとすぐ飛び出せるようになっています。

上記のように医療係員もいます。
また、客席入口など、目立つところにAEDも置かれています。


こういうことを経験してくると、オペラやコンサートで居眠りしている人のことがとても気になります。
「良い音楽を聴いて気持ちよくなる」と言うのですが、眠る本人はそうでしょうが、こちらは落ち着かず、集中できません。
「具合が悪いのではないか」と、ドキドキしてしまうのです。

クラシック音楽ファンは比較的高齢者が多く、リスクも高いのが現実です。

逆に、具合が悪くなったら、ホールや劇場だと周囲がすぐ対応するので、そういう意味では安心の場所でもあります。

さらにもう一つエピソードを。

世界的なバリトン歌手クリスティアン・ゲアハーアー(日本ではなぜかゲルハーヘルという表記を見ます)は博士号を持っています。
彼はミュンヘン大学の医学部出身。博士号は医学で取得しています。
ただ、その後歌手になったため、臨床に携わっている訳ではありません。

コンサートで具合が悪くなった人が出た場合、「とても気になる、『お医者さんはいませんか?』というアナウンスがあると手を挙げたいが、臨床をやっている訳ではないので躊躇する」ということでした。

さて、以下はミュンヘン・フィルから提供されたリハーサル時の写真です。

©️Tobias Hase





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