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オペラ:ワーグナー作《神々のたそがれ》、エルル・チロル・フェスティヴァル、10.07.24, Tiroler Festival Erl

エルル・チロル・フェスティヴァルの《ニーベルングの指環》チクルスもとうとう最後の第3夜《神々のたそがれ》を迎えました(7月10日)。

プログラム。
ただ、この日、グンター役の予定だったマヌエル・ヴァルザーが前日の夜から声が出なくなり、急遽、ダニエル・シュムッツハルトが歌のみで登場しました(ヴァルザーは演技のみ)。

シュムッツハルトという名前が珍しいこともあり、私の記憶にありました。

あるオペラのプレミエ・パーティーに出演者でもないアンネッテ・ダッシュがいました。当時、彼女はすでにスターでした。
そこで関係者に「なぜ彼女がいるの?」と訊いたら、「旦那が出演してるから」というので、そこで初めてシュムッツハルトと結婚していることを知りました。

さて、この日はとても暑い夏日でしたが、1回目の休憩の途中から、大嵐になりました。大粒の雹がグラスを直撃、グラスが割れる音もしました。

下の写真は内部から外を撮ったのですが、かなり傾斜が強いので、雨が流れています。この後、「事件」が起きました。

第二幕が始まる直前、私の席の近くから金属的な連続音が聞こえてきました。
周囲は騒然ですが、音は止みません。上演が始まり、誰もがイラついていました。

第二幕が終わって、何人かが「補聴器だ、誰だ」というのですが、私は床から聞こえてきたと認識していました。
私の横には、一人置いてかなりお年を召した女性が座っており、みんなの話にも反応しないことから、疑いの目が向けられているとも感じました。
そこで、私は事務局に「異音がする」と伝えに行きました。
事務局はすぐ対応し、調べた結果、突然の大雨のためか原因はよくわかりませんが、「床下の技術面に問題があり、どうしようもない」ということでした。

第三幕が始まる前に周囲の人たち(10人くらいだったでしょうか)にそれを伝えたら、みんな「原因がわかって、ほっとした」と、そして「あなたは英雄だ!」とかなんとか、いい加減なことを言うんですよね。
そこで、私は、「ご自分でお訊きになったら、英雄になれたのに」と言い、「私は自分が疑われるのが嫌だったから」と付け加えました。
《指環》チクルス4日間を通して、アジア人とおぼしき客は私一人、外国人であることは一目瞭然だし、へんな濡れ衣を着せられたくありません。
それに、近くのお年を召したご婦人も、疑いの目に何も言えずにいたのです。
「これで、私たち全員、潔白です!」とまとめておきました。

第三幕では、雨も止み、異音も止まりました。

客席にいたブリギッテ・ファスベンダーがステージ下に呼び出され、拍手を受けています。ファスベンダーは有名なスター歌手、この《指環》の演出をしています。今年85歳、とても元気です。

《指環》のチクルス上演では約一週間のうち4日、顔を合わせるので、見知らぬ人もなんとなく顔馴染みになります。
それに休憩も長く、演出や歌手、指揮者への意見を言い合ったり、情報を交換したりします。それがまた楽しい。
芸術が人と人を結ぶ、チクルス上演の醍醐味の一つです。

ただ、チクルス上演はすべての部門において大きな試練です。
そうそう簡単にできることではありません。

では、近々、どこで《指環》のチクルス上演があるかというと、バイロイト以外では、来年、ドルトムント・オペラです。
これまでのペーター・コンヴィチュニーの演出は素晴らしく、残すところ《神々のたそがれ》プレミエで、このプレミエの直後にチクルス上演が予定されています。しかも4日間連続!通常、少なくとも間に2日の休みを挟まなければ、歌手もオーケストラもきついのですが。

これまで、ドルトムントの《指環》ひとつひとつの新制作を観てきましたが、それでも、やはり、チクルス上演には血が騒ぎます。観に行こうと思っています。

雨もすっかり上がりました。

FOTO:(c)Kishi


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