川端千帆は、バレエの学友とオンライン同窓会をする
彼女は先日、あなたも最近よく耳にするであろうオンライン同窓会なるものに参加した。
小・中学校と通ったバレエスタジオの同胞は今世界に散り散りになっており、会うのは基本的に夏季休暇の時だけ。今回はドイツ、米国と日本の3カ所から、時差的な意味でタイミングを見計らっての集まりだった。
互いの近況を報告しあい、普段なら話題にも上らないような政治について意見交換し、後はいつものように、くだらないことで笑っていた。
通話を切り、貴重な時間を反芻していた所でふと、聞き忘れた質問を思い出して後悔する。
ダンサーとして、日々の修練やパフォーマンスの機会を奪われた事についてどう感じたか知りたかったのだ。あー、しまったー。
ところであなた、パフォーマンスってなんですかって、思われましたか?
パフォーマンスについて考えてみる。
バレエにおいてのパフォーマンスは公演である。演目を上演すること。
パフォーマンスの語源はper(完璧に)+form(成形する)となるらしい。なるほど芸術っぽい言葉だ。
しかし同時にそれは、多くの人にとって身近な言葉でもある。
ビジネスでは業績。ITだとパソコンなどの処理速度。コストパフォーマンス、いわゆる「コスパ」は価格に対する見返りの大小を指す。周囲の関心を惹く行為も、そう呼ばれる。
こうして見ると汎用性の高い言葉だ。でも根底にある意味は、同じなのではないかとも思う。
内部の技術と外部の環境とが相互作用し、結果(成果ではなく)に繋がること。
言い換えるなら日光や水、土壌などといった環境が、植物の持つ力を引き出し実を結ばせるということ。その実が美味かろうが不味かろうが、多かろうが少なかろうが私達の糧になるという事実。
そしてそれは時の政治や価値観が芸術文化にそのまま反映することを意味する。
芸術文化は止めようと思って止められるものではない。
芸術文化は決して美しいもの、長けたものだけが淘汰されて残るのではない。どんな形であれ、繋がるから残る。
コロナが蔓延ればコロナをテーマに曲が生まれるし、舞台ができないならバーチャルで開催される。誰もいなくなった場所を写真に収める人もいる。生き抜く知恵を書く人がいる。辛辣な風刺を描いて病院に贈る人がいる。そしてダンサーは、家でも踊る(ここは笑うところ)。
結局、表現者が日々鏡を磨くように研鑽を積むのは、時代をはっきりと映すための他に理由は要らないのかもしれない。たとえ満足のいくパフォーマンスができなくても、外と衝突することで衝撃も生まれると思い至る。
連鎖の尊さは、もちろん芸術だけに言えることではなく。
こんな時世には東京事変の『夢のあと』という歌が染みる。
ただ同じときに会えた
幸運を繋ぎたいだけ
この結び目で世界を護るのさ
未来を造るのさ
今、不幸という言葉では足りないほどの悲しみに見舞われている人がこの地球上にどれだけいることか。特定の誰かやなにかに別れを告げるしかなかった方にはなんの慰めにもならないが、この大きな意思はきっと未来へ繋がっている。
今日のこの実ですら、過去の誰かの涙を吸っているのだ。
最後まで辛抱強く読んでくれた優しいあなたへ
よかったら、彼女が職場で披露した即興のダンスを観てみて下さい。もちろん無料の配信なのでご安心を。
劇場でのパフォーマンスは夏まで中止になってしまいましたが、スタジオから、今できることをお届けしています。
そしてこちらは、この時世の情景を受けた彼女なりのテーマを念頭に踊ったものです。
感じたことなどがあればコメントに残して頂くか、あなたの心にそっと残しておいてください。
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