エッセンシャル タイム #ポケットエッセイ vol.12
止まったままだった時計の針がこれまでとは違った感覚でまた動き出す。
10年以上前に統合失調症で入院した。退院して「新たに再出発するぞ」と心機一転でグランドセイコーを思い切って購入した。
その矢先、東日本大震災が起き経営していた会社は行き詰まっていった。
それとともに病気も悪化し再び入院することになった。
縁起でもない時計だと思いタンスの片隅に隠した。
立ち直りのきっかけは医療や福祉に支えてもらったからだ。
スピードが求められ続けられた直線的な時間感覚が、日は昇り沈む、そしてまた昇るといった循環する世界感覚に変わっていった。
たくさんの人たちに支えられている。
再び時計を取り出す。
感謝とともに時を刻む人生が舞い降りた。
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