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今にも壊れそうなものを好む人

おい、お前のことだよロリコン。
相手が成人していようが何歳だろうが、自分に比べて成熟していない、自分へまっすぐな目を向けてくれそうな純粋で今にも壊れそうな存在に心惹かれるなら、お前はロリコンだ。自制しろ。

グルーミングやめろ

あのころのわたしは、美しくも何ともなくても、特別な輝きがあったと思う。
たぶん、特に10代の終わりごろから20代前半だったころのわたしの、毎日無理をして”命を削って”頑張っていたころ。

苦しくてもひたむきに、自己完結しながら、涙を堪えながらもがき、から回るわたしの姿は、ある一定の人——グルーミングしたがる人間たちにとっては、必死に走り回る愛玩動物のようだったろう。

可愛そうで、可愛らしく、何より、御しやすかった。
彼らはわたしをあらゆる意味で好んだ。

「上昇欲求を持った女はグルーミングされる」

TremendousCircus『UNION』より 作:田中円

フェミニズム・ミュージカルの、ある重要な場面の台詞だ。
わたしは、この言葉が頭に焼き付いて離れない。

向上心を持ち、野心を持つ女性を認め、抱え込んで支配しようと思う人間は少なくない。
そして加害者たちのほとんどは、そんなつもりはない。
悪意など持たず、無自覚にグルーミングしている。

「これは恋愛だ。男女の関係だ」

そう言いながら、彼らは支配する。

さも善いことをするように。
助けを求めてさまよい、こちらの顔色を伺う、若く輝く存在に、手を差し伸べるように。

戸惑う感情の揺れ動きまでも、何から何まで恋心だと洗脳しながら。

引き寄せられたのは誰のせい?

わたしは、顔色を伺うのは人一倍得意だった。
男家族に折檻され、視線一つでサッと綿棒やティッシュを渡すような暮らしをして、わたしの子供時代は18年もなく、生まれてたった数年で大人の役割を演じてきたから。

だから、顔色を伺わせるのが好きな、支配したがる彼らにとって都合の良い存在だった。そしてわたし自身も、支配されない関係を知らなかったから、そういう人たちをおかしいと思えなかった。

主治医にとつとつとこの話をした。
「慣れない天国よりも慣れた地獄が落ち着いてしまう、でもそれは変えていきたい」と。
医師はわたしの話を遮ることなく傾聴し、「”天国”側に慣れていく練習をしましょう」と言ってくれた。

その次に会った時、「あの時の話について考えていたんですが」と切り出された。

「顔色を伺う癖があって、それで支配的な人たちが寄ってきてしまうとしても、それにすぐ気付いて逃げられなかったとしても、それで傷付けられるのは、あなたのせいではないです、と、言い忘れました。なので、お伝えします」

わたしが主治医に話をした時点で、”そんなわたしに責任がある”と非難するような支援者ではないと信頼していた。

だから、わざわざ、そこまで言ってもらわなくてもわかっている、と思った。
だけど、わざわざ、そこまで言ってもらえたことが嬉しくて、診察室の戸を閉めてマスクの中に涙をぼとぼと落とした。

いたいけな、若い、脆さから生まれる特有の輝きに惹きつけられるお前。
それは恋じゃない。
支配欲だ。
手を引け。

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