研修4

ソラノイロの研修で教えること

深夜、カットを練習している美容師の姿を見て何を思う?
「寝る」「休む」「遊ぶ」で終わっちゃもったいない!

僕たちが行う研修といっても、内容は実に様々。毎回違ったテーマで開催しています。外部から講師を招く時もありますし、学ぶ側に他店のゲストが参加する時もあります。

麺・スープ・タレ・油……かつてブログで書いたラーメンの基本について話すこともありますし、ある時は「資金調達」をテーマにしたこともありました。これって、ざっくり言うと「お金の借り方講座」です。

考えてみてください。美味しいラーメンが作れたらお店が開けるわけじゃありません。創業資金はどうするか? 銀行とどのように折衝してお金を借りるか。お店を出して終わりじゃない。仕入れなど営業を回すための資金繰りも考えていかなきゃいけない。経営の数字はどう見るのか。バランスシート、損益計算書の見方も分かってなきゃいけない。

だけど、僕たちが研修に力を入れるのは単にスキル、知識を学ぶためだけじゃないんです。

前回、師匠や人に食らいつき、何でも学んでいこうとする姿勢について書きましたが、このどん欲さを学びにも持ってほしい。そんな思いがあります。

ソラノイロは労働環境の整備にも力を入れていて、完全週休2日制を導入することができています。週1の休みが週2になる。そんな人が多いでしょう。だけど、その増えた1日をどう使うか。残念ながら、独立のために使ったり、ラーメンに費やしたりする人は見たことがありません。みんな、「寝る」「休む」「遊ぶ」かのどれかに終わってしまうのが現実でしょう。

世の中を見ると、みんながすごく勉強していますよ。カフェに行けば英語や資格の勉強をしているビジネスパーソンがいるし、夜に美容室の前を通ったら、カットの練習に没頭する若手を見ることもある。それだけやらなきゃいけない、生き残っていけない時代だと思います。だけど、「煮干しのダシの勉強をしたいんで厨房を1時間使わせてください」と言ってくるスタッフは……残念ながら、なかなかいません。

現在は研修という学びの場をあえて作っているわけですが、理想は「自ら進んで学ぶ」ということです。時間が足りないのは誰でも同じです。そこを一歩踏み込んで、自分のため、将来のために勉強で自己投資していく。僕たちはそんな気概を持った集団を目指していきたいと思っています。

ソラノイロに入ったら、漏れなく10時間の新人研修があります。これは社員でもバイトでも同じ。座学が8時間。そして、オペレーションを含めた実地研修で2時間。現場に出るのは、みっちりとソラノイロのイズム、方法論を学んでもらってからになります。

サービス、ホスピタリティの考え方を理解した上で店に入ってもらう。何が正しくて、どうするのがいけないのか――ラインを明確にしないままでは現場には立てない、と僕は思うんです。

アルバイトには高校生もいるし、転職してきた社員では40歳以上の方もいる。そんな様々な属性を持った方に、10時間後には同じようなレベルに達してもらわなければいけません。

僕たちは、「唯一無二のラーメン」の提供を目指しています。だけど、僕としては「ソラノイロのサービスは違うね」「接客がいいね」というお客様の言葉も大事にしたい。それが大きな喜びになります。

ラーメン屋としていい接客だね、で終わるのではなく、飲食業全体に広げても「さすがの接客だね」と言われるレベルを目指さなければなりません。紙エプロンがいるかどうか、一人ひとりに声をかけて確認し、必要な方には手渡しができる。そんな振る舞いが自然にできるスタッフを目指したいんです。

うちで学んだことは、就職活動をするにしろ、社会人生活を送るにしろ、絶対に生きると思う。そこまでしっかり考えた上で研修のプログラムを組んでいるつもりです。

研修を担当するマネージャー、店長にも、教えることで学びを得ていってほしい。店長の振る舞い、アクションの一つ一つが後輩、部下への反応になります。

たとえば、僕がこの前ある飲食店に入った時のこと。お客さんの前で「次のシフトはどうなってる?」と、何の緊張感もなく話し合っているスタッフを目にしました。

お客様目線で仕事をすることの難しさを感じる瞬間ですね。手順を指導したり、サービスについて指示したりだけが教育ではありません。態度、振る舞いを考える。これも立派な教育です。暇になり、ふっと気が抜けた瞬感に気の緩みは発生します。僕たちは、ソラノイロは大丈夫なのか。常にこの視点でスタッフには自分をかえりみてほしいと思っています。

まあ、易しい方についつい流れるのは人間としてしょうがないものかもしれません。飲食はだいたい同じことをやるので。そうなりがち。作業と仕事は違うものですが、みんな作業に陥っちゃう。ルーティンになってしまうんです。

その中でどうやって課題を見つけ、目標を設定させるか。チャレンジをどう考えていくか。次の段階の仕組みとして作っていきたいと思っています。

ちなみに、今年からは研修を座学だけではなく、外に出ていって生産者巡りも視野に入れています。5月上旬の社員旅行でも、熊本の地鶏『天草大王』の鶏舎を見学。下旬の研修では、木更津の『耕す』さんの農場で人参の収穫体験を行いました。

天草大王、人参だけじゃない。トマトしかり、黒さつま鶏、瀬戸のもち豚。すべて、生産者さんから直接送ってもらっている。作り手の顔が見える。生産者とソラノイロの結びつきは他店よりも強いんです。自分たちがどういうルートで食材をいただき、命をいただくラーメンにしているのを学ぶことも、また重要になるでしょう。

ここでも、前回のエントリーで紹介した「共有 共感 共鳴 共振」です。生産者とのコミュニケーションを一緒に共有して、体験も共有する。スタッフで共有できたら、それはきっとお客様にも届くはず。生産者から、お客さんが喜ぶ笑顔をワンストップにつないでいく。それも研修の役割だと僕は考えています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?