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バビロン・ベルリン

Babylon Berlin(ドイツ/2017~)

ドイツが渾身のパワーを込めて作ったドラマ!
なんていわれたら、もう観るしかありません。

「書類」があれば危険な案件もあっさり通り、「公式」「権威」の大義名分があれば何でもやりたい放題。くっきりと鮮やかな建前と本音。同調圧力。生真面目。
国中に蔓延する貧困が、やがてナチスを呼び寄せていく気配。
良い意味でも悪い意味でも「イメージとしてのドイツらしさ」を裏切らない――

全編を通して画面いっぱいに満ちる、饐えたにおい。腐敗臭。たばこと埃のにおい。下水のにおい。そして、死臭。
わずかしか映らない地下道にも、ごみを配置して「汚し」が入っていて、世界観を徹底しています。この緻密さも、ドイツ!!という感じです。

一度も飲んだことのないアブサンというお酒が、画面に透けて浮かんできます。その禁じられた飲み物に、どっぷり街ごと沈んで、人々が溺れながらも、何とか生き延びようとあがいている――

嗚呼、この撮り方で撮影した、「帝都物語」「黒蜥蜴」を観てみたい、なんてついつい思ってしまいます(笑)

映像はまさに、混乱の都市、バビロン。
けれども、
出会い頭にぶつかって恋がはじまる。
愛する兄の妻によろめいてしまう。
倒れた男に寄り添い、助ける女。
過去の心の傷に苦悩する男。
暗躍するロシアスパイ。
恋に溺れて振り回され、地位も仕事もなくしていく。
ひとめ惚れした彼女に何とか近づきたいシャイな青年。

改めて見てみれば、ちりばめられているのは、そんなベタ中のベタな展開ばかり。
そこを、
ベタをベタに見せない!!
これは物凄い技術です。(拍手)

観ているうちに、いつしか悪臭に馴染み、舌を刺す安酒も心地よくなって、物語が体に染み込んできます。
登場人物たちは、気づけば、旧知の友のように身近な存在になっています。

このドラマはまさしくアブサン。
強烈な中毒性があります。

もがきながらうごめく、群像の中に、地獄のような街が迫ってきます。
そう、この物語の主人公は「バビロン」

このドラマの中毒性に一役買っているのが、音楽。
モーリス・ラヴェルの「ボレロ」と同じ技法で、旋律が意識下に滑り込んできます。
「中毒音楽ランキング」に入れたい、凄い中毒性!!

悪酔いするのがわかっているのに、ついつい深酒してしまう。
これはそんなドラマです。

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