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演劇でとてもお世話になりました

2019.4.29

高校生のとき、わたしは演劇部に所属していた。

当時は高校の数だけ演劇部があったような時代で、他校同士のつながりも強かった。合宿で大人数ワイワイしたり、演劇部の甲子園ともいうべき「全国高等学校演劇大会」の県北予選でも2〜3日間たっぷりプログラムが組めるほどだった。OBOGたちによる卒業公演は、学校の垣根を超えた演目が組まれ、代々「◯◯ぱんだ公演」という名称で呼ばれていた。◯◯の部分には、笹だとか桜だとか梅ヶ枝だとか、和菓子っぽい名前がなぜか入っていたと思う。理由はわからない。とにかく、わたしが高校時代に他校の演劇部の人と知り合いになれたのは、こうした代々受け継がれてきた先輩たちの努力によるものだ。

そんな縁の中で友人になれた女性がいて、かれこれ付き合いは10年以上になる。社会人になってから旗揚げに関わった劇団にも多大なる協力をしてくれて、色々と支えてもらった人物だ。結婚を機に他県に移り住んでいたのだが、ゴールデンウィーク期間中に佐世保に帰省するという話を聞き、一緒に食事をしようということになった。同じ高校でもないのに、なんだかんだで腐れ縁である。

これから食事だというのに、なぜか気が抜けて、夫がつくったナポリタンをもりもりと食べてしまった。夫めしは別腹だ。祝日だし駐車場も混み混みだろうということで、夫に友人との集合場所まで送ってもらう。

彼女の「推し」とともに、食卓を囲んだ。なにかと子を気遣ってくれたので、とても有難かった。「両腕疲れてるでしょ」と、母親であるわたしの労をねぎらってくれる彼女は、高校生の時からなにかと人を思いやることが多かった。こちらから何かしてやれることはないかとも思うが、おふざけを提供することしかできない甲斐性のなさである。そんなわたしの、とても心が広い友人の1人だ。

たまたまだが、その日の夜は演劇活動でお世話になったひとと飲み会をする約束をしていた。彼女にとっても共通の恩人である。かなり急ではあるが、せっかくなので一緒に飲もうということになった。こういうアドリブ的な展開で物事が進むのはとても得をした気がしてラッキーである。食事の後カフェに行ってドリンクを飲みながら、演劇についての話をした。こんな話をするのは久しぶりだった。

友人と別れ、家でくつろいでいる夫にお迎えを頼む。申し訳ないなーと思いつつ、まだ時間がありそうだったので、アーケードでやっていたジャグリングを見ていた。


子は、観客の拍手に驚いて泣いてしまった。

ミルクせんべいでご機嫌を取りながらテクテクと合流場所まで歩き、夫に拾われ自宅へと戻った。飲み会の時間まで少しあったので、少しだらだらした。

演劇活動の恩人で元上司であるひとが佐世保の地を離れるということで、ちゃんとした挨拶がしたかった。自身で企画した演劇公演の相談を持ちかけまくって散々乗ってくれたにも関わらず、わたしがうっかり妊娠してしまって公演どころか自身の劇団も休団することになってしまったという、とっても恩知らずなことをしてしまったのである。妊娠報告をしたときは盛大に笑われてしまったが、こちらとしては謝罪と感謝しかない。

店は、夫の友人が居るクーシェにセッティングしてもらった。もともと行きつけで、夫とその友人が付き合ってくれるというのと、さきほど語らった友人が飛び入り参加してくれるとはいえ、とんでもない緊張感を抱えたままその時間がやってきた。

が、その緊張は早々に打ち破られることになる。同行していたわが子が店に着いてから2秒ほどでギャン泣きしてしまったのだ。店のママが、自分のせいかしらと言っていたがそうではない。きっとそうではない。そんなわけで、緊張していた気持ちが、子を泣き止ませる方向にむかってしまったのである。

店にやってきた元上司と女友達を案内する。子はビェンビェン泣いている。なんという地獄絵図。勢いあまって「お世話になりました」の挨拶もままならぬ状態で一杯目をあおり、ハンドルキーパーという役割を早々に投げ出す始末で、完全に夫に対して土下座案件になってしまった。夫も、まぁ仕方ないといったようすで、あとから夫の友人も混じりつつ、のんびりゆったりと語らいながら4.5時間ほどを過ごした。

演劇の話もしつつ、佐世保でなにか面白いことをやりたい夫とその友人との会話も弾み、わたしのなかでは良い送別会ができたとおもった。しかしいかんせん飲み足りないというのはあったが、子連れゆえ自粛せねばなるまい。そういう試練はしかたがないとおもった。元上司に、再会への期待を伝え、その場をおひらきにした。

夫もわたしも飲んでしまったので、タクシーで帰宅した。幸い、べろんべろんになるまではいかなかった。やはり子の世話のことを考えると自動ブレーキがかかるようだ。子をきちんと寝かしつけてから、自分たちは適当な寝姿でざっくりと眠った。

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