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子どもらを鼓舞してマックアドベンチャー

2024.9.26

日差しがむわっと差し込んでくる朝に、グリークヨーグルトを小皿に盛って子どもたちに出した。子1が横目でちらっと見て皿をすす、と自分側に引き寄せる。これはいつも食べているミニカップのヨーグルトではないな、という顔でじっと凝視したあと、スプーンで小さくすくっておそるおそる口に含んだ。
「うん!」と首を縦に振るので「おいしいでしょ」と言うと、「これはバースデーケーキに塗ろう」と一息でつぶやいた。
たしかに生クリームみたいだもんな。わかるよと一緒に首を縦に振ろうと構えると、子1はスプーンをそっとテーブルに置いて「つまり、まずい」と言った。

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幼稚園の帰り、眠さで白目をむきパチンコ店入口の空気人形のようになっている子どもたちをルームミラーで眺めつつマクドナルドへ。
二度目のマックアドベンチャーの日だった。

マックアドベンチャーとは、マクドナルドの仕事が体験できる子ども向けプログラムである。

みなさんはご存知だろうか?  わたしは妊娠中、狂ったようにポテトを食べに通っていたにも関わらずちっとも気が付かなかった。
存在を知ってから店内をよく見ると、壁に小さなポスターが貼ってあったり、専用ページへのQRコードがついたカードがさりげなく置かれていたりするのだった。子どもと暮らして見える世界は小さくて大きい。

1回目は夫が予約をしてくれた。これがなかなか人気だそうで、毎月決まった日時でしか予約受付をしていないそうなのだ。先着順なのでまるでライブチケットを予約するときのような緊張感だったろう。約2週間前、夫はその瞬間を逃さず、1回目と、その後続けて2回目とその日を押さえてくれたのだ。

とはいえ、子どもたちのテンションは当日にならないと分からないので怖いところだったが、幼稚園で遊んで体が温まっていたタイミングだったので何とか誘導できた。しかし車から降りるなり「眠い、おうち帰る」と言い出したので必死で鼓舞した。

マックアドベンチャーは当然ながら、その店舗のアイドルタイムに行われる。クルーが1人アテンドしてくれて子どもたちの制服の着替えからバーガー作り、ポテト作り、ドリンク作りやパッケージング、配膳までフルサポートしてくれるのだ。

とはいえ、普通にカフェタイムの客やドライブスルー利用客はやって来るので、少し慌ただしくなる瞬間もあるが、他のクルーたちがうまくカバーしてくれるので和気あいあいとした雰囲気は崩れない。プロフェッショナルの仕事を垣間見た。

親は厨房の中に入ることはできないので、カウンター越しにそのようすを眺める。「かわいい」「じょうずね」といった温かな声掛けがうれしい。
今回、子どもたちが体験したのは「オリジナルバーガー作り」。バンズやパティ、野菜などの各項目から1種類〜3種類を選び組み合わせることができる。
子どもたち2人それぞれに、
ノーマルバンズ+ビーフパティ+ベーコン+チーズ+ピクルス+ケチャップのバーガーと、
ごまバンズ+ポークパティ+ベーコン+チーズ+ケチャップのバーガーを完成させた。

体験後に食べたが、やはりベーコンが加わるだけで贅沢さが増す。また、ポークパティは、わたしにとってはソーセージマフィンでおなじみだ(別物らしいが、てりやきマックにもポークが使われているそう)。そこに更にベーコン、W豚である。こんな食べ方は焼肉食べ放題でしかしたことがない。どちらもおいしかった。

年配のクルーがいて、気さくに孫の話をしてくれた。最新型のスタイリッシュなインカムが似合うきびきびとした働きっぷりが素敵だったけれど、ニカッと笑いながら「でもやっぱり、1人は男の子がほしいよね。」と言われたとき、そうだったここは佐世保だったとハッとした。地方ゆえ、このようなやりとりは親戚でなくても年に一度は必ずある。

バーガー作りのあと、子どもたちは揚げたてのポテトを一本試食させてもらっていた。紙ナプキンで包まれたポテトを厨房でもそもそ食べている小さな店員…
「小動物みたいですよね」とお義母さんにその動画を送ると「まるで子ダヌキ!」と返ってきた。

最終的には、オリジナルバーガーを紙で包み、袋に入れ、トレーに乗せる。なんとレジ打ちや金銭授受までさせてもらっていた。わぁお、よかったね。思い出の記録にとスマホを構えていたがわたしも全身で子どもクルーたちの接客を体験したかったので片手で固定しながらやり取りをした。半ば盗撮のような格好となった。

体験は無事終了。対応してくれたクルーにお礼を伝えて2階へ移動する。子どもたちは作るだけで満足したのか、目線はすっかり目の前の遊具コーナーへ注がれている。せめて半分は食べてほしいと促してひとやすみ。

さきほど笑顔でお別れしたクルーがまたやってきたと思ったら、私たちの次にやって来た親子をナビゲートしていた。さながら遊園地のようだ。

その様子に、近くで食事をしていた高校生2人が
「子どもに仕事させてるんじゃ?」
「お前性格悪いな(笑)」
「冗談だよ!」
といったやりとりをしていた。なかなか斜に構えておる。
うちの子どもたちも、ときどきではあるがちょっとした頼みごとに対して「子どもを働かせるなんて!」と権利主張をするようになった。
マックアドベンチャーに関しては、ピョンピョン嬉しそうに飛び跳ねたりこちらに手を振っているのを見る限り、1つの立派なアトラクションとして楽しんでいるようではある。
「バンズ」という言葉を知っていたのをクルーから褒められて頬を赤くしたり、学んだ手洗いを家で実践したりするまっすぐさが微笑ましい。
でもいつかは斜に構える日が来るんだろうなぁ。スーパーなどでたびたび目にする、職場体験をしている中高生たちのどこか影を帯びた表情を思い出し切なくなるけど、そんな過程を見てみたいし向き合いたいのも親心だ。極力、可愛さや微笑ましさを求めて押し付けないようにせねばと自戒も込めて。

どうやらマックアドベンチャー、色々なものが見えてくるようで面白いぞ。5回チャレンジすると特別なご褒美がもらえるらしい。子どもたちの曲がりっぷりも楽しみながら、また次の機会を待ちたい。

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