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人材再生マネジメント

これまで何人もの上司に仕え、私自身も管理職として部下をマネジメントしてきました。

ヒューマン・マネジメントを振り返って気付いたことは「優秀なメンバーを集めるマネジメント(以下、即戦力採用マネジメント)」が上手い人は沢山いるけれど「くすぶっている人材を戦力化するマネジメント(以下、人材再生マネジメント)」ができる人は極めて希少、という事実でした。

人材再生マネジメントの必要性

米国のようにレイオフが容易であれば、即戦力採用マネジメントだけで事足ります。しかし日本のように一度雇用したら簡単に解雇できない制度下においては、即戦力採用マネジメント以上に人材再生マネジメントが必要です。

人材再生マネジメントを軽んじた場合、くすぶり人材が「ぶら下がり社員」として定年まで会社に残り、何ら対策を講じない企業姿勢を見て、優秀な社員は企業の将来性に疑念を抱き社外流出します。
中長期的な企業の競争力低下につながります。

人材再生マネージャーの希少性

私がこれまで仕えてきた直属の上司(16名)、斜めの上司(37名)の計53名を振り返った時に、人材再生マネジメントが結果的にできていた上司は2名だけです。意図して成し遂げた人となると、たったの1名しかいません。

なんと、率にして1.8%です。これにはカウントした私自身が驚きました。
なぜなら上司たちは、一般的に優秀とされる人が多かったにも関わらず、この結果だったからです。

メガバンクや準大手クラスの証券会社、コンサルティングファーム等で激戦を勝ち抜いて出世した人たちが、まさか人材再生マネジメントが出来ていなかったなんて想像もしませんでした。

マネジメント事例

以前にいた会社での、私の人材再生マネジメント事例です。

部下Aさんは同業からの転職組で、年収600万円の未来のマネージャー候補人材でした。

入社時期が私より早く、当然ながら私はAさんの採用に関与していなかったため、初めて出会ったのは私の部下として配属された時でした。

私はAさんを理解するため、Aさんの元上司たちに仕事ぶりをヒアリングすることにしました。すると、彼らからAさんへの評価は総じて「仕事ができない」というものでした。
残念ながら、それは事実でした。
同時に、今の状態で歳だけ重ねていけば、近いうちにAさんの働く場所がなくなるという危機感を持ちました。

Aさん本人も、転職当初に思い描いた活躍が出来ていない状況と、周囲からの評価に自信をなくしていました。

そこで私は、まずマネージャー候補人材としては明らかに不足している業務スキルを向上させ、そのうえでキャリアの見つめ直しを促すよう育成計画を立てました。

敢えて、行動を変える→意識を変える、の順番で進めることにしました。
Aさんが中途入社して約1年が経過していました。意識するだけでマネージャー候補人材として適切なレベルで業務できるのであれば、とっくに出来ているだろうと思ったのです。

そこから毎日1時間以上に及ぶ1on1がスタートしました。
その日の業務を振り返り、上手く出来なかった業務の躓きポイントを洗い出し、事前準備として何が不足していたのか、途中で誰にどんな確認を入れたら手戻りせずに済んだのか等、毎日繰り返し繰り返し、出来るようになるまで振り返るのです。

経営陣からは「実力不足は本人の責任だから放置しておけばいい。君の稼働を不出来な部下のフォローに充てるほうが人的資本の無駄遣いだ。」と言われました。
放置することの負の効果は、先に書いた通りです。

その後、Aさん再生のマネジメントは奏功しました。
Aさんの年収(しかもボーナスではなく基本給)が50万円UPしたことからも、効果は明らかでしょう。

企業規模を問わず、日本企業には、即戦力採用マネジメントよりも人材再生マネジメントが必要という思いは変わらず、私は今もマネジメントという仕事を続けています。

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