見出し画像

緊張と戦い続けた日々の果てに:「脳を最適化すれば能力は2倍になる」が私に教えてくれたこと

昔、生き苦しさを感じていた時期にカウンセリングに通ったことがある。

その最初の面談で、ある検査を受けた。

どんな検査かというと、安静時に唾液を採取し、それから大きな音(車のホーン音)を聞かせ、5分後、10分後と再び唾液を採取するというものだった。

これは、唾液に含まれるストレス物質の分泌タイミングを調べることで、私のストレスの感じ方を知る検査だった。

通常、安静時よりも大きな音を聞かせた直後にストレス値が上がるらしいのだが、私の場合は10分以上経ってからストレス物質の分泌が確認された。

カウンセラーは
「不快な状況や思考の時にストレス値が上がるのではなく、下がるという、二重人格のような乖離が起きている可能性がある」

と私に伝えた。

この検査を元にカウンセリングが始まったのだが、私はそのことよりも先刻受けた検査そのものに衝撃を受けていた。

『ストレスというのは測れるものなんだ。科学的にそういうことが証明されるんだ』

体から分泌される物質がメンタルに深くかかわっているという事実
は、その後も私の頭にずっと残っていた。

そんなことがあり、メンタルと脳内物質について書いている樺沢先生の本を私は自然と手に取るようになった。

特に「3つの幸福」を読んで衝撃を受け、それからさらに知見を広めるようになった。

樺沢先生の今回の最新作「脳を最適化すれば能力は2倍になる」は、「3つの幸福」で解説されているドーパミン、オキシトシン、セロトニン以外の脳内物質についても書かれていると聞いて、早速読んでみることにした。

この本は「ドーパミン」「アドレナリン」「エンドルフィン」「アセチルコリン」「ノルアドレナリン」「セロトニン」「メラトニン」の7つの脳内物質の解説と仕事術の関係を中心に、樺沢先生ご自身のたくさんのエピソードや活用の具体的な方法が書かれている。

読んで一番印象に残ったのはノルアドレナリンとアドレナリンについての部分だった。

ノルアドレナリンは恐怖とプレッシャーで仕事の効率を上げる物質で、「闘争と逃走のホルモン」とも呼ばれている。

カウンセラーが言ったように、私は自分が不快な状況に常時、身を置いていることが当たり前である生活をしていた。

私はずっと家族に条件付きの愛情で育てられ、常に緊張している状態で生活していた。
今思い返せば、不安と緊張と恐怖の中で、いつも戦闘態勢で生活していた。

つまり、ノルアドレナリンとアドレナリンが分泌しつづけてる生活をしていたのだ。

ノルアドレナリンは追い詰められた時に発揮されるという。

確かに、私は計画的に仕事をすることが苦手で、夏休みの宿題も一夜漬けだったし、切羽詰まった状況や追い込まれると、自分でも驚くほどの力を発揮していた。

例えば、文学賞の佳作を取ったときのことだ。
締め切りの一週間前にその賞を知り、二日間で原稿用紙50枚を書き上げ、たいして推敲もしないで提出し佳作を受賞した。

ただ、そのときのことはよく覚えていない。
眠くもならなかったし、おなかもすかなかった。

まさにノルアドレナリンとアドレナリンの力技で乗り切ったのだと思う。
ただし、提出したあとは燃え尽きてしばらく廃人のようになったことは覚えている……

本にはこう書かれている

ノルアドレナリン
ストレスがかかったときに分泌されるが、職場やプライベートでストレスが続くと枯渇してしまう。

アドレナリン
身体機能や筋力などを一時的にアップさせ、集中力や判断力を高める効果があっても、興奮しすぎると自分が抑えられなくなる悪影響もある。
過度にアドレナリンを出し続ける生活を続けると、病気になりやすい

まさに昔の私のことだ。
会社ではバリバリと仕事をこなし、同期の中でも一番に出世したが、
休みの日はいつもだるくて、何もする気がなくて、人と会うことを避け、不機嫌だったことを思い出す。

常に眠りたくても眠れないし、いつも肩に力が入っていた。
自律神経がうまく機能しない状態が続いていたのだ。

そのせいだろうか。

その後、私は大きな病気になった。
手術を経験したことで家族の大切さを知り、それからは健康に気をつけ、日夜のリズムづくりを心がけ、家族や周囲の人たちの関係を第一にするようになった。

私は期せずして少しずつセロトニンやメラトニンを大切にする生活にシフトしていったようだ。

けれでも、今だにノルアドレナリンと、アドレナリン的な行動で乗り切ろうとしてしまう癖がついつい出てしまう。

この本は、交感神経と副交感神経のバランスの取れた生活の重要性を私に再認識させてくれた。

ノルアドレナリンと、アドレナリン的な行動の仕方は悪いことではない。
けれど続けていたら確実に心身にダメージがくる。
だから賢く、バランスよく生活改善することが大切だ。

恐怖や不快、叱られることを避けるために頑張るノルアドレナリン型のモチベーションから、楽しさやご褒美、褒められることを求めるドーパミン型のモチベーションに変え、セロトニン分泌をさらに心がけていくことを当面の目標とした

またアセチルコリンの章では、クリエイティブな活動は夜や深夜になるとひらめきやすいと書かれていた。実際、私も深夜の方が断然インスピレーションが降りてくる。

樺沢先生も午後から夜にかけてクリエイティブな仕事をしていると書いてあり、納得した。

私が尊敬する小説家の方々はほとんど夜中に創作している。
朝の方が効率よく仕事ができることが世の中の定説になっているが、この点だけがずっと疑問だった。この本を読んでその謎がやっと解明されてうれしい。

これからは午前中には論理的な作業に重点を置き、午後からは創造的な作業に重点を置くように実践していきたいと思う。

そのほか、本を読んで実践し始めたことは以下の通りになる。

・セロトニンを増やすために朝食にバナナを食べる
・カーテンを開けて朝日が入る形で目覚めるようにする
・4秒で吸って、4秒息を止めて、8秒間で息を吐く448呼吸法を活用する
・アドレナリンをオフにするための7つの習慣を常に意識する
・オンとオフを意識して切り替えていく(今までは線引きがなかった)
・緊張や不安をコントロールする具体的な方法を実践していく
・セロトニンを活性化する「七つの仕事術」を心がける

他にも本書には、セロトニンが平常心を保つための物質であること、メラトニンが睡眠の大切さを教えてくれる物質であることが書かれていて、これらの脳内物質を効果的に活用することで、より健康的で充実した生活を送るための具体的なアドバイスが多数紹介されている。これらの知識を元に、私は自身の生活習慣を見直し、心身のバランスを整えることに注力しはじめた。

今後も本書で学んだことを実践し続け、より良いライフスタイルを追求していきたいと思う。樺沢先生の教えを通じて、自分自身の脳と向き合い、その力を最大限に引き出すことの重要性を実感している。

この本は、多くの人々にとっても有益なガイドとなるだろう。

樺沢先生、書いてくださってありがとうございました。




この記事が参加している募集

#読書感想文

191,797件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?