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空き家改修は、ロックだ!(兵庫県淡路島)

先日ご縁あって、現在受け入れているフランスからのインターン生・モルガンが淡路島で2週間お世話になることになり、一緒に淡路島まで送り届けてきました。

淡路島は、前職の愛する後輩・北祥子が夫婦で3年前に移住した島で、かつ私自身が地域の仕事をはじめる時、(勝手に)バイブルにしていた「淡路島はたらくカタチ研究島」の富田祐介さん(株式会社shimatoworks)や、素敵なアニキ・アネゴたちがうごめいている(!?)場所。ようやく念願叶って、訪れることができました。

淡路島へ移住して、とってもしあわせそうな妹サチコ
お土産の鹿児島焼酎「小鹿」をとっても喜んでくれたトミーさん(富田祐介さん)

淡路島ならではのレジリエンスが生み出した豊かさ

淡路島は、日本の食文化の基礎をかたちづくってきた御食国(みけつくに)」としての歴史風土や食文化もありながら、1998年に明石海峡大橋が開通するまでは、移住者もあまりいない場所だったとか。その3年前に阪神淡路大震災(1995年)が起き、震災復興からの明石海峡大橋開通、この30年弱で激動の時間を過ごしてきた島でもあります。

トミーさんが淡路島の活動を始め、移住された約20年ほど前にもまだ移住者や現在のような新たな拠点はここまで増えておらず、まさにトミーさん世代の方々が道を切り開き、震災で傷ついた場所と人を癒しながら、ともに手を取り合って、新たな文化を作ってきた島だと感じました。

そして陸の孤島・大隅半島出身の私がとっても羨ましいのは、その都市圏との近さ(神戸からバスで30〜60分)もあいまって、観光産業が島の人々の中にもきちんと根付いていること。淡路島の方々がどこまでも深いホスピタリティで私たちを迎えてくれたことに、私は改めてとっても驚き嬉しい気持ちでした。そこには、震災復興で培ってきたやさしさと強さ、そして観光産業がきちんと根付いている土地ならではの、独自のおもてなしの文化がありました。

空き家から生まれる、淡路島独自の新たなカルチャー

また驚くべきことは、現在新たな淡路島のカルチャー発信拠点となっている場所は、ほとんどの場所が空き家や空き拠点であること。実は淡路島も、推定1万軒の空き家があるといいます。そして震災復興の流れがあるからか?皆さん軽々とやってのけているように見えて(もちろんたくさんの苦労があると思うのですが)、天晴れでした。

トミーさんたちが働く素敵なカフェ&コワーキングスペースのシマトワークスは、引き継ぎ手のいなくなった築80年ほどの酒類卸兼民家だった場所を知り合いづてで相談いただいたことをきっかけに、立派な場所へと改修し、ここへ島内外から多様な方が訪れ、国内外を超えたさまざまなプロジェクトが生まれています。モルガンはこちらで、今後インバウンド向けのブランディング&プロモーションのお手伝いをすることに。皆さま、ありがとうございます🙇

元々あった看板は残したままの美しい外観
みんなで漆喰を塗ったという美しい壁面のコワーキングスペース

そのほか、宿泊させていただいた「日の出亭」さんも、オーナーのパワフルなやまぐちくにこさんが、震災を機に発見されたご親戚の古民家を15年かけてセルフビルド&リノベーションをし、経営されているアートなお宿。もう皆さんの軽やかな情熱がすごすぎて、私はこのあたりから絶句しています。(笑)

アートギャラリーのような「日の出亭」のリビング

空き家改修には、ロックと怒りのパワーが必要

そして最後に訪問させていただいたのは、現在セルフビルド&リノベーション真っ最中の、hook_awajishimaのお二人、藤田剛さんと藤田美沙子さん。

築100年弱、かつ30年ほど空き家となっていた場所を購入し、今後お二人のそれぞれの活動や物販、コワーキングスペースに宿泊拠点として活用できる場所に改修すべく、昨年夏から絶賛セルフビルド&リノベーション中です。

hookのおふたり、藤田剛さんと美沙子さん

セルフビルドの大先輩として、お二人から色々とお話を聞かせていただいたのですが、それぞれ島外から移住し、それぞれのカルチャーを持ち寄りながら地域の歴史や風景を紡ぎなおしていく姿と、まさにその絶賛進行中の楽しさ・面白さ・苦しさなどに私は胸を打たれました。

hookの拠点づくりにおけるコンセプト
当初、お二人が怒涛の壁打ちをしていた障子裏面

藤田さん「ここのスペースを将来的に自分たちの居住区間にしようと思ってるんですけど、床下に苦戦中で。地形上、どうしてもこの床下に水が溜まるんで、物理的に流れていくように穴を掘って庭に誘導して、床下に除湿シートを張ってからその上に床板を張ったんですけど。」

藤田さん「最近の大雨で、除湿シートに雨水が溜まっちゃって。しかも除湿シートだから逆に水が捌けない。(笑)永遠にそんな試行錯誤の繰り返しで、やってみないとわからないことばかりで、二人でケンカしながらやってますよ。(笑)あと、庭掘ってたらクサガメが出てきたんで、可愛がって飼ってたんですけど、この前逃亡しました。(寂)」

大変な苦労を、包み隠さず面白く話してくれる藤田さん

また耐震整備についても、そもそもが約100年前の古民家なので、現在の設計建築や新築をベースにした耐震基準では全くゼロからの建て直しになってしまうし、そうすると現在の建築手法では実現できない昔ながらの生きる知恵や建築、ひいては暮らしのあり方が失われていってしまう。
(注:昔の家には耐震ではなく免震の知恵がたくさん詰まっていて、かつての大震災も凌いだのだとか)

限りなく自分たちで考え・判断して、安全性と保全と、その時の最善を尽くす方法を模索していくしかないとのことで、これはTHEDDO.大隅拠点の空き家でも私たちが現在抱えている全く同じ課題。藤田さんはそれを、「命と天秤にかけながらやっている」と表現。私はそれを聞いて、大変だし厳しい道のりだけれど、自分たちの暮らしを自分たちの手でつくりあげることは、とても確かで豊かなことだと感じました。

未曾有の災害や想定外のことが起きる時代、私たちがあたかも存在するかのように信じていた"100%の安全"というのは、本当に安全だったのだろうか?自分の手でそれをつくることなく、ただ信じ切っていただけで、何か想定外のことが起きた時、他者のせいにしていなかっただろうか。そんなことを考えさせられました。

素敵なhookのリビングにて

そしてそんな大変な局面を、お二人が乗り越えられるのは、実現したい未来や暮らしのあり方があるからだけではなく、「怒りのパワー」のおかげでもあるというお話で盛り上がり。(笑)

酷暑の中、試行錯誤して、簡単に仮説や前提が崩れたり、またイチからやり直したり、という大変な局面の中で、その山を乗り越えられるのは、適度に訪れる「怒りのパワー」の力のおかげでもあると。これは私も昨年、空き家で100年分の布団や湯呑みや、その他さまざまなモノを片付けた時、まさに実感したことでもありました。最初は懐かしみ、愛おしんだりしながら片付けていたけれど、途中から酷暑も相まって「なんでこんなものまで取ってあるんだよッ!」という怒りで峠を越えられた経緯。(笑)

お二人と最後に、「空き家改修は、怒りのエネルギーをポジティブに変容していく、ロックで最高な過程なんだよね」と意気投合してお別れしました。

全国的に同じ課題を共有する空き家課題。
こうやってヨコ連携を増やし、仲間を増やし行き交うことで、ナイナイ不足を解決しながら、楽しく変容していけるのではという手応えを得られることになりました。hookのお二人も、今度大隅を訪問してくれるとのこと。

皆さんもぜひ、高級週末サブスクハウスもいいけれど、地域の暮らしと豊かさを自分たちの手で紡ぎなおしていく、空き家に時間と手間を投資していきませんか?

軽やかで情熱的で、ロックで最高な淡路島の二日間。
次回はTHEDDO.の仲間たちとも再訪させていただきたいと思います。
皆さま、ありがとうございました!

(取材・編集・執筆 | THEDDO. ふくどめ)

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