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あなたの胃酸は多い?少ない?

こんにちは!薬剤師のういちはるです。

現代人は毎日何らかのストレスを抱えています。ストレスは胃に負担をかけ、ひどい場合胃炎・胃潰瘍などを招きますが、みなさんはご自分の「胃」の状態や働きについて考えたことがありますか?
今日はそんな「胃」のことについて考えてみたいと思います。

胃薬ってどんなもの?

調剤薬局に勤めていると、胃薬の処方量の多さに驚かされます。
消化器専門のクリニックだけではなく、一般の内科はもちろん整形外科、脳神経外科、皮膚科や耳鼻科でさえも処方されます。

その理由としては、主に
①胃炎、胃潰瘍ができている場合。
②胃痛、胃もたれ、胸やけ、げっぷ、喉のつかえなどの訴えがある場合。
③痛み止めを処方される際にセットで処方される場合。
④血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合。
などがあります。

当然、①は早急な治療が必要ですので処方されて然るべきですが、問題なのは②~④の中で、必要がなくなっているにもかかわらず漫然と飲み続けている場合です。(もちろん症状によっては継続が必要なこともあります。)

では、胃薬にはどんなものがあるか見てみましょう。

胃薬の種類について

胃薬とひとことで言っても、様々な種類のものがあり、大まかに分類すると以下のように分類されます。

■消化性潰瘍治療薬
・攻撃因子抑制薬(胃を攻撃するものを抑えるもの)
・防御因子増強薬(胃の守りを強化するもの)
■健胃・消化薬
・健胃薬(神経に作用するもの、麻酔作用のあるもの、動きをよくするものなど)
・総合消化酵素(消化を助けるもの)
・膵消化酵素補充薬(膵臓の消化酵素の補充をするもの)

色々と種類はあるのですが、今回お話ししたいのは消化性潰瘍治療薬の中に分類されている、攻撃因子抑制薬(胃酸抑制薬)のうち
●PPI(プロトンポンプ阻害薬)
●H2ブロッカー
の2つを取り上げたいと思います。

具体的な薬の名前でいうと
PPI
→タケプロン(ランソプラゾール)、オメプラール(オメプラゾール)、パリエット(ラベプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)など

H2ブロッカー
→ガスター(ファモチジン)、ザンタック(ラニチジン)、アシノン(ニザチジン)、タガメット(シメチジン)など
です。
胃酸を抑える強さでいうと、PPI>H2ブロッカーとなります。

胃酸抑制薬による影響

胃酸抑制薬は文字通り、過剰になった胃酸分泌を抑えてくれる薬です。
胃酸が出すぎて胸やけを起こしている場合や、胃潰瘍・胃炎・十二指腸潰瘍等の治療には適した薬です。
ただし、このような治療に関しては3ヶ月以内で使用するように定められています。しかし、実際には3ヶ月どころか数年、数十年服用しているケースが多々あります。
また、心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある人には血液をサラサラにする薬がほぼ100%処方されますが、その際、消化管で出血が起きてしまうのを恐れて胃酸抑制薬がセットで処方されることがほとんどです。この場合もその後何年~何十年と継続していることが多くあります。

これらが問題です。

胃酸は非常に強い酸ですが、体内で非常に大事な働きをしているものです。
食べ物を消化することはもちろんご存じの通りだと思いますが、口から入ってきたウイルスや病原体をその強酸でブロックしているのです。
一般的に健常な人は、1mlの液の中に口腔内では細菌が10⁸ほど存在していると言われていますが、それが胃を通過し十二指腸や空腸になると10¹~10³程度になるのです。
わかりやすく言うと、10万人いた敵の兵士が1~2人くらいまで減るということです。コレすごくないですか?鉄壁の防御!!

話は逸れましたが、胃酸が減ってしまうとこの働きが弱まるため、ウイルス感染や食中毒などを起こしやすくなるということ。

また、タンパク質や脂質を分解する酵素は胃酸によって活性化するので、胃酸が少ないとタンパク質や脂質がスムーズに分解できなくなって未消化物が増えます。
身体にとって重要なミネラルも、未消化物が増えると体内に取り込まれにくくなります。というのも、ミネラルはタンパク質と結合して体に取り込まれるので、タンパク質が消化できないとミネラル不足も招くのです。
さらに脂質がうまく消化されなければ脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)も不足することになります。
→ビタミン・ミネラルについての記事はこちら

消化力の低下が様々な病気を招く!?

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<胃酸を抑えてしまう→消化が上手くできない→栄養障害/腸に未消化物が増える>
といった悪循環が続くことにより、身体には様々な悪影響が…。

・ミネラル不足による骨量の低下、精子の質や運動能力の低下(=男性不妊)、鉄欠乏症のリスクの増加、発作性心疾患の増加。
・ミネラル+アミノ酸の不足による精神面の不安定。
・未消化物が腸で腐敗することにより発ガン物質に変化。
・腸内細菌のバランスが崩れ、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患のリスクの増加。
など一部ですが、かなりの悪影響が懸念されます。

そして驚くのが、胃を守るために服用しているはずの胃薬なのに、これらの薬を多用している人には胃ガンが多くみられるそうです。(スウェーデンでの大規模コホート研究より)
心筋梗塞、脳梗塞、アルツハイマーのリスクを高める報告もあるそうです。

胃酸を抑えることによる影響がこんなにあるなんて、考えたことがありますか?
こわ。

なぜ胃酸抑制薬が多用されているのか?

私は製薬会社に勤めていたことがありますが、製薬会社の営業であるMRと医師の間には、一般の人には見えない繋がりがあります。
こういった「医者と製薬会社の関係性」というのも薬剤乱用の大きな原因ではないかと思っています。製薬会社側は製品を売るためにその薬のメリットを強調しますもんね。
今は減りましたが、ほんの十数年前には、接待や講演料、寄付金など、びっくりするような額のお金が動いていたんですよ。私も接待で美味しいものたくさん食べました。笑。

また、日本は国民皆保険制度のため、誰でも、少ない自己負担額で医療を受けることができます。ちょっとした不調でも医者にかかるという人は少なくないのではないでしょうか。

医師側の視点ではどうでしょうか?
近頃では「逆流性食道炎」という疾患が一般的になっていますが、胸やけやゲップの症状から「胃酸過多による逆流性食道炎」と診断されるケースがよくあります。
ところが、これらの症状は実は「胃酸が少ない」ために起こっていることが意外に多いのだそうです。
胃酸が多いのか少ないのかを厳密に調べるには検査が必要なため、そこまでせず問診のみで胃酸抑制薬が処方されるというパターンになってますよね。

また、今はドラッグストアなどでもH2ブロッカーが手に入りますので、胃の不調がある際に自身で「自分は胃酸過多だ」と判断して購入、飲んでいる人もいますね。

こうして、もともと胃酸が少ないのに更に胃酸を減らす薬を飲んでいる人が大勢いるのが現状です。

胃酸が少ないのに逆流性食道炎を起こす理由

胃酸はその強い酸で胃の中のpH値(酸性/アルカリ性の指標)を酸性に保っていますが、胃酸が減るとそれがだんだん中性に傾いてきます。
実は、私たちが食事をしたときも、食道から胃にかけて一時的に中性に傾きます。体はそれを察知して、食べ物を通すために胃の入り口の筋肉を緩めます。
普段は胃液や食べ物が胃から食道に逆流しないように、ここの筋肉が締まっていますが、食事の際はpHの変化を察知して緩むようになっています。

しかし、胃酸が少ない場合、胃の中の酸度が低く、体が食事中と勘違いして胃の入り口を緩めてしまいます。その結果、胃酸が食道に上がりやすくなり、胸やけやゲップ、酸っぱいものがこみ上げてくるなどの胃酸過多のときと同様の症状が起こるのです。

一般的に40歳以上の人の多くは胃が委縮してきます。胃の萎縮がある人は胃酸の分泌が20代のころの約半分に減り、量が少なめになる傾向があるそうです。60代になると約半数の人が、さらにその半分程度に胃酸が減ると言われています。
「お肉や揚げ物を食べると胃がもたれる」という人も胃酸が少ないと推測できます。過剰なアルコールやストレスなども胃酸が減りやすくなります。

こうして、先ほど述べたような悪循環に陥っていくのです…

では、どうすればいいの?

まず、胃酸抑制薬を飲んでいる人は、自分にその薬が必要なのかどうかをしっかり考えてみてください。
胃の不調がないのに「処方されるから何となく飲んでいる」のは、もう必要ないのかもしれません。
また逆に、継続的に飲んでいるのに調子が良くならない、お腹が張る、便通が悪いなどという場合も、合っていない可能性があります。
ただし、どちらの場合も勝手にやめるのではなく主治医と相談しましょう。
お医者さんはプライドが高いので、勝手にやめると怒ることがあります。笑

そして、薬を飲まなくても大丈夫な身体づくりをすることが大切です。
胃酸が少ない人は、食事の前に梅干や酢の物を食べると唾液や胃酸の分泌が促されるので胃腸の働き(消化)を助けてくれますよ!
レモン汁や大根おろしなどもgood★

胃に負担をかける甘いもの、腸に負担をかける加工食品や小麦製品を極力減らし、消化しやすい生鮮食品がおススメです!加熱しすぎたものも負担がかかります。

何よりも、よく噛んで・ゆっくり・リラックスして食事を楽しんでくださいね!!

さしみ_s

参考:「この薬、飲み続けてはいけません!」内山葉子著

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