カウンセリングをしていると辛くなりませんか?
『カウンセラー』として活動をしていた時、割と多く聞かれたこの質問。
「人の話をずっと聞くのって大変だね。」
「ずっと、暗い話聞いてるんでしょ?相手の悩み、貰っちゃったりしないの?」
カウンセラー=人の悩みを聞く=自分まで暗くなる=辛い仕事
そんな方程式のイメージなのだろうか。
この質問を受けた時、わたしは100パーセント自信を持ってこう答える。
「全く辛くないよ。むしろ力をもらえるくらい。」と。
…………
カウンセリング、と言ってもたくさんの技法や種類がある。
わたしは、ほんの一部をかじったレベルだ。
その中で、わたしが今主として学んでいる心理療法は、セッションの前に、必ずクライアントさんにこんな言葉を投げかけることから始まる。
それは
「今日、あなたは自分の何を変えたいですか?」
というセリフだ。
つまり、セッションの目的をしっかり持ってもらう、ということ。
ただ愚痴を言い続ける時間にするのではなく、また、自分は悪くないから相手を変えたいと嘆くのでもなく、
変わる対象は自分で、どう変わりたいか、どんな風になったら自分が楽になれるか、『自分の生き方を見直す』時間にするのだ。
目的地が明確にされているセッションは、一言で言うととても感動する。
『人に対する恐怖心を和らげたい』というクライアントさんの
人は本当は温かいんだ、という事実を知った時の優しい表情。
『自分に自信を持ちたい』というクライアントさんが手にした、
自分は無条件に大切な存在なんだ、という感覚。
そこに至るまでは、もちろん時間もかかるし、
ないことにしてきた過去と向き合わなければいけない。
でも、苦しい現実と向き合ってでも、自分を変えたい、あの子を守りたい、幸せになりたい、と願うセッションには
湧き出る力と、溢れる愛情がある。勇気がある。
「カウンセリングをしていると辛くならない?」
この質問にNO!と言える理由は、
「幸せになるために自分と向き合う姿」を目の当たりに出来るからだと思う。
でも、そんな『問題解決セッション』ばかりではない。
わたしが以前やっていた『傾聴カウンセリング』というものは、むしろ目的をはっきりさせてはいけない。
ただ、相手の話に耳を傾ける。そこにアドバイスや解決方法の提示があってはいけない。
『ストレスのガス抜き』のようなものだ。
初めは、がむしゃらにやっていたわたしだが、少しずつ自分の中に『しんどさ』を感じるようになった。
それは、周りの人が言った通り、
「ただ相手の辛い話を何時間も聞くことの苦痛」だった。
永遠と流れる愚痴と悩みは、真っ暗なトンネルの中にいるようで、
わたしも一緒にそのトンネルでさまよってしまった。
だから、何とかして、出口と言う解決策を提示したくなってしまう。
それを口にすることはもちろんしなかったけれど、我ながら傾聴の本来の役割を理解していない、身勝手なカウンセラーだったと思う。
けれど、少しずつではあるが、その傾聴の仕事が苦でなくなった。
なぜか。
それは、『自分への信頼』が増してきたことが理由だと思う。
クライアントさんと一緒にトンネルに迷い込んでいた時のわたしは、きっと自分への自信がなかったのだと思う。自分自身を信じられなかった。
だから目の前の人のことも信じることが出来ず、
「こんなに辛い状況、もうどうしようもないよ」と決めつけ、一緒にトンネルでさまよってしまった。
けれど、諦めずに心理の勉強を続けるうちに、
見失っていた自分への信頼を取り戻した。
わたしには、問題を解決する力もあるし、幸せになる力もある。
そう感じられるようになってきた。
すると、クライアントさんの話す悩みの中に、光を見出すことが出来るようになってきた。
何時間も流れる愚痴の中に「きっとこの人は問題を解決する力がある」という光が見えた。
その光を自分の中で決して手放さず、見失わず、目の前の人の悩みを聞いた。それは以前とは全く別物の時間だった。
「人の辛い話を聞いていると辛くなる」理由は、仕事内容にあるわけでもなく、まして、その原因を相手に押し付けるなんて言語道断。
自分の力を信じられないカウンセラーに、相手の力を信じられるはずがない。それを知らなった過去のわたしは、未熟以外の何物でもなかった。
相手の問題ではなく自分の問題。
自分にないものを、相手の中に見出すことは出来ない。
それって、心理やカウンセリングだけの世界に限ったことではない。
母親である自分が、わたしなんてダメだと思っていたら、目の前の子どもも自信がないように見えてしまうし、
自分が提供する料理に自信があれば、お客さんが美味しそうに食べているように見える。
世界は自分で創っている。
これって、正真正銘の事実なのだ。
サポートありがとうございます。東京でライティング講座に参加したいです。きっと才能あふれた都会のオシャレさんがたくさんいて気後れしてしまいそうですが、おばさん頑張ります。