ゾウが空を飛ぶ
これまであまりディズニーと関わらずに生きてきたような気がするのだが、よくよく思い返してみると幼少の折はいわゆる古典的名作をよく観ていたらしい。
ところで、以下のクリップをご覧いただきたい。僕の好きなバーバーショップカルテットのひとつ、Vocal Spectrumによるアラジンメドレーである。(曲は0:50から)
Vocal Spectrumは国際大会で優勝経験のあるカルテットで、学生時代からこの4人でやっているからかコンビネーションは抜群だと思う。
もちろん個々の実力も優れているわけだが、特にTenorのTim Waurick(向かって左、冒頭のArabian nightsでソロ担当)は、しばしばバーバーショップ界でもっとも素晴らしいテノールとして名前が挙がる人物だ。最後のロングトーンなど、ほとんど人間業とは思えない。
ディズニーのアラジンは、テレ東のディズニーチャンネルだかなんだかで放送していた短篇を観たことがあるくらいで、映画としては未見。だから、ファンの間でなされる「吹き替えは羽賀研二派か三木眞一郎派か」論争も、完全に蚊帳の外である。
今さらこの齢でFriend Like MeとかPrince Aliなんか必死で聴いて歌詞を覚えようとしているのも少し滑稽だろうが、なんだかんだ名作だけに良曲揃いだなぁと痛感する。
そういう風に、バーバーショップから名曲を知ることが僕の場合多いのだが、先日同じVocal Spectrumのアレンジのうち、気になる曲を見つけた。
次にあげるWhen I See an Elephant Flyである。
「元は何の曲なのだろう」と考えなしに検索して、その結果を見て自分の頭の悪さに嫌気がさした。
皆さんご承知の通り、これはそのまんま『Dumbo』の曲である。
(ダンボ以外にゾウが空を飛ぶ話はあるのだろうか)
映画自体はパブリックドメインながら吹き替え音声の著作権が有効なので原曲しかリンクできないが、YouTubeで日本語版「もし象が空を飛べたら」を聴いてみたところ、驚いたことに半分くらい歌詞を覚えていた。
かれこれ20年以上前にビデオで観た記憶がよみがえったというわけである。
一方、英語版の歌詞はダジャレがすごく入り組んでいて非常に面白い。
が、それだけに直訳は不可能である。
僕が記憶していたバージョンでは、冒頭のカラスたちのセリフは「正月にはタコは飛ぶけどイカはどう?」「油揚げならトンビと飛ぶが?」といった洒落に吹き替えられており、かなりのセンスが感じられる。
で、調べてみるとこの吹き替えはディズニーから公式に販売されたソフトのもので、ほかに劇場公開版が2種とTBS版との3種吹き替えが存在するらしいが、現在手に入るのはソフト版のみだという。(百均とかで売ってる廉価版は、また別のオリジナル吹き替えであることが多い)
話は逸れるが、こういう海外のアニメーションについて調べるたび、「もう手に入らない吹き替え」に思いを馳せて哀しくなってしまう。
たとえば大好きな映画『スヌーピーの大冒険』は、僕の記憶のなかだとチャーリーを演じるのは坂本千夏なのだが、最近買ってみたDVD版では古田信幸が演じていた。古田ボイスのチャーリーも知らないわけではないけど、この映画についてはやはり幼少期に観たものが女性の声だったものだから、(演者の皆さんにおいては申し訳ないことに)すごくガッカリした。
坂本バージョンの『大冒険』はソフト化されておらず、テレビ放送されたものに限られるみたいだ。
もっと言うと、『大冒険』公開時はチャーリーをあの野沢雅子が演じていたらしいのだ。ライナスは太田淑子で、ルーシーは平井道子。想像もつかないくらい豪華キャストである。
テレビ放送分は録画でどうにか手に入るかもしれないが、この劇場公開版はおそらく後から日の目を見ることはなかったはずだ。
どうにかならないものか……。
閑話休題。
そんなこんなで『ダンボ』が気になったので、簡単にアクセスできる英語版を少し観てみたのだけど、ダンボってこんなにかわいかったのね。
予算が切り詰められ、キャラクターの造形はシンプルに、背景は書き込みを少なく作られたそうだが、それでも低予算ぶりを感じさせない技術の高さに驚く。
このくらいの映画なら字幕なしで観られる程度の英語力はあるつもりだが、せっかくだから昔観ていた吹き替えで観たい。幸いにして『スヌーピーの大冒険』と違い、『ダンボ』はいちばん手に入れやすいソフト版で観ていたので、近々入手してみようと思う。
というか、ディズニーの名作にもう少し触れておきたいな、と。
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