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いま行きたい展覧会

この頃はちょっと覚醒状態にあるようで、博物館やら美術館やら、けっこういろいろなところへ外出できている。令和2年は去年に増して文化的活動に興じたいと思っていたから、幸先の良い初月を過ごせているようで好ましい。

といって余暇の寡ない日々には違いなく、これから行きたいけど行けない特別展も出てくることが予想されるから、例によって見ておきたいものの中から、比較的シェアするのに向いている数点を(備忘録の意味も含めて)ここに書き並べておく。


●太宰治と埼玉の文豪 @さいたま文学館(~3/8)

太宰と埼玉の文豪

文豪関連なのでおそらく逃さないとは思うのだけど、そう思っている内にいつの間にか会期の終わってしまうのが常である。

太宰については、これまでに何回も特別展を見て勉強しているし、初版本収集の観点からも気にしている作家のひとりだ。

だからといってここで得るところが皆無であるかというと、決してそんなことはない。というか僕の物覚えの悪さとか、根の部分での文学に対する無理解とが影響して、未だに学ぶべきことは基本的な事項も含めてたくさんあるだろうと思っている。

また、やはりポスターで「文豪とアルケミスト」の絵を全面に押し出しているのが新鮮である。ゲームとしての人気は往時に比べると落ち着いてきた感も否めないが、新たなファン層を獲得して尚、ニーズにこたえようとする文学館の姿勢は評価されてよいだろう。


●山田耕筰と美術 @栃木県立美術館(~3/22)

山田耕筰

なぜかポスターで踊っている山田耕筰がキャッチ―である。ちょっと遠方なので行きづらいが、巡回がないとなると遠征に興じるしかない。

山田耕筰というと、毛がないことを指摘されて本名の「耕作」に「ケ(毛)」をふたつ付けたというエピソードが有名だが、雑学好きとしては、それを指摘した「颯田琴次(さった・ことじ)」の名前も記憶されてよいと思う。

僕はチャイムで「赤とんぼ」の流れる街に育った身なので、音楽家としての山田耕筰にもそれなりに興味はあるけれども、それ以上に気になるのは、他の美術家や詩人との交流についてだ。

今回の展示は、竹久夢二や恩地孝四郎あたりにスポットを当てているらしいので、まあ「セノオ楽譜」は散々見ているので今さらな感はあるかもしれないが、いろいろな本・楽譜の美麗な装丁を楽しむことができると思う。

最悪、図録の通販さえ依頼すれば事は足るのだけど、こういう機会でもないと足を運ばない地域であることも確かである。


●シュルレアリスムと絵画 @ポーラ美術館(~4/5)

Screenshot_2020-01-31 シュルレアリスムと絵画 ―ダリ、エルンストと日本の「シュール」

これもちょっと行きづらいのが悩みどころだ。箱根は毎年のように家族旅行で赴いていたのがもう10年以上前のこと。久々に行きたいなぁ。

シュール」という形容は日常でもされがちだが、それと芸術の一派「シュルレアリスム」とは別に認識すべきだと思う。

なんて、ブルトンすら読んでない門外漢が偉そうに言うのも分不相応だし、まして絵画の良さを語るほどの素養があるでもないのだけれど、シュルレアリスム絵画には、不思議な魅力を感じずにはおれないのだ。

ダリとかマグリッド、キリコあたりの有名どころももちろんのこと、国内でも古賀春江やら瑛九やら魅力的な作家はたくさんいる。

古賀春江は画家としても好きだけど、やはり古書マニアとしては装丁家としての一面も推しておきたい。

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(参考:井伏鱒二『なつかしき現実』古賀春江装)

こういった昭和ゼロ年代のモダンデザインが、たまらなく好きなのである。

また期間中ポーラ美では、「モードとアートの香水瓶」として、デザイン性に優れた香水瓶の展示も同時に開催するらしい。こちらも見逃せない。


●かこさとしの世界展 @八王子市夢美術館(2/1~4/5)

かこさとし

かこさとしが亡くなってもう2年が経とうとしているのか。近年耳にした作家の訃報の中でも、トップクラスに悲しかったのを覚えている。

ご存知の方がほとんどのことと思うけど、かこさとしは『だるまちゃん』シリーズとか『からすのパンやさん』で知られる絵本作家で、偕成社から出た作品群は「かこさとしおはなしのほん」という名前でシリーズ扱いされている。

僕が初めて読んだのは、多分に漏れず『からすのパンやさん』だ。
母親の実家にあったのを繰り返し読んでいたのだが、キャラクターのかわいらしさは元より、ディテールに凝った画面づくりに魅せられたものだった。見開きページに敷き詰められた楽しいパンの数々、読んだ方ならご記憶のことと思う。

で、その後はしばらく意識することはなかったのだが、2013年に『パンやさん』の続編となる『おかしやさん』『やおやさん』『そばやさん』『てんぷらやさん』が同時に発売されたのには度肝を抜かれた。
この時点でかこさとしは87歳だったのだ

その後も『だるまちゃん』シリーズの続編を出し(今調べたら『にんじんばたけのパピプペポ』とか『おたまじゃくしの101ちゃん』とかも!)、亡くなるほんの直前までいい絵本を生み出そうとしていた方だった。

最晩年の活動はNHKの日曜美術館「かこさとし最期のメッセージ」に紹介されていて、あれも実によくまとまった特集だったが、いま一度、氏のしごとを俯瞰してみるいい機会だと思っている。

というかぶっちゃけ、「かこさとしの世界展」なんて銘打たれてしまっては、行かないわけにゆかないのである。



趣味がインドアなくせして家にじっとしていられぬ性分だから、休日ともなればこういうのにガンガン訪う日々。しかし、いまひとつ新年の抱負として述べたところの「勉強をする」という目標は、未だ一切の進展が見られていない。

家でのんびり読書に励むという選択肢も、これからは休日の愉しみ方として導入しなくてはなるまい。

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