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夏がポケモンだったころ

そんなにゲームをやらずに育ってきた僕だが、ポケモンは小学校の間、そこそこ熱中してやっていたように思う。

といっても、最初に買ってもらったのあと、ルビーとやって、ほぼそれきりである。(大学の時に思い立ってブラックを中古で買ってみたが、たしか最後まではやらなかったはず)

アニメはもうちょっと長く見ていたけれども、ダイパ編の最後まで見終えた記憶はない。それとて食卓で付けていたテレビで漫然と見ていたにすぎないので、ほんとうに興味を持っていたのは、ルビー・サファイアあたり――いわゆる第3世代までだ。


ポケモンといえば、「夏はポケモン!」のキャッチフレーズのもと、毎年夏に映画が上映され、おまけとしてゲームソフト向けにポケモンが配布されたりするので、少なくとも往時の子供たちは夢中になって詰めかけたものだった。

少年時代の僕も、98年公開の第一作『ミュウツーの逆襲』を筆頭に、ほぼ毎年映画館へ足を運んでいた。


で、アマゾンプライムで配信終了作品の一覧を見ていたら、それまで全作見放題だったポケモン映画の配信が、この週明けで終わってしまうと気づいた。

そういえば、今なお評価が高く、近年リメイクが製作された『ミュウツー』も10年以上見ていないし、『エンテイ』『セレビィ』あたりは劇場で見て以来だから20年以上見返していないなぁ、となんとなく寂しくなった。

いい機会だし時間は有り余っているし、これを機に一気に総ナメしておくのも悪くないかもしれない。そう思った僕は、『ミュウツー』から順番に攻略していくことにしたのだった。


僕が映画館で観たのは『ルカリオ』まで。

ラティアス・ラティオス』だけはなぜか劇場へ行かなかったのだが、これについてはテレビで放送されているのを見たから「見た」にカウントするとして、実質的には『ミュウツー』から『ルカリオ』までの8作を見返す必要がある(?)ことになる。

――で、この3-4日をかけてようやく8作を見切ったのだが、おぼろげな記憶による事前の評価と、今回改めて見終わっての評価とがまるで違うのに我ながら驚いた。

ミュウツー』はポケモン映画としてかなりよくできている。これは予ねて抱いていた印象と同じだ。
が、子供にはおそらく難しく(僕もたぶん当時は理解できなかった)、また劇場公開時にはなかった冒頭10分の「ミュウツーの誕生」があるのとないのとでは、作品の理解度や深みが大きく違ってくる。

また、ほぼ記憶になかった『エンテイが案外まとまりのよい作品であったこと、反対に、なんとなく名作だと思っていた『ラティアス』がどちらかというと雰囲気重視でストーリーに厚みがなく単調に感じられたことなど、意外な発見が多かった。


ここで、ふと気になったので、各作品の尺がどれだけ違うのか並べてみると、以下のようになった。

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Wikipedia準拠なので正確には違うのかもしれないけれども、こうして見ると初期作の短さが際立っている。比較のためダイパ作品まで表に入れたが、一番長いものと一番短いものとで30分も違うのはかなりデカい差だろう。

まあたしかに思い返してみると、昔のアニメ映画は同時上映ありきで2-3本立て、時間も1時間ちょっとのものが多かった気がする。ポケモンについては同時上映もポケモン(ただし人間は登場しない)だからまだいいけれども、ワンピースとデジモンを一緒くたに上映するようなのが、僕の頃はけっこう残っていた印象。

いまより映画が娯楽として重視されていたということであろうか。


まあそれはそれとして、改めて表を見ると、この短さでは『ラティアス』の単調さは仕方ないのかもなと思う一方、『エンテイ』とか『ミュウツー』はあれだけの内容をよく詰め込んだものだと感心した。

『ラティアス』あたりからはCGの質も向上しているし、『デオキシス』からは尺に大幅な余裕も出てきたことがストーリーや演出の"間"から明らかに見て取れる。このへんはまとめて観なければ思い至らなかった点かもしれない。

各劇場版の微妙なつながりとかスタッフの遊び心も、リアルタイムで1年おきに観ているだけではたぶん一生気が付かなかったと思う。


なまじ大人になったことで、「ストーリーはよいけれどもポケモンらしさが弱い」とか「アクション過多でメッセージ性が薄れてしまっている」とか、面倒なことが頭によぎるようになってしまった。

けれども、それは作品自体を楽しめないということでは決してなく、純粋に楽しむ気持ちとは別のステージで冷静な批評が下せるようになったというべきだろう。

内容のよさと個人的な好みとを合わせて3本選ぶとすれば、『ミュウツー』『エンテイ』『ジラーチ』になるだろうか。しかしどれもこれも見て損はない良作である。

きっとまた配信される日は来るはずなので、気になった方は機会をお待ちいただきたい。


アニポケは全話見るといくら時間があっても足りないので見返すのはキツいわけだが、久々にポケモンを見たことで、むしろゲームの方をやりたい気持ちがにわかに湧き上がってきた。

せめて3DSを持っていれば気軽にリメイクを手に取れたのだが……。

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