【1分で読める小説】 その9 珍獣と珍虫
独立したムルリン王国から“親善大使”として贈られたのは、最近発見された幻の珍獣だった。姿形はパンダの赤ちゃんに似ていたが、色は白と茶で、動作も鳴き声も全てが愛らしかった。日本政府から飼育を任された動物園はある難題に直面していた。その珍獣は現地では“恐るべき名称”で呼ばれていたのだ。
「どうします、園長?」「仕方あるまい。ムルリン語での正式名称を変えてはならないという条件で特別に贈られたのだ」かくして、その珍獣は正式名称である『ゴキブリ』という名前で一般公開された。ゴキブリを