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わたしとスクールカウンセラー

 わたしは仕事を始めて13年目の臨床心理士・公認心理師です。
 心理士(師)としてのアイデンティティのほとんどはスクールカウンセラー。東京都内でずっとスクールカウンセラーの仕事に就いてきました。

 スクールカウンセラーと話をしたことがある、どんな人だか知っている、という人はあまり多くないかもしれません。話をしたことがあっても、あるいは一緒に働く学校現場の先生たちでも、スクールカウンセラーとして働いている心理士(師)がなぜそこで働いているのか、どんな人なのかということに触れる機会はほとんどないのではないかしら…とも思います。
 東京都内で言うと、公立の小・中・高には、どの学校にもスクールカウンセラーがいます。その総数は1500人以上。様々なバックグラウンドの心理士(師)が様々な思いを胸に学校でのケアを担っています。

スクールカウンセラーを仕事にするまで

 「どんな人なのか」を知る機会が少ないスクールカウンセラーなので、少し自分のことを書いてみようと思います。
 私は教員の両親のもとで育ちました。教員は世襲性がとても高いと言われます。私自身もいずれは先生になるという選択肢を持っていました。大学の学びとして心理学科を選んだのは「人の心」という見えないものに対する興味からで、まだはっきりと仕事としてイメージしていたわけではありませんでした。その気持ちが大きく変わったのは、教育実習に行ったときです。
 4週間の教育実習が終了するとき、最後にクラスの生徒たちが手紙をくれました。ある女子生徒のくれた手紙の裏側を見ると、たしかに何か書いてあって、でも、それは消しゴムで消されていました。なんだろう?と目を凝らして見てみると、いじめられていること、毎日どれだけ辛いか、学校に行きたくないがびっしりと綴られていました。誰にも言えなかったけれど先生だったら言えると思ったと書かれた最後の言葉も含めて、それは消しゴムですべて消されていました。
 誰にも言えなかった。実習を終えて去っていく教育実習生にしか言おうと思えなかった。そのとき、こういう声を、こんな思いをしっかり受け止めることが学校の中にどれだけ必要なのかをまざまざと突きつけられた思いがしました。わたしにとっては、学校はそれなりに「良い」ものであったこと、そしてそれは光のあたる側に過ぎない一面的な見方であったことをはっきりと意識しました。スクールカウンセラーになろうと思ったのはその時です。大学院に進学し、3年かけて修了し、臨床心理士になり、スクールカウンセラーの仕事に就きました。

スクールカウンセラーはどんなことをする人なのか

 学校の中には様々な子どもたちがいます。学校が居場所にならない子どもたち、家庭が居場所にならない子どもたち、誰かに頼ることのできない子どもたちとどのくらい出会ったことでしょうか。公教育の中にいる私たち公立学校スクールカウンセラーの役割は、最後の受け皿になることなのかもしれません。少しずつ時間を積み重ねて子どもたちやお母さん、お父さんと関係を作ってきました。

 どんなことを考えながらスクールカウンセラーとして仕事をしているのか、学校の中でどんな仕事ができるのか、ということを次はことばにしてみたいと思います。

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