生まれた国に暮らせる幸せ。ーパリから帰国5日目。
フランスで知り合った人が何人かいる。そのうち2人と時々連絡を取っていた。一人はモロッコ人で、一人は生粋のパリジャン…だと思っていたらその人が実はアルジェリア人だったことを偶然、今回のパリ滞在中にSNSで知った。
モロッコ人の友人Yとアルジェリア人の友人D。以前彼らそれぞれに軽く「フランスに住みたいなー」と言ったことがあったのだが、その時彼らは二人共、私に全く同じ返答をした。"What? What is the problem of Japan?" 「え?日本に何か問題でもあるの?」私は「いやいや問題はないけど、新しく人生を始めたいから…」みたいなことをまた軽ーく返答した。モロッコ人のYに「なんでフランスに住んでいるの?フランスが好き?」と聞いたら、「Not especialy.. でもモロッコよりフランスの方が経済状況がいいから。」と言っていた。
アルジェリア人のDはハンサムでおしゃれでいつも香水のいい香りをさせて、フランス語はもちろん、流暢な英語に加えてロシア語やスペイン語も話すらしい。外見からは育ちの良さや風格、貫録を感じる。お金持ちでインテリのパリ人に違いないと愚かしくも私は勝手に思っていた。今回のパリ滞在中に不意に昔の知り合いのことを思い出してどうしているかなと久しぶりにFacebookを開いたら、「知り合いかも」にDが表示されていた。思わず彼のページを開いたら、"Algeria"出身とあり、畑の中でご両親と並んだ写真や昔の彼の姿がフィードに表示されていた。自分の誕生日に「自分が年を取るたびに両親が老いていくのがつらくなる」とポストしていた。写真だけで年齢ははっきり分からないけれど、彼の年齢からするとご両親はかなり高齢に見えた。アルジェリアがどんな国か知らないし、畑の中で育ったら貧しいというわけではもちろんない。彼はしっかり教育を受けてきたのだろうし、自国や家庭の経済状況が理由でフランスにいるわけではないのかもしれないけど、しかしそうでないとも言えない。Dのことは彼に聞かないと分からないけれど、見た目だけで彼を決めつけていた自分に気がつき、恥ずかしくなった。
”海外で仕事をしている、海外に住んでいる”と聞けば日本であれば羨望の眼差しを浴びることが多いだろう。経済的に余裕があることやご自身やパートナーの方がキャリア的に成功していることの証のように見られるかもしれない。
しかし世界を見渡せば、自国で充分な教育が受けられない、仕事がない、賃金が安い、安全に暮らせない等の理由で、他国に移住するケースも多いだろう。
日本の隣国の韓国でも一般市民の生活を脅かすような政治問題が現在進行中だ。
自分の生まれ育った国に当り前のように安心して暮らすことができ、したい生活や仕事、新しいチャレンジなどのためのオプションとして他国への移住を考えられることは、実はとても幸せなことなのだ。
平和な日本に生まれ育ちそこに暮らせる幸せに気づかずに、平凡で退屈な生活に不平不満を抱え、他国に逃げようとしていた自分が心底恥ずかしい。
もちろん経済や安全の面で恵まれた国に生まれた人が外国に移住してはいけないということではない。
しかし、ここに穏やかに暮らせることのありがたさにやっと気づいた今、「外国に住みたい」とあんなに思っていた気持ちが弱まったことも事実だ。
今日はパリのノートルダム大聖堂がリニューアルオープンする日。今ネットの生配信でオープン前のコンサートを視聴しながらこの記事を書いている。
私も新しくなろう。
余分なものはそぎ落とし、焼き尽くして、
新しい自分でまた輝けるように歩き出そう。
Merci, Paris!