長門宮の物思い――李白の詩の詩

長門宮ちょうもんきゅう物思ものおも

天は、北斗の星々をめぐらせて、
西の楼閣ろうかくの上へかけた。
今では、この美しい宮殿に人は無く、
闇の中を、蛍火ほたるびが流れゆく。
月の光も、まさにさしかかろうとしている
長門ちょうもんの宮殿ではあるが、
これら(めぐる北斗、流れる蛍火ほたるび、さしかかる月)は、
(かつてみかどの愛を失って
ここへ退いていたる皇后の
光と時間とをなくした物思いに対照をなして
私の想像の中で―)
格別に、一段と深いものにしている、
この宮殿の奥の部屋に一人、
しのんでいた人のうれいを。


長門宮ちょうもんきゅう物思ものおも

天は北斗をめぐらして 西楼せいろう
金屋きんおく 人無く 蛍火けいか流る
月光 いたらんと欲す 長門殿ちょうもんでん
べつす 深宮しんきゅう一段のうれいを


長門怨

天 囘 北 斗 挂 西 樓
金 屋 無 人 螢 火 流
月 光 欲 到 長 門 殿
別 作 深 宮 一 段 愁


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