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いまいち消化しきれてないジョーカー感想(関連作品もネタバレあり)

 私の涙腺はついぞ開くことなく、エンドロール後に映画館の明かりがついた。

 泣けなかった。笑えなかった。絶対泣くと思ったのに、どうしても泣けなかった。
 主人公のやせ細って浮き上がった肋骨、落ちくぼんだ瞳。
 笑顔、ひきつった笑顔、無理やり作った笑顔、ぞっとする笑顔。
 そこに物悲しいチェロがいろどりを添える。

 胸を締め付けられるような苦しさはまるでない。
 そこにあるのはからっぽ。虚無。何かとんでもなくすごいものが通り過ぎた、その後。
 これが余韻と呼べるのかすらわからない。人類というか、自分に理解できたとは思えなかった。

 ネットでの前評判はことごとく分かれる。

①「鬱だった、暗かった、つまらなかった」
②「日本ならふとしたきっかけで誰しもジョーカーになりうる/自分もジョーカーになるかもしれない」

 これさえ言っとけば見に行かなくても見に行った風のアリバイが作れる。
 恵まれない市民がどん底に落ちてブチ切れてヴィランに覚醒する話?
 いやいや、そんなセンテンスはナンセンス。
 けれど語る言葉が見つからない。私の感受性は豊かなはずなのに。小泉進次郎のスピーチ並みに。

 暴力RTAかよってレベルの治安の悪いゴッサムシティ、清掃員のストで町はゴミの山、富裕層と貧困層の溝は広がるばかり。
 コメディアン志望の得た笑いは、満たされる笑いではなく惨めな嘲笑。
 元々何も持っていなかったはずなのに、さらに奪われ、精神をすり減らし行きついたのは、己もまた理不尽な暴力を身にまとうことだった。
 彼に殺される人間の「自業自得度」はどんどん下がる。最終的には何の罪もない、ジョーカーに歩み寄ろうとしたセラピストすら殺された。
 絶望の果てに観客の同情すら拒絶した生々しい暴力を引っさげて、か弱い狂人は悪のカリスマとして君臨する。

以下覚え書き。

小説書きとしての物語構成から見た要素
・主人公によくある「高貴な血統」のアンチ
・バットマンユニバースの否定
・ターニングポイントは母親のカルテを見たシーンかな、多分
・「悲劇か喜劇かは主観で決まる」という映画そのものにも波及するメタ性あふれるメッセージ

ネットで見つけた面白い解釈・説まとめ
・ジョーカーが受けてきた理不尽な仕打ちは彼の妄想で、周りの人間の行動は本来筋が通った常識的なもの
(元来の純粋な狂人であり信頼できない語り部)
・というかこの映画全てがジョーカーのジョーク
・他作品の年齢関係に齟齬があるため、ダークナイトなどの他作品に出てくるジョーカーは映画の主人公に影響された別のピエロ

ジョーカーを見るだけではわからなかった、ネット及び同行者に教えてもらった情報
・ジョーカーは他作品で悪事を起こすたびに精神病院から抜け出している、精神疾患のため死刑にできない
・ジョーカーは他作品だと殺人とか強盗とか顔をはがしたりとかしている
・ジョーカーは他作品だと「絶対ありえないだろ」みたいな過去を語る、しかも登場するたびに変わるので読者みんな信用しない
・映画最後の方で殺された市長の息子ブルースがのちのバットマン
・ジョーカーの死亡パターンは作品によって数種類ある
・レゴバージョンではバットマンとジョーカーのクソデカ感情が見られる(らしい)

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