宗教2世と児童虐待(1) 10年前は見向きもされなかった

子供に暴力をふるう義兄を児童相談所に通報

今、国会で宗教2世を虐待被害者とし、児童相談所でも対応できるような仕組みを作るよう議論が始まった。
以前虐待問題を対応した私からすると「ようやく時代が来た」と思うとともに、あの事件がなければ、この問題が未だに見て見ぬふりが続く社会だったのかと暗澹たる気持ちになる。10年以上前、私が経験した宗教2世問題について知ってもらいたい。

10年以上前だが、義兄は新興宗教に傾倒し家族ぐるみでその宗教の施設に熱心に通っていた。詳しくは知らないが仏壇や墓を買ったり、その宗教内での身分を上げるための修行などに相当のお金をつぎ込んでいた。子供が小さい頃は問題なかったが(実際はあったのだが)、だんだん子供が大きくなり、その宗教に疑問を持ち始めるようになり、反発するようになると暴力をふるった。月に1回宗教施設の本部で祭りがあるのだが、貸し切りバスを借りて集団で行き、次の日の学校は休ませたりと学業にも影響があった。また1年に1回の大きいお祭りの際は、教え主のためにダンスを踊らなければならず、その練習を強制しそれに反発する子供に暴力をふるって言うことをきかせていた。書いていてバカバカしくなるが、当人はいたって真剣で、「真面目に信仰しなければとんでもないことが起こる」と信じ込まされているため必死なのだ。

私もこの家族のおかしさにうすうす感じていたが、嫁の立場のためなかなか強く出ることはできずにいた。
しかし、子供はお友達に誘われたキリスト教の教会で宗教とはどのようなものかを知り、親が信じている宗教がお金ばかり取られているということに気づく。自分のお祝いやお年玉も全部取り上げられ、修行と称したものにつぎ込まれることがおかしいと気づいたのだった。

あることがおき、「お前おぼえてろよ」と義兄が子供に電話で言ったのを機に、これから暴力を振るわれるのが目に見えた私は、夫と話し合って児童相談所に電話した。子供たちは児童相談所で話を聞かれることになった。

宗教問題にはタッチできない児童相談所

児童相談所で子供たちが話した虐待の内容は、予想以上にひどいものだった。寝ているときに急に殴られたり蹴られたり、あえて外から見えない胴体部分を傷つけられていた。言うことをきいても、きかなくても、気分次第で暴力をふるわれ、家では安心して寝られなかったようだった。
学校の体育の時間に傷を見られ、先生に聞かれた際に「お父さんに殴られた」と答えたのだが、その担任は「お前のお父さんそんなことしそうにないのにな」と言っただけで、その場はスルーしたそうだ。
我々が児童相談所に通報したことで、その担任は後日校長と一緒に児相に呼ばれた。担当者が「今、校長先生と一緒に来て、うちの所長にめちゃくちゃ怒られてます。現認していたのになぜ通報しなかったのかと。」と言っていたので、もしこれを読んでいる先生がいたら肝に銘じてほしい。
非常に難しく感じたのが、義兄の「宗教を強制するために暴力をふるう」という行動に対して、児相が関われるのは「暴力をふるう」という行為だけである。これで義兄が暴力を振るわずに宗教を強制していたら、児相の範疇ではなくなってしまうのだ。児相の担当者も「宗教は信教の自由があるから、こちらからどうこうはなかなか言えないんですよね~」と及び腰だ。
宗教を強制しない時でも日常的に暴力をふるっていた義兄だが、児相に通報されたと知って逆上した。「親にこんなことをしてお前にとんでもないことが起きるぞ」と子供に電話口で怒鳴っていたが、自分も親にひどいことをしているということに全く気付いていないところが滑稽だなと思いながら聞いていた。

長くなるので2へつづく


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