Agile PBL祭りをやる理由

こんにちは。

筑波大学と筑波技術大学の情報系学科で教員をやっています。
また、2013年から筑波大学でProject Based Learning(PBL, プロジェクトによる課題解決学習)の教育プロジェクトenPiT (成長分野を支える情報技術人材の育成許定の形成)に関わっています。このプロジェクトに関わっている過程でアジャイル開発を知り、アジャイル/スクラムコミュニティの方々など関わりながら主にスクラム開発フレームワークやXPのプラクティスを取り入れたチーム開発を進めてきました(https://enpit.coins.tsukuba.ac.jp/)。

この度、アジャイル開発を取り入れたPBLを実践している大学の人たちが集まって「AgilePBL祭り」を企画しています。

先日、企画メンバーの1人である永瀬美穂さんがAgile PBL祭りの趣旨についてとても詳しくエモーショナルに説明してくださいました。

そこで私からは教員の立場で「Agile PBL 祭りをやる理由」について言葉足らずながらも書いておこうと思います。なお、Agile PBLやこのお祭りの概要については省略するので永瀬さんの記事を読んでください。

1. 大学教育においてAgile PBLは良いぞと広めたい

大学では基本的に学部1年〜3年まで講義・演習を中心に専門に関する基礎知識を学びます。それをベースに卒業研究では指導教員の協力のもと自分で研究を進めます。答えのない問題に対して自分自身で問題を分析し、周辺研究をサーベイし、解決の糸口を見つけて、解決に向けて試行錯誤します。
しかし試行錯誤のプロセスについて体系的に学ぶことは(基本的には)ありません。大学教員は自らの研究活動とこれまでの学生指導を経て進め方に関しては多くのノウハウを持っており、いわゆる師弟関係のような形で研究をしながら学び取っていきます。

私がアジャイル開発・スクラム開発フレームワークに関して触れた時、研究活動のプロセスと相性がいいと感じました。アジャイル開発はクネビンフレームワークにおける複雑な問題(正解がわからず、また状況が変化し続ける問題に対して、検査(prove)・感知(sense)・対応(respond)の繰り返しで解決する必要がある問題)と相性がいいと知り納得しました。

また問題を探索的に解決しやすくするための仕組みが用意されているのに感心しました。特に「わからない」「困っている」「モヤモヤする(違う気がする)」といった人に言いにくい問題を早く引き出せる環境を作り出す仕組み(いわゆる心理的安全性)、振り返りによってチームなりの取り組み方をチームメンバー自身が作り上げていく仕組みにはなるほどと思いました。

Agile PBLはチームでのソフトウエア開発の実践演習としてだけでなく、大学での研究や学習のフレームワークとして活用できそうだと思ったわけです。

それを感じているのは私だけではなく、enPiT等でアジャイル開発に触れた先生方もそれぞれ同じように感じ自分の研究室での運営に取り入れていると聞いています。ただ、スクラムガイドでも「理解は容易」でも「習得が困難」とあるように原則を理解せずプラクティスだけ借りると、あれ?おや?となることも多いので、それぞれ進め方に試行錯誤が必要です。

そのような教員や、Agile PBLを経験した学生たちがその後の活動での試行錯誤を共有する場が欲しいと思っています。

2. 企業・学生の隔てなく学びを共有したい

上記にも書きましたが、問題解決に対峙しているのは学生も企業の方々も同じでそれぞれで多くの学びを得ているのだから、企業の方も学生たちもその隔てなく学びを共有できる場があればと思いました。

学生の様子を見て企業の方がアドバイスをする、とか、リクルーティングとかではなく対等に学びを共有する同士としての集まりです。

筑波大のenPiTで講師を務めてくださっている永瀬さんやkyon_mmさんからも「チーム開発における先入観などがない学生だからこそ得られる、企業でのチーム開発とはまた違った学びもあり面白い」という話を聞いていますし企業の方にとっても互いに得られるものがあるのではないかと思います。

3. Agile PBLを続けたい

 本当は、この項目が一番大事です。今私が関わっているenPiTは来年度でプロジェクトが終了します。これまでenPiTに関わっている教員や学生・関連企業の方々で集まる機会が年に数回あったのですが、これはプロジェクト経費によって成り立っていたものですので、維持が難しくなります。
 また、これまでアジャイルコーチを講師にスクラムブートキャンプ(約1週間でスクラムの基礎を体感する合宿)を実施したり、開発に携わるエンジニアの方々によるゲスト講義、レビューへの参加などをやってきましたが、これまでと同じように進めていくのは(金銭的にも人的リソース的にも)難しいです。
 規模縮小ややり方を変える必要はあれども、是非とも続けていきたい、願わくば多くの大学で定着するものになれば、と考えています。

Agile PBL祭りをその足がかりとし、今後多くの大学で Agile PBLを有機的に続けられるようにするにはどうしたら良いか、一緒に試行錯誤してくださる方を探しています。

おわりに

まとまりのない文章になってしまいましたが、祭りの前にリリースします。Agile PBL祭りなどでいろんな人とお話ししてフィードバックもらって、Agile PBLに関する情報や思いをもっとアウトプットしていきたいです。

とりあえず、明日何が起こるか、ワクワクしています。



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