NO BARS みんなちがってみんないい 教え子たちとの居場所づくり
『〝社会の中の目に見えない垣根をなくしたい。〟
ママたちが立ち上げた新たな居場所から見えてきたこと』
15年前の特別支援学級の教え子たちとの時間が戻ってきました。月に1〜2度、お母様たちが立ち上げた居場所に出向き、支援学級の卒業生たちの現状をお聞きしています。思い出話に花が咲きますが、一方で卒業後の就労についての話は尽きません。
「障害がある人たちの雇用枠はもっと広げられるべきではないのか。」
と私は憤りを感じてしまうのです。
「特性をもつ子どもたちが不自由である。」という認識は排除されなくてはなりません。
それはマイノリティを生み出している側の人たちの部分的な見方に過ぎないからです。
その人その人によって困り感は違うものの、訓練校で培った技術や、つけてきた自信は素晴らしいものです。〝障害〟は言い換えれば〝ギフト〟であり、
それは皆が気づかないところに眼を向け、社会に働きかけることのできるセンスでもあるのです。
そして彼らのセンスが社会に対して何の生産性を生めなかったとしても、数値化できないものの尊さに気づかせてくれます。
〝人はそこに存在するだけで
誰かを笑顔にし、
ともに泣き、
お互いに響きあうことができる。〟
そんなメッセージをいつも投げかけてくれるのです。
ここからは、「障害をもつ人たちの雇用」についてお話を戻します。私自身の経験になるのですが、
育児のため7年の教師生活を終えた後、ほんの1年と半年だけ菓子工場に勤務した経験があります。そこで障害をもつ人たちへの周りの厳しい対応を目の当たりにしました。
黙々と焼き菓子の鉄板を洗い続けるAさん。
ずっと同じ姿勢で身体は痛むだろうし、
ゴム手袋をしてはいるものの、流水で手が荒れています。1日8時間。来る日も来る日も鉄板を洗い続けるのです。勤続年数は8年と長く、忍耐力があり、受け答えもしっかりしている。
けれども夕方になりパフォーマンスが落ちてくると
持ち場のリーダーに怒鳴られる場面が多くなります。
「すいません。すいません。」
と何度も頭を下げるAさんの姿が教え子たちに重なり、
胸が締め付けられる想いがしました。
パートの主婦や大学生、高校生には試用期間もなく焼き菓子を扱う特権が与えられるのに、Aさんには与えられません。
「パティシエになりたい。」
「アニメーターになりたい。」
小学校で夢と希望をたくさん語ってくれた支援級の子どもたちは、現在をどう生きているのだろう。
こんな現実に直面した時のレジリエンスはあるのだろうか。
私が工場で直面した場面はほんの1場面に過ぎません。
実際はAさんと工場の社員の方々の人間関係が構築されている上での出来事だったかもしれません。
だとしても、人間同士の関わりで憶えた〝違和感〟は発信し続けたいと思っています。
違和感から生まれるものは気づきへ、そして共感に発展していくと考えているからです。
障害の有無にかかわらず、私たちは生まれながらにして生き方を自由にデザインできる特権を預かっています。
「では、どのようにデザインすれば?」
その方法をみんなで探っていくことが「共生」
なのではないかと考える今日この頃です。
昨日は教え子のケンちゃんのポートフォリオを堪能しました。小学3年生当時、いつもお気に入りの自由帳を抱えて図工室を訪ねてくれたケンちゃんは、アールブリュットの新しい星となりました。
今日まで描き続けてきた色や形から成長の足跡が見え、胸が熱くなりました。若き作家をこれからも全力で応援していきたいと思います。
昨日は早速ケンちゃんにJAZZをテーマにした作品を依頼しました。絵を部屋に飾る日がとても楽しみです。
大人の図工塾管理人 米光智恵
〈居場所の概要〉
にしのみや次世代育成支援協会 NO BARS
(特定非営利活動法人)
〜みんなちがってみんないい。かきねなんてないんだよ〜
●NO BARSとは
「障害のある子どもたちが色々なことに挑戦できる場をつくりたい。」
そんな思いから、2009年に特別支援学級に在籍する子どもたちを中心に野外活動をはじめました。
2012年、体験活動の場づくりと子どもたちの将来を考えた場づくりをするため
「特定非営利活動法人にしのみや次世代育成支援協会 NO BARS」を発足。
しかし、活動を続けていく中で、障害のある子どもたちだけの活動では、社会の目に見えない垣根を越えられないことに気づきます。障害の有無にかかわらず、いろいろな人が混ざり合い、ともに活動する中でお互いを知ることが垣根をなくすことにつながると考えました。
現在は子どもから大人まで、誰もが参加できる活動の場づくりをしています。
体験活動を通して、ちがいを認め合い、それぞれが自分らしく生きることができるよう支援します。
また、教育•福祉に関する人材の育成と、広がりのある社会を創出することを目的としています。
先日の交流の様子
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?