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『光のかたち〜光を遊ぼう〜     学校地域連携の展望』

はじめに

 月に一度講師をさせていただいているアトリエ、happiness kids artにて光の造形遊びイベントを企画させていただきました。3歳から10歳の子ども達、計8名が集ってくれました。親御さんも一緒に作りました。この企画を立ち上げるにあたり、忙しい時間を割いて御助言と指導いただいた図工の師に、また尊い機会を与えてくださったアトリエ代表の森本さゆり先生、そして集ってくださった親御様と子ども達に心から感謝の意を込めてご報告とさせていただきます。

学びを学校から地域へ

「未就学児童さんから小学四年生と異年齢の子ども達がアトリエという空間でどんな風に感性を響かせあうのか。」

企画段階から終了まで期待と不安と喜びが入り混じっていました。今回、学校現場における造形遊びの実践を地域のアトリエの子ども達に届けるにあたり、親御さんへ以下の説明が必要となりました。 まず一つ目は『図画工作が大切にしている学び』についてです。それは、作品を作り上げることよりも(今回はランプシェード)その制作過程に見える子どもの姿(探究心や意欲や気づき)に重点を置いているということです。図工の教師は色や形を用いて子ども達の〝感じる心(他者を思いやる心や素直な心)〟〝思考(探究心や葛藤、自分との対話)〟を育み、引き出していくプロであり、図工教師が励まれている日々の研究や想いを知っていただく機会ともなりました。

 二つ目は『造形遊び』と『空間を遊ぶ』中で得られる学びについてです。

〝自分自身が空間の一部である〟という感覚は〝私は私である〟というアイデンティティ感覚の獲得を促し、自分や他者を思いやる心を育みます。自分の作った和紙のランプが暗闇をどう照らしていくのか、光と影がどのように調和し、空間を創り出していくのか。

この試行錯誤の中で生まれる子ども達の〝気づき〟や〝経験〟こそ今回のアートワークの醍醐味であり、学びであるということです。

教育とアートプロジェクト

 現在はコロナや災害における不況が続いているとはいえ、24時間開いているコンビニエンスストアや、100円で物が買えるショップが全国に展開し、必要な時に必要なものが入手できる時代に私たちは生きています。このような物質的に豊かな社会は人と人のつながりや関係性を見えにくくしています。そのような状況においてアートは(ここではアートを〝豊かさの創造〟と定義します。)自分と他者、社会との繋がりを確認し、積極的な関わりを築いていくきっかけとなります。アートの果たす役割は日常にない視点を私達に与え、一旦立ち止まらせ、自らの身体性や、自らの精神についての自己内面性と、自己と他者、自己と社会、文化との関わりなどを自己を取り巻く外界との関係性を改めて点検させる役割を果たします。その再点検が自分自身の「生」を創造していくきっかけになっていきます。アートプロジェクトは、アートによって、日常に慣らされた自分から自律した自己を取り戻す仕掛けと捉えることも出来るのです。

『見る』のお話

 社会と関わる力とは社会を色々な角度から見つめる力とも言えます。子ども達が見つめる先にあるもの。それは必ずしも美しくワクワクするものだけではありません。成長する過程で子ども達の視野はどんどん広がります。

ビジュアル(見る・観る・鑑る)を通して世の中の違和感に気づき、時には「どうしてなの?」と嘆き葛藤することもあるでしょう。アートを通した他者との関わりや経験の中で自分のうちに築いてきた自信は、日々の自分を守り抜く力となるのです。幼少から両親や先生、身の回りの大人によって支援され、様々なことにチャレンジする安全基地を与えられた子ども達はたとえ逆境に直面してもそれを跳ね返していくレジリエンス(弾力・バネ)があります。

ビジュアル(見る・観る・鑑る)を通して育まれる資質や能力は、逆境を冷静に見つめる資質や能力にも繋がっています。

終わりに

「図工メソッドは学校の中だけのものではなく、地域に根ざしていくべきものである。」

学校現場を退職してから始めた地域アートプロジェクト。その情熱の灯火を絶やすことなく油を注ぎ続けてこれたのは、大切な人たちとの出会い、支援の手があったからに他なりません。ところでこの情熱の正体とは一体何でしょうか。

私はそれは至って単純なものだと思っています。

「目には見えない何か大きな力が私の背中を押すのだ。だから私は、走るのだ。」

これは私の大好きな短編小説『走れメロス』のクライマックスの言葉です。

上手くいえませんが、人の行動とは知識や技術が確かに伴うものの、それらを遥かに超える「情熱」が先に立っているように思うのです。

「何かを成し遂げたい。伝えたい。」というビジョンの根底にあるものはメロスの言葉の中に生きている。そんな風に感じる今日この頃です。

       大人の図工塾管理人 米光智恵

**※岡本のアトリエhappiness kids artの

Webサイトはこちらから↓**

https://www.happinessbird.com/

【参考文献:美術教育の動向

大坪圭輔+三澤一美 編 武蔵野美術大学出版局】

★光を遊ぼうギャラリー★

一歳になる下のお子さん連れのママも一緒にご参加いただきました☺️
お兄ちゃんお姉ちゃんとカキカキ☺️
「お家に持って帰ってからも部屋を暗くして遊んだよ!」と帰宅後のお子さんの姿もご報告いただきました。
一瞬一瞬が愛らしく尊い時間でした。
ご参加くださったママと子ども達へ
本当にありがとうございました☺️

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