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京都本の紹介・その2『世界のKYOTOへいざなう 紫式部の暗号』

元日本気象予報士会会長でお天気キャスターの石井和子さんによる「気象」をキーワードに『源氏物語』を読み解くユニークな本。

『紫式部の暗号』石井和子著・三五館
『源氏物語』の裏ポイントは「気象」

長年、文学と気象の関係性を探究してきた気象予報士の石井和子さんによれば、紫式部が『源氏物語』の中で気象の描写に込めた意図や思いが、はるか千年の時を超えて現代に届いた紫式部のメッセージ、暗号にも思えるのだといいます。

人間関係だけでなくお天気の描写も鋭い紫式部の観察眼


例えば、源氏が朧月夜との密会が朧月夜の父に発覚してしまうシーンでは、梅雨末期の大雨を描くことで効果的な演出を行っています。

また、夏は蒸し暑くて冬は底冷えという、京都の地形特有の気象現象を巧みに物語に取り込み、暑がりの光源氏や大宮人たちの雪見の様子などを描写しているのです。

気象予報士らしく天気図やグラフを取り入れて、紫式部が生きた時代の史料とも照らし合わせながら紫式部が生きた京都へといざなってくれます。

京都が好きになって何度も東京から通っていた頃、東福寺あたりで雨に降られてタクシーに乗った時に、運転手さんから「時雨やな」という言葉を聞いたときの新鮮さがずっと忘れられずにいました。
その時雨についてもこの本の中で解説されていて、京都へ越してきてからよく時雨に遭遇する私には、目からウロコでした。サーと降っては止み、また日が射して青空がのぞくという京都の時雨は、有名だったのですね。
そんな天気を根っからの京都人に「いけずな天気」と言ったら機嫌を損なわせましたが(笑)。


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