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モンゴルの子どもシェルター訪問

今夏のモンゴル滞在中に、子どもシェルターを訪問する機会がありました。どの国にも大変な境遇にある子どもがいて、それを支援するシェルターのような施設があります。私が訪問した施設の様子をまとめます。


施設の外観

生徒たちと一緒に

このシェルターには、校外学習として日本語を勉強している生徒たちと一緒に訪問しました。施設の方の話を聞いたとき、施設の方はもちろんモンゴル語で話すので、生徒に通訳をしてもらいました。私の通訳を担当してくれた生徒は日本語が上手だけど「語彙が足りない!」と言っていたので、緻密な訳ではありませんでしたが、大筋はよく理解できました。そういった関係もあり、もしかしたら間違えているところがあるかもしれません。

施設概要

この施設は、暴力などを受けている子どもを救うために、2017年から活動している団体が設立しました。私が行った施設は2か所目に設立したもので、「ゲル地区」と呼ばれるいわゆるスラム街にあります。生徒たちも、「一人では来ようと思わない」という、安全とは言えない地域です。スラム街というとバラック小屋が並ぶイメージですが、モンゴルでは冬寒すぎて生きていけないので、ゲルを定住住居として使っています。だから、「ゲル地区」というと低所得者・貧困層の地域、というわけです。
どの国でもあることだと思いますが、やはりこういう地区は問題を抱える子どもが多く、あえてこういう地区に作ったそうです。都市にあるチャンスを、ゲル地区の子どもたちにも作りたい、そう施設の方は話していました。

この施設には、本が並んだカフェ(図書館とカフェが一緒になったくつろげる場所)、保育所、勉強やクラブ活動ができる場所などがあります。施設の周りには柵がありますが、地域の人が自由に入っていいそうです。カフェもあるしね。この日も、子どもたちが外の庭で遊んでいました。また、心理カウンセラーが相談を受けているそうです。特に、精神的に不安定な子どもが多く、どのように解決するのかが課題で、関係性を構築するのが苦手な子どもも多いとのこと。

庭も遊具があり、一緒に行った高校生が本気で遊んでいました

部活動では、柔術に力を入れているそうです。モンゴル代表として国際大会に出場する腕前の子どももいると聞きました。運動ってリフレッシュになるし、それで国際大会に出られたら、大きな希望になりますよね。経験にもなるし。
施設の運営は寄附と、ボランティアのサポートによって支えられています。政府の支援もなかなか得られず(政府の支援がバラバラらしく、結構大変らしい)、運営は楽ではないそう。また、ボランティアについては施設の方の説明で、「勉強を教えに来てもらえるのもうれしいけど、そもそもマンパワーが足りないので、掃除や施設の整備などを手伝ってくれるのも助かる」とのことでした。

今後の展望がグローカル

今後の展望として、モンゴルのすべての県にこのような施設を作りたい、また、世界にも広げたいと話していました。壮大!
困っている子どもは首都ウランバートルだけじゃないから、色々な地域に作りたいというローカルな目標と、経験を活かして他の国でも展開したいというグローバルな視点があり、驚きました。もう、モンゴルは「助けてもらう」方の国じゃないんだなって。その視点、とても大事だと思います。

施設の方への質疑で、「若者に参加してほしい」という話がありました。体験を教えるという「寄附」を呼びかけていました。

カフェで一息

カフェのメニュー表

着いてすぐ、カフェで一息しました。このカフェ、ただのカフェではなく、寄附型のカフェなんです。メニューには2つの値段があり、右側の高い方は寄付ができる値段です。そして、子どもたちが飲むミルクを買ってあげることも可能。私も少しお金を出しましたが、子どもたちはここに来たら私が払った分無料でミルクが飲めるそうです。ミルク、成長に大事だしね。
私が頼んだのはハニーミルク。ちゃんとミルクフォーマーで温めてくれて、蜂蜜をたくさん入れてくれました。ちょっとクセのある蜂蜜で、これまたおいしかったです。

ハニーミルク

カフェはただのカフェではなく、色々な本がありました。モンゴルって、元々物語を口伝えで伝えていた国民だからなのか(?←自説)、本を読む習慣があまりありません(最近はモンゴル語訳の本も増えて読みやすくなっていますが)。やっぱり、本を読むって母語能力の向上にとって大事で、語彙を増やすことで自分の考えや言いたいことを広げることができるので、色々な本に触れられる機会は大事だと思います。マララさんの本とかあったよ!
もちろん、ソファでゴロゴロするのもOK。ここなら、安心してゴロゴロできますね。

ゴロゴロし放題のソファ。ぬいぐるみもいい感じ。

廊下にも色々な教育が

廊下にも学べるものがたくさんありました。ゴミ分別もしっかり学べるようになっています。こういうのって小さい頃から習慣づけるのが大事だよね。

ゴミ分別が楽しくできるようになっています

また、室内にも遊べるものが。糸電話みたいなパイプ電話は、高校生が「めっちゃ楽しい」と言って遊んでいたので、子どもでも楽しいと思います。

あと、亀もいました。動物を育てる体験って大事だよね。ま、家畜はたくさんいる国なんですが。

かめさんだーと私が大はしゃぎ

できることをどうやって実行するか

生徒たちと一緒に訪問したわけですが、ディスカッションで、「この施設をどうやって手伝うか」という議題で話していました。「勉強を教えにくる」「部活動を作って活動する」とか、色々な意見が生徒たちから上がりました。うーん、やっぱり頭がいい生徒たちだからなのか、きれい事が多いなぁと思って、私が割って入りました。
「でもさ、去年も来たんでしょ?その1年間の間に何か活動があった?」と聞くと、ないとのこと。それさ、机上の空論じゃ意味ないじゃん?と突っ込みました。理想があるのはいいけど、口だけじゃねぇ。将来、モンゴルや世界をなんらかの形で変えていこうとする知識と能力のある生徒たちだからこそ、手を動かせる人になってほしい、私はそう思っています。
それが理解できると頭の回転が速い。あれやこれや、「もう少し実現可能そう」な意見が出てきました。「私と一緒に勉強を教えにくる人を募集します」なんて生徒も。そうそう、そうやって自分ができることを考えるって大事だよね。
昼休みには、「こういうアイディアがあるんだけど、どうやったら実現するかわからない」という生徒が話してきたり(実現方法にまで思いを馳せられるようになりました、進歩)、自分達ができることではなく子どもたちがやりたい・必要とすることをするべきであるなんていう鋭い論考を述べる生徒もおり、私はワクワクしました。考えを広げたり深めたり、周囲の考えに流されず持論を述べられるって大事だし、そういう人がチームにいたら強いと思う。そういう意見を拾って「いいじゃん!」っていってあげられる先生になりたいなと思いました。

それで、私は記事を書いた

で、いうのは簡単だけど、実行は難しい。言ったからには私も何か実行しなければと思い、この記事を書きました。日本語が読めるみなさんに、少しでもモンゴルの現状を伝えられたらよいのではないか、と。
私は別にやらなくてもいいのかもしれないけど、教師として、生徒に「やって」と言ったことを自分がやらないのは嘘をついているみたいな感じがするんですよね。生徒の成長のためにはできる限りのことはやりたいしやってみたい。みんな、私は記事を書いたから、みんなも何かするんだよ!(笑)

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