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日本語教育を始めて10年でわかった、日本語教育のおもしろいところと大変なところ

私が日本語教育という専門、日本語教師という仕事を知ったのが高校生の時でした。それからずっと日本語教育を学び、教師として働くようになりました。大学生のとき、初めてインターン生として教壇に立ったのが2010年だから、もう10年以上になります。
10年以上関わり続けてわかってきた、おもしろいところと大変なところをまとめてみます。

おもしろいところ

色々な国のことを知ることができる

日本語教育は、色々な外国にルーツのある人、海外にいる人に日本語を教える仕事です。だから、色々な国のことについて知ることができます。いろいろな国の同じところや違いを知るのが大好きな私。これが、一番面白いところかもしれません。

いつも新しい発見がある

上と似ていますが、いつも新しい発見があります。日本語についても、学習者からの質問でハッとされられることも。学習者の成長という点でも、「この前勉強したことが使えている!」という発見もあります。

学習者とコミュニケーションが取れるようになっていく

ネイティブの語学教師って特殊な仕事だと思っていて、「クライアント・カスタマー(要は学習者)とコミュニケーションが取れない」仕事なんです。営業だと、相手と話をして、そのニーズに合った提案をしますが、ネイティブ教師とゼロ初級の学習者は全くそれができません。よくよく考えるとすごい仕事(もちろん、ノンネイティブ教師がいるなど、困らないことも多いです)。
私がモンゴルで初級クラスを教えることになった時。一番はじめのクラスはひらがなの授業でした。私はモンゴル語があまりできません。学習者も目の前の日本人に緊張気味…(多分学習者は「日本語わからないのに日本人の先生…」って思ったでしょう)。こんなことが起こるわけですね。
最初はお互い言っていることがわからず手探りで始めた授業で、だんだん日本語を身につけていき、学習者が自分の言いたいことを話すようになります。言いたいことがわかったときは本当に感動します。
日本語教師歴が長くなると、学習者の日本語が完璧でなくても大体言いたいことがわかるという経験値がつくので、内容半分ぐらいで理解しているところもありますが…

学習者が新しいステージに向かっていく

日本語教育を通して、学習者が就職したり、進学したり、留学したり…こんな場面によく遭遇します。「先生のおかげです」なんて言ってくれたりするけど、学習者の努力の成果です。そうやって旅立っていく学習者を見ると、「いいなぁ(涙)」と思います。私には考えられないような新しい道を開拓していくこともあり、学習者のバックグラウンドが幅広い分、驚きも大きいです。

私の方が勉強になる

学習者と関わる中で、私は日本語を教えているつもりなんですが、彼らから学ぶことの方が多いような気がしています。これは、第二言語(外国語)だから使える語彙が限られてストレートに伝わるのか、私の周りにそういう人が多いのか、それとも言語表現のために自己開示が多いからなのか…ほら、外国語の勉強の時って、自分のことをよく話しますよね。初級だと特に自分のことがネタになることが多いから。だから、私も会話例として自分のことを話すことがあるし、学習者も話すことになるから、その人の人となりを知ることができるわけですね(そればっかりに頼っていてはいけないんだけど)。
そうやってコミュニケーションを取っていく中で、気づくことが多いなと思っています。

大変なところ

同じことは二度とできない

授業は学習者あってのもの。同じ教案を使って同じ授業をしようとしても、学習者の反応が違うので二度と同じ授業はできません。同じ教案でも、クラスや学習者によってちょっと変えてみたり、工夫が必要になることも。
もちろん、慣れてきたら準備は楽になってきますが、それでも毎回「次はあのクラスで、Aさんがいるから導入の時にこの質問をAさんにして…」なんて考えているとキリがありません。楽しいんですけどね。

イレギュラーの連続

毎日が異文化接触なので、自分の価値観と経験では想像がつかないようなことばかり起こります。

特に、学習者からの質問は驚くことばかり。文法から、語彙の使い分け、いつこれは使えるのか、自分の国の言葉ではこう言えるけど日本語では?など、学習者の視点は様々。想定した質問がくることもありますが、時には授業に関係ないけど気になっていることを聞かれて困ることも。「日本に幽霊はいるんですか?」とかね。


自分の日本語を疑う

日本語教師は日本語を毎日使っていますが、その範囲は限定的なもの。たまに「先生、この文あってますか?」と聞かれると、とても困ります。あれ、こっちが正しい?と、自分の母語なはずなのに、自分の日本語を疑ってしまいます。
自分で日本語を話していても、「この文法、学習者に伝わるかな?」「あ、今助詞間違えちゃった」など、常に考えています(専門用語で自己モニタリングと言います)。日本人の友達と話していてもこうなります。疲れる(笑)
日本語教師は日本語が上手だと思っていましたが、そうではない、と教え始めてから思います。

教えない仕事も多い

日本語の先生って、日本語を教えるのが仕事だと思っていたら、テストもあるし成績管理もあるし、先生に付随する仕事って思ったより多いんですよね。
また、学校のイベントの企画運営をすることもあるし、海外だとスピーチコンテストの審査員などを頼まれることも。授業以外の仕事もたくさんあって、いろいろな知識や能力が必要ですが、いろいろなことができるので楽しいです。

日本語教育は分野が広すぎる

日本語教育って、教える年齢や対象も様々だし、教える場所も様々。そして、カリキュラムも作るし評価もするし、異文化理解も必要だし、と、一人で様々な分野の知識を持っていなければなりません。一生かかっても全部わかるのは無理なんじゃないかな?私も「あ、それは第二言語習得関係の理論だったかな?聞いたことある」ぐらいの言葉もいっぱいあります(汗)
すぐ説明できなくても、「大体この辺を調べたら出てくる」ことがわかっていればOK、と自分の中では割り切ってしまっています。ダメなんですが、範囲が広すぎるよ〜〜〜

いろいろあるけど、私は楽しいです。

どんな仕事にも楽しいことと大変なことがあって、おもしろさはいろいろだと思います。だから、どの仕事が一番、というのはないと思います。
私は新しいことを知るのが好きだし、外国にも興味があるし、人間が好きみたいなので、楽しく仕事しています。授業など、決められたことから自分で工夫できるところもおもしろいです。もちろん、国や地域についての違いに気づかず学習者から大ブーイングを浴びたり、日本語がうまく通じなくて授業が崩壊したりとか色々「失敗した!難しい!」と思うこともありますが、この仕事は続けていこうかなと思っています。

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