見出し画像

欲にまみれていいじゃない

大根1本150円。「うん、今の時期はこんなものかな。」やたらと行儀良く立つ大根が20本程度。品定めなどせずに手前から取る。「選んだところで、ねぇ?」


その大根はお供え用と表記されたかごの中に並んでいた。浅草にある「待乳山聖天」2020年の冬至が明け、私は一足早く新年を迎えたかのような気持ちだった。願い事でもしよう。

澄み渡った空を見上げ階段を上る。もちろん大根を抱えて。シュールだ。大根の※意味するところは解るよ。(※祈願して得られるご利益を端的に表したもの。HPより引用)でもやっぱりシュールだ。しかも頭の中は「おでん」だし。おでんは大根が美味しい。出汁の染みた大根はおでんの具の中で玉子と一二を争う。私はね。

お供え物にですら湧いてくる食いしん坊な欲求。でも聖天ってガネーシャのこと。ガネーシャと聞くと水野敬也さん著「夢をかなえるゾウ」に登場するガネーシャをイメージしてしまう。欲望だらけで、関西弁の、つまらないギャグも満載のガネーシャ。でも核心を突きながら人生を導くガネーシャ。あのガネーシャ。ならば、私の想像するおでんなんて大したことない。可愛い欲求よ。大根が食べたいなんて。ここに来ても、私小さいな。

大根のお供えをした。小さな欲求を抱えた私が願いを伝えた。人生を大きく転換するような願い事。ふと思う。「あれ?今のは単なる願いじゃない。私、腹を決めたんだ。どうやってこの先を歩むのか決めたんだ。願ったんじゃない。誓ったんだ。」清々しさがあった。私の新しい道が見えた。

待乳山聖天から浅草寺方面に向かって歩く。

お腹空いたなぁ。とっても。欲の再登場。出汁の染みた大根が脳内変換されて「タレの染みた天丼」になった。意味不明ではない。染みた繋がりだから。日本語としてはおかしい。でも今はそんな小さなことが愛おしい。染みた繋がりを無視せずに声を聴く自分。こうして欲まみれの自分の小さな声や変なつぶやきも聴いていこう。新しい道は自分を大切にすることでもあるから。

蓋をして運ばれてきた丼から海老がちょっと顔を出す。海老とキスとかき揚げの3種が乗った天丼。老舗大黒屋天麩羅の天丼。

一番好きなのは海老。最後の一口は海老で終わるようする。好きなものを最後まで残す派。好きの余韻で終わりたい派。キスのふわふわ食感を楽しんで、次はむっちりしたかき揚げ。かき揚げに入るプリっとした海老もまた良い。結局、海老。海老。海老。うん、幸せ。そして何といっても染みてる!天ぷらにも、ご飯にも。タレが染みてる!べちゃっとしない絶妙な染み加減。ご飯だけ口に入れても天丼として成立する塩梅。これが美味しい。

食べたいときに食べたいものを食べるのが一番。食べる楽しみって欲まみれ。その時人はとても正直だ。正直な心の積み重ねが生き方に表れたら儲けもの。そしたらまたちょっと先の歩む道が見えてくるんだと思う。

欲にまみれていいじゃない。ビールも頼もうかな。小さいビール。

#おいしいはたのしい #欲まみれ #待乳山聖天 #大黒屋 #味の素 #ガネーシャ #夢をかなえるゾウ #佐藤智恵子 #ちえこ #chieko #フードアナリスト #タレント  


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?