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学歴社会って

日本は学歴社会といいますが、ドイツもそうです。ただし、見られるのはどんな良い大学を出たかというよりは、どの学位を持っているか。

詳しく言うと、大卒なのか、院卒なのか、博士号を持っているのか。

就職や転職の際に最終学歴をじっくりと見られます。そして、先方が必須とする学位がないと検討もしてもらえないようです。このしばりは日本より厳しいのではないか、というのが私の体感です。

大学院で出会った多くのクラスメイトも、院を卒業する約束で今のポジションについていたり、修士を取らないと昇進ができなかったり、という理由で進学していました。

例えば、私が尊敬するクラスメイトのBさん。彼女は医療福祉系のスペシャリストとしてすでに30年近いキャリアがあり、職業学校の講師としてもリーダー的な立場にありました。しかし、正式により上のポジションに着くには修士が必要だと言われたとのこと。

Bさんは私たちのクラスのまとめ役です。とても真面目で予習や課題をきっちりこなし、授業中は「ここぞ」という所で鋭い発言をして一目置かれる存在。

それでいて面倒見もよくて、複雑な宿題が出てクラスメイトが「???」となっている時などによく、グループチャットに役立つ情報を出してくれます。私もよく助けてもらって、本当にお世話になりました。

職場でもさぞかし重宝されているんだろうなあ、私だったら一発で昇進してもらうんだけどなあ、と思うのですが、そうはいかず。学歴の壁が立ちはだかります。なので、フルタイムで働きながら、私と同じ社会人大学院に進んでいました。
ほんとすごい。

似たような状況下のクラスメイトが多い上、全国から集まっていたのはなぜか。それは、ドイツの学校システムにあります。

今でもドイツの学校では、小学4年生で進学コースを決めて、5年生から別の学校に進みます。大学進学コースのギムナジウム、大学には行かずに就職する前提のレアルシューレ、職業教育に重きを置くハウプトシューレ。

現在では大学進学資格のアビトゥーアが取れるギムナジウムが大人気で、全生徒の半分くらいが進みます。ただしギムナジウムに人気が偏るのはこの20年程の傾向らしく、今の4-50代はレアルシューレ卒で大学進学資格を持たない幼稚園教員や職業学校講師も多いようです。

彼らが修士になるには、まず大学入学資格を取って、学部を出て、さらに大学院をでなければいけません。
いったい何年かかるんだ。

私の母校では、大学入学資格がなくても充分な職業経験と知識を証明できる人に、院への進学を許可していました。最近日本でもある社会人入試に近いかもしれませんね、そしてノルウェーのシュタイナー系の大学との提携があって、ノルウェーの修士号を取れる仕組みになっていました。

EUを始めとするヨーロッパ圏内の協定によって、ドイツでもノルウェーの学位は同等のものとして認められます。

この裏技的システムを採用している大学院はあまりないらしく、全国から生徒が集まっていたというわけ。

クラスメイトの中にはシュタイナー教育の流れを汲むアラヌスのカリキュラムに惹かれて進学する人ももちろん、多くいました。

しかし、多くの社会人大学生が「学歴しばり」の壁をやぶるためにこの学校を選んでいたのは、驚きでした。

強固なシステムが機能していてうまくいっている反面、人の可能性を狭めたり、機会を奪ったりする弊害もあるんだなあと実感させられるドイツの一面です。

それでもあきらめず道筋をつけようとした、母校の先生方へのリスペクトが高まるばかりです。「じゃあどうすればいいか」を考えて実行するの、めっちゃ大切!

(写真は週末ドライブで行ったLaacher Seeというカルデラ湖の氷です。定期的に海が見たくなるのですが、一番近くて車で3時間とかかかるので、川や湖で代用しております)


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