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シュタイナー系大学院のカリキュラム

修士課程での私の専攻は、先にも書いた通り「教育・社会・セラピー的職業分野における実践研究」。個々が自分の専門分野での知見に基づいて卒業論文をまとめるのが、このコースのゴールでした。

では、そこまで至るまでのカリキュラムは、どうだったのでしょうか?

卒業証書についてきた記述書(EUで統一の書式がある)によると、
「8日間の集中講義9回、4日間の集中講義3回、週末講義16回に加え、週に約15時間の自主勉強を必須とする自律的学習のコースである」
と書いてあります。

しかし、あくまでこれは目安。実際は
「パートタイムのコースなのにフルタイムの学生くらいの時間をかけて勉強した」
というのが体感覚です。ドイツ語が入学基準ギリギリ、学部卒業してから20年以上でしたからね。よく頑張った。おかげで元来短距離走者タイプで「コツコツあるのが苦手」だったのを、かなり克服できた感じがします。

では肝心の中身はというと。
実践研究と教育学からなる必修授業と、広きに渡るStudium Generaleという一般教養科目がありました。(呼び名がラテン語なのがドイツらしい!)

必修科目では、研究に必要な「アカデミックライティングのおさらい」から始まり、質的研究、量的研究の基礎といった授業を3年かけて網羅していきます。具体的には学術的な現場観察やインタビュー分析の仕方、統計学などなど。社会学的な要素が多かったです。

私は完全文系で、学部での専攻はコミュニケーション学。なのでインタビューなどのソフトな科目の方が簡単かと思えど、ここで立ちはかったのが言葉の壁。案外、数字と計算式で出せる統計学の方が容易に感じられた外国マジック。日本で数学の基礎ができていたおかげでしょうか。(小学校までしか真面目にやってないけど)

特に面白いと思ったのは、その他の必修科目でした。

教育学部なので一般的な教授法理論はもちろん、アラヌスならではの「シュタイナー教育の基礎」や「ゲーテの世界」といったクラスも。教職課程以外の私たちのコースでは、ガッツリというよりは入門編でしたが、スピリチュアル的にとらえられがちなシュタイナーに学術的に取り組むという方針の大学だったので、初心者にも理解しやすい内容でした。

ちなみにすでにシュタイナー学校や幼稚園で働いている「プロ」のためには、別に上級者向けコースが設定されていました。より現場での実践的な内容について勉強していたようです。

他にも社会学から哲学、子供に対するメディア教育や改革的教育の歴史まで、教養科目の広さといったら!初めての集中講義で哲学を取った時は、いくら予習しても理解が難しくて泣きそうでしたが。

そしてもともとが芸術大学のアラヌス。
絵画や造形、演劇、さらにオイリュトミーも必修科目にありました。

これが楽しかった!

普段、自分から進んで絵を描いたりしないので、ひたすら心のおもむくままに手を動かすのはとても良い刺激になりました。集中講義で頭がパンクしそうな時にはどれだけ救われたことか。先生も素人向けに教え慣れているので、とっつきやすいお題を出してくれました。

芸術クラスもちろんちゃんとした教科なので、3年間のどこかで試験として作品とレポートを提出しなければいけません。私は演劇の授業で使った詩を発表会で朗読し、振り返りのレポートを書いて単位を取りました。

心に残っている学部長の先生の言葉は、
「一般教養で芸術科目があるのは、別にみんなに芸術家になってほしいわけではない。芸術科目を通して学んだことが、なんらかの形でそれぞれの職業生活で活かされればよいと思っている」
というものです。

感性を大切に、とはいいつつどうしても頭中心になってしまう日々。
大学院での学びと先生の言葉は、今でも手と心にも意識を払うためのリマインダーになっています。

(写真はボンの大聖堂です。ようやく春がそこまでやってきました!)

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