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【選挙ウォッチャー】 山田町議選2023・分析レポート。

 8月29日告示、9月3日投票で、岩手県の山田町議選が行われ、定数14に対し、17人が立候補しました。20代、30代の候補者はおらず、最年少が47歳。当選した人の内訳は、40代1人、50代1人で、あとは60歳以上となっていました。女性は2人しかおらず、ほとんどがオジサンになっています。
 これが今の日本の地方行政の現実だと言えますが、若い人たちで政治に興味を持つ人は、かなりのレアケースであり、ましてや地方議員になろうと考える人はほとんどいません。

 ここには、政党に所属している人が共産党の木村洋子さんしかおらず、その他は全員が無所属で、公明党も存在していません。山田町の有権者は1万2588人なので、今後はさらに議員定数が削減されていく可能性もあるのではないかと思います。
 時間がなかったため、復興の様子を見ることができませんでしたが、大槌町と同じく震災の傷跡が生々しく残る場所だったと記憶しています。実際に訪れたこともありました。滞在できる時間が短く、ほぼ選挙ポスターを取るだけになってしまったことが残念です。


■ 福島第一原発に潜んでいるリスク

 僕たちは今、ネトウヨを中心とした同調圧力により、福島県産の魚をどんどん食べようというキャンペーンに飲み込まれています。
 現在、福島県沖の魚たちは、12年前の福島第一原発事故による汚染こそ続いているものの、原発事故直後のような汚染ではなくなってきていることもあり、多くの人がさほど心配をせず、食べるようになっています。
 しかし、こうしている今もデブリをかすめて海に流れ込んでいる汚染水は止められておらず、さらに、「トリチウム処理水」と名付けた水も、多くを取り除いているとはいえ、完全に取り除けているわけではありません。例えば、ヨウ素129は、タンクによっては2Bq/lという数値になっていますので、これを海に流し続けた場合、短期的には「問題ない」と言えるかもしれませんが、長期的には「影響が出る可能性がある」と言わざるを得ないものになっています。
 そもそも、「トリチウム処理水」と名付けた水も、流さないで良いのであれば、流さない方が良いに決まっています。しかし、どうして流さなければならないかと言えば、「敷地がタンクでいっぱいになってしまうから」なわけですが、どうして敷地がタンクでいっぱいになってしまうと困るのかと言えば、ここを原状復帰して、もう一度、普通の土地として活用したいからに他なりません。しかし、本当に現状復帰をして、普通の土地として使うことはできるのでしょうか。一体、何に使うというのでしょうか。
 実は、「現状復帰して普通の土地として使う」とは言うものの、どのように使うのかは決まっていないし、そこに公園を作ろうと、ショッピングセンターを作ろうと、双葉町や大熊町といったところまで大勢の人々が買いに行ったり、遊びに行ったりするイメージは湧きません。つまり、あまり具体的なイメージができているわけでもなく、ただ現状復帰をしようとしているだけに過ぎないのです。「何のために?」という部分が欠けています。
 そして、こうしている間にも、福島第一原発は再び大きな地震が起こった場合、福島第一原発事故よりも悲惨な災害をもたらす可能性があります。それは、地震によって建屋の燃料プールが破壊されるというシナリオです。
 12年前の東日本大震災の時、あるいは、福島第一原発が水素爆発を起こした時に、奇跡的に燃料プールは無事でした。そして、この燃料プールには今でもたくさんの燃料棒が取り出せずに残っています。我々はいつしかメルトダウンしてしまったデブリを取り出すことばかりを口にしていますが、その前に、しっかり燃料棒という形で残っているものすら、高い放射線量に阻まれ、12年経っても取り出せずにいるのです。
 想像したくもない悲劇ですが、もし燃料棒を取り出せないまま、福島第一原発の建屋が崩壊した場合、炉心が露わになった場合には、また全国に放射性物質が拡散されてしまう可能性があります。福島第一原発事故の時と違うのは、燃料プールで炉心は冷やされているため、もし建屋が崩壊したとしても、大量の放射性物質を出すまでには時間があるため、何らかの手を打つ余地がまったくないとは言いませんが、どのように崩壊するのかが分からないため、「大丈夫だ」とは言えません。こうなった時には、これまでの努力はすべて水の泡となり、陸も海も再び福島第一原発事故の時のように汚染されてしまう可能性があります。そして、東日本の広い地域で農作物が取れなくなり、我々は食糧の多くを輸入に頼らざるを得なくなります。
 今も世界中で災害が起こっていますが、さまざまな食糧が危機的な状況に晒された時に、自国民のメシを優先するのは当然なので、もう日本に食糧が回ってくることはなくなり、多くの日本人が餓死をする可能性すら出てきてしまいます。
 今、こうして書いているのは「最悪シナリオ」であって、脅すために書いているわけではありません。そもそも地震なんて起こらず、このまま燃料プールが崩壊せず、すべての燃料棒を取りだし終える可能性も全然あるし、大地震が起こって燃料プールが崩壊したとしても、どのような形で崩壊するのかによっては、ラッキーな形で崩壊し、ギリギリのところで対応できる可能性だってあります。しかし、我々が考えなければならないのは、いつだって最悪のことが起こった時に、どう対処するのかです。これが「災害対策」の基本であり、「津波が来た時にどう避難するのか」ということは、日頃からシミュレーションをしておくのは当たり前です。津波なんて滅多に来るものではないし、思ったより小さな津波で何の影響もないということだってあります。だけど、大きな津波が来た時のことを考えて、あらかじめ備えておくべきです。
 我々ができていないのは、福島第一原発にどのようなリスクがあって、最悪の場合にはどのようなことが起こるのかという情報が、まったく共有されていないことです。共有されないとどうなるかと言うと、政府や東京電力から「安全だ」と言われたら、よくわからないので安全だと思うしかないということになってしまいます。もっと身近なところで、今、流行している新型コロナウイルスだって、たった一言、「今、新型コロナウイルスが流行っているので、感染対策をしてください。その時には換気と合わせ、マスクを着用するのは有効ですよ」とアナウンスするだけで良いのに、今、この期に及んで「マスクをしましょう」が言えません。こんな小さなことが言えないばっかりに、第9波は非常に大きなものになり、重症患者が病院に運ばれない悲劇が続いています。「今はどうなっているのか」を受け入れ、そのためにはどうしたらいいのかをアプローチしていく。「マスクをつけましょう」が言えないのは、科学的な思考ではなく、単なる同調圧力です。なにも永久にマスクをつけろと言うわけではないし、せめて第9波が流行っていて、病院が逼迫している状態が解消されるまでで良いので、目標を立てて対処していくということが、我ら日本人にはできません。福島第一原発事故の後の放射性物質に対する対応と、多くの人が苦しめられている新型コロナウイルスの対応は、実は、けっこう共通する部分があり、同じことができないばっかりに、我々は余計に苦しむ結果を選択しているというわけです。


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