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【選挙ウォッチャー】 武雄市長選2022・分析レポート。

 12月11日告示、12月18日投票で、佐賀県の武雄市議選が行われました。
 武雄市と言えば、新自由主義の元祖とも言える当時の樋渡啓祐市長が「図書館の民営化」とも言える「ツタヤ図書館」をトップダウンで実行。議会で慎重な議論を重ねるでもなく、いきなり新自由主義的な改革をぶちかましてしまうので「佐賀の橋下徹」と言われるようになりました。
 結局、樋渡啓祐市長のやり方を、全国のアホ市長たちが感銘を受け、踏襲するようになり、その後、「ツタヤ図書館」は全国に波及。1円で売られるような役に立たない中古の本ばっかりを並べるようになるなど、数々の問題が指摘されるようになり、今はあまり「ツタヤ図書館」は広がらなくなってきました。
 このたびの武雄市長選が佐賀県知事選と同日に行われる理由は、武雄市長を辞して佐賀県知事選に挑戦したからなのですが、その後を継いだのが樋渡啓祐さんの秘書官などを歴任した小松政さんです。樋渡啓祐さんほどイカれた人物ではないものの、「樋渡派」ではあり、反市長派が立ち上がったことで選挙が成立。地元では「ちょっと面白い選挙」だと思われていました。

小松 政  46 現 3期目を目指す
宮本 栄八 67 新 元市議

 武雄市は、2019年に西日本豪雨災害で浸水の被害を受け、復興を目指していたところに、2021年になって再び豪雨被害に見舞われ、農業を中心に大打撃を受けました。せっかく復興しかけていたところが台無しにされてしまい、高齢の農家たちが一斉に引退。耕作放棄地が広がり、イノシシの被害が出るなど、大変な状況に見舞われています。
 まさに市長の手腕が問われる状況になっているわけですが、そんな中で小松政さんに対する不満も漏れ始め、もともと何でもトップダウンで決めてしまう樋渡啓祐さんを快く思っていなかった市民を中心に、宮本栄八さんを応援する流れが出来上がりつつあり、大激戦となった8年前よりは投票率が下がりましたが、けっして盛り上がっていなかったわけではないというのが取材してきた感覚です。


■ 長崎新幹線で武雄市は復活するのか

今年9月に部分開通した西九州新幹線の「武雄温泉駅」は閑散としていた

 今年9月、西九州新幹線の長崎-武雄温泉間が部分開通しました。将来的には武雄温泉から新鳥栖までの約50kmが結ばれ、九州新幹線と直結することで、より利便性が増す。そんな計画になっていましたが、この区間が結ばれる見通しはまったく立っていません。長崎と武雄温泉の間の約66kmは先行して開業されたものの、この新幹線を利用するためには、九州新幹線で新鳥栖駅に行き、そこから在来線に乗り換え、武雄温泉駅まで行き、そこで再び西九州新幹線「かもめ」に乗り換えるという面倒臭さです。
 長崎と結ばれても、博多から直結していなければ、この駅の利用客が大幅に増えることはありません。しかし、現状はそれがいつになるのかが、さっぱりわからないのです。もしかすると、このまま永久に開業されない可能性すらあるので、そうなってしまうと、あまり利用されない新幹線を作っただけで終わってしまい、いつまでも赤字を垂れ流すことになります。駅前はご覧の通り、ものすごく閑散としていて、賑わいはありません。誰も利用しないので、駅前にはほとんど店がなく、ただ温泉に行くための玄関口になっているだけです。
 こうした状況の中で、どのように武雄市を盛り上げていくのか。これこそが小松政市長に求められる手腕になりますが、今のところ、具体的な解決策が考えられているわけでもなさそうです。それどころか、防災システムをめぐって裁判が行われ、市が敗訴するという前代未聞の事件が起こってしまいました。


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