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【選挙ウォッチャー】 蔵王町長選2020・分析レポート。

9月22日告示、9月27日投開票で、蔵王町長選が行われました。蔵王町は、スキー場などのリゾート地として有名だと思いますが、今年で5選目を目指す自民・公明推薦の現職と、無所属で電子部品会社社長の新人の戦いになっています。争点となっているのは、少子化に伴い、3つの中学校を統合する計画になっているのですが、新設するのか、これまで存在している中学校にまとめるのかという点が大きなものになっています。

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村上 英人  68 現 自民・公明推薦
勅使瓦 正樹 61 新 電子部品会社社長

現職の村上英人さんの初日の第一声には、村井嘉浩知事や国会議員、県議らが大集合したそうで、ゴリゴリの組織戦で挑もうとしているようです。一方で、勅使瓦正樹さんの方は政党の応援がないので、どこまで通用するかは分からないのですが、宮城県の教育委員長を務めたこともある人なので、政治や教育の分野にも関わってきた人です。民間企業の社長として、しっかり利益を出してきたこともあるので、魅力はたっぷりだと思います。あとは、現地で見てみないと分からない選挙戦略が気になるところです。


■ 老朽化した中学校を新築する計画

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今回、争点となっている中学校の統合問題。蔵王町には宮中学校、円田中学校、遠刈田中学校と3つの中学校がありますが、いずれの中学校も老朽化が進んでおり、子供たちも少なくなっていて、もともと「統合するべきだ」という声がありました。統合するべきは統合するべきですが、実は、小学校も同じように老朽化していて、中学校だけが統合されるというのは、なんだか不思議な話でもあります。確かに、老朽化した古い学校より、新築のピカピカの中学校で学べた方が、子供たちは快適に過ごせるでしょう。耐震性に問題がなく、エアコンなどがバッチリと効いた綺麗な教室で学べば、勉強の効率も少しは上がるかもしれません。しかし、この新設される中学校が、本当に子供たちのために建設されるものであるかどうかは、かなり怪しいところがあります。

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地元のオッチャンの話では、中学校の統合問題について、何度か説明会が行われましたが、そこに町長の姿はなく、いつでも代理の人間が出席するだけで、町長の口から説明されたことは一度もないそうです。さらに、蔵王町ではワニの養殖などが行われているそうですが、こうした地元の地場産業をどうやって発展させるかという会合にも町長が顔を見せたことは一度もないというのです。町長はいつでも町の重要な問題に参加せず、代理人を立てるだけでちっとも話を聞かない。こんな町長ではいけないということで、今回は新人の勅使瓦正樹さんを立てることになったのだと事情を説明してくれました。新設される中学校の総事業費は38億円。このうち、地方債として蔵王町の借金になるのは17億円。これから少子高齢化が進み、人口が減少している中で17億円をコツコツと返済していかなければならないのです。しかも、この38億円と言われる事業費は、まだまだ膨らむ可能性が非常に高いというのです。もしかしたら40億円を超え、50億円を超えてしまうかもしれない。日本でよくある「予算と実際の金額が全然違う」という現象が起こるのではないかと心配されているのです。実際、町民の説明では33億円の計画だと言っていたのに、仙台放送のインタビューには38億円だと答えていて、何の説明もなく、いきなり5億円も膨らんでいるのです。選挙前にすらこんなことが起こっていたら、こんなもの、もっと金額が上がっても不思議ではありません。実際、「事業試算が甘いので、毎年の返済額が計画より上がるかもしれない」と懸念する自民党の関係者もいるほどです。

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