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【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#300)。

 先日行われた衆院選で国政政党にして唯一、0議席に終わった「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反(旧・NHKから国民を守る党)」。議席こそ獲得できなかったが、小選挙区で15万0542票、各比例ブロックで79万6788票を獲得し、1票あたり年間約80円と言われる政党助成金の上積みに成功した。
 2019年に行われた参院選の比例区で獲得した票が98万7885票なので党勢としては衰えているが、公平性の観点から党首討論番組に招かれるようになり、新たにテレビを中心に情報を取っている層から期待され、当初の想定より票を伸ばしたとみられる。

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 党首の立花孝志は、今回の衆院選を振り返り、受け取れる政党助成金が2億円以上になり、党の財政を黒字にすることができたので「及第点」だとしている。しかし、立花孝志はそれと同時に「NHKから国民を守る党には3億6000万円、立花孝志個人には4000万円の借金がある」と話しているため、これで「黒字になった」と言うのは矛盾しているように見える。
 問題はここからだ。立花孝志は11月4日に「お金貸して下さい NHK党」というタイトルの動画をYouTubeにアップしている。今回の衆院選の結果を受け、政党交付金を積み増すことができたので、今度は来年の参院選に挑戦するために、またお金を貸してほしいという話である。しかし、立花孝志は今回の衆院選のために、既に5億円のお金を年利5%(初年度の年利は10%)で借りている。今回の衆院選では、党が負担した供託金が5100万円だったというので、それからポスターやら何やらにお金を使ったとしても、まさか4億や5億といったお金が使われているとは思えない。なにしろ立花孝志がウリにしているのは「お金のかからない選挙」である。今回の衆院選でも「すべての選挙区にポスターを貼ったわけではない」ということを認めるし、実際、ポスターを貼れていなかったことは私がこの目で確認している。だとすると、衆院選の時に借りた4億円近いお金はどこに消えてしまったのだろうか。巨額の使途不明金が残されたまま、立花孝志は新たな借金をしようというのである。


■ 立花孝志の参院選の計画は破綻している

 立花孝志は、今度の参院選で各都道府県選挙区に75人を擁立し、今度の参院選で2%以上を獲得すると息巻いている。都道府県の選挙区は、鳥取県と島根県が合区になり、徳島県と高知県が合区になっているので、全部で45選挙区しかない。そこに75人を擁立するということは、1つの小選挙区に2人以上の候補を擁立することになる。
 かつてほどの党勢がないと考えた時に、候補者をたくさん立てることによって各都道府県の選挙区で2%以上を獲得するというのが立花孝志の狙いだが、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」の候補者が供託金没収ラインとなる有効投票数の10%を超えた票を得るということは考えにくいため、75人全員が300万円の供託金を没収されると思われる。ということは、没収される供託金だけで2億2500万円。さらに、立花孝志が動画で語っているポスター製作費の5000万円、ポスターを貼るのに1億円ぐらいのお金がかかるとすると、最低でも3億7500万円のお金がかかると見積もられている。
 動画では語られていないが、おそらく比例区にも候補者を立てることになると考えられることから、立花孝志の計画通りに実行するとなれば、ざっくりと4億円ぐらいのお金が必要になる。立花孝志はYouTubeで、党の銀行口座には3000万円くらいしかないと語っているので、既に衆院選の準備資金として借りた5億円のほとんどは何らかの形でなくなってしまったと考えられることから、新たに4億円ほどのお金を調達しなければならないことになる。もっとも、今回の衆院選のように「諸派党構想」と称して、候補者に300万円の供託金を負担させる方法がないわけではないが、今回の衆院選で供託金を自腹で払ったのが候補者の半分くらいだったことを考えると、1年も経たずにやってくる参院選に300万円を背負ってやってくる人はそれほど多くないことだろう。
 既に4億円の借金を背負い、新たに4億円くらいの借金をしなければ立花孝志の構想は実現しないので、借金の合計は8億円。その年利が5%ということは、年間に返済しなければならない額が4000万円。毎月135万円の赤字だったのが、今回の衆院選で黒字に転換したと豪語している立花孝志だが、追加で返済しなければならない借金の額を加えたら、仮に政党助成金をマネーロンダリングできたとしても、返済は不能になってしまう。


■ 歴史に残る大事件になる可能性がある

 1995年から1997年にかけ、新進党の参議院議員だった友部達夫が起こした「オレンジ共済組合事件」というものがある。これは友部達夫が設立した「オレンジ共済組合」が、年利7%ほどの投資案件を持ち掛けたものの、集めたお金が選挙費用や政界工作費、借金の返済などに流用されていたため、約束した金利を支払うために新たな組合員からお金を徴収する「ポンジスキーム」に陥っていて、最終的に詐欺で逮捕された事件である。
 この事件は、参議院議員である友部達夫が個人的にやっていたことであって、新進党が関わっていたわけではない。ところが、立花孝志がやっていることは「NHKから国民を守る党」という国政政党を利用し、表向きは「借金」ということになっているが、実質的には「5%の金利を約束した投資案件」となっており、衆院選の前に借りた5億円(立花孝志の話では4億円に減っているという)の返済計画さえ怪しいのに、さらに追加でお金を借りようというので、まさに「ポンジスキーム」が疑われる。
 そもそも「政党助成金で借金を返すことはできない」と口を酸っぱく言われているにもかかわらず、「政治資金団体を迂回すれば借金の返済に充てられる」という持論を展開し、堂々とマネーロンダリングを宣言。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」や立花孝志に政党助成金以外の収入がほとんどないので、もし国から返還を要求された場合には、その瞬間に収入のほとんどが途絶え、お金を貸した人たちにお金が返ることはなくなってしまうだろう。もしかすると、「半分は政党に寄付したつもりなので、お金が返ってこなかったとしても納得できる」という人もいるかもしれないが、政党助成金が入らなくなった瞬間に党の運営はできなくなるので、立花孝志の政党はNHKよりも先にぶっ壊れることになる。
 現在、立花孝志は不正競争防止法違反、威力業務妨害、脅迫罪の3つの刑事事件に問われている身だが、もっと大きな事件に問われかねない状況にある。国政政党そのものが事件性を問われるなんて前代未聞である。


■ この投資話に6億円近いお金が集まる

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 世の中には、よく確認もしないで100万円単位のお金を投資する人たちがたくさんいるようである。既に立花孝志の銀行口座には1億3000万円以上のお金が振り込まれていて、これから振り込む人たちの分を合わせると6億円近くになるという。今の党勢を考えた時に「そんなに集まるのか」と疑問に思う人がいるかもしれないが、過去の傾向を見る限り、私は本当にそれだけのお金が集まっていると見ていて、公開されている通帳にヤラセはないと思っている。世の中には、それだけバカが多い証拠である。
 皆さんのまわりにも、知り合い程度であれば、ネットワークビジネスに手を出している人がいるのではないだろうか。あるいは、よくわからない宗教に入っている人だっているかもしれない。その類のものだと思っていただければ、騙される人はいるのである。100万円単位の投資なのだから、よく考えるべきなのだと思うが、人は大抵そんなに慎重ではない。
 見事に6億円近いお金を手に入れることに成功した立花孝志であるが、久しぶりの大金を手にして、フル勃起で夢を語っている。早くも来年夏に迫った参院選では、全国のN国党地方議員たちを任期途中で辞職させ、参院選に立候補させる計画のようである。これは党にとって「天下分け目の戦い」だということで、「任意」と言いながら、実際には「強制」である。
 この動きを我々「N国ウォッチャー」たちは大歓迎している。地方に残るN国党員たちが辞めれば、ろくすっぽ仕事をしない税金の無駄でしかない議員たちがいなくなり、少しは街がキレイになる。しかも、N国党は現在、選挙で「85連敗中」であり、葛飾区議選の結果次第では「87連敗」まで記録を伸ばす勢いである。つまり、一度辞めたら議会に戻ることはできない。


■ N国本の執筆は順調である

 衆院選の結果を受け、総額で10億円以上となる「借金のおかわり」をしたこともあって、少々内容の修正が生じてしまったが、来年1月20日の発売に向け、「『NHKから国民を守る党』とは何だったのか?」の執筆は順調である。
 フランス10の及川健二記者が、N国党の記者会見に出席し、自分や畠山理仁さんでさえ原稿を書き終わってから発売をするのに、まだ書き終わっていない段階で発売するのはいかがなものかと、尊師・立花孝志に訴え、尊師も尊師でバカにしたような笑いを浮かべていたが、やり方は人それぞれであって、仮に今から私が死んでしまい、この本が発売されないことになってしまったとしても、ただ返金されるだけでお金を失うようなことはない。ちなみに、今後も発売日と本のデザインを決め、そこを目標に本を書いていくスタイルで「計画生産」をしたいと考えている。
 さて、この本では、N国党の性質、選挙戦略、これまでの闘争の歴史などをまとめており、N国党のお金、尊師・立花孝志が1月20日に刑事事件の判決が下されて以降の予測まで、あらゆる角度から検証している。その予測に基づけば、せっかく6億円も「借金のおかわり」をして、参院選で議席の確保を目指そうとしているのに、計画通りには行かないのではないかと予測している。ただし、代表者が立花孝志ではなくなり、新たに看板が付け替えられてしまった場合、追加の議席を獲得する可能性があるため、引き続き監視が必要であると考えている。詳しくは、拙著をお読みいただきたい。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 参院選ほどのブームにはなっていないが、今回の衆院選を機に、立花孝志のYouTubeのチャンネル登録者数は2000人ほど増えている。これまで順調に減り続けてきた尊師のYouTubeだが、ここに来て増えるというのは、やはり今までササっていなかった層にササり始めている証拠だろう。まだ焼き畑農業に緑が残っていた形だ。
 最近になって立花孝志を知った人はポンジスキームになっていることに気づかないのかもしれないが、毎年1億6000万円もらっている状態で赤字だったのだから、上積みされるお金が5000万円ほどだったとして、残りの4年間で2億円ほどしか借金の返済に回せるお金はないことになる。おそらく来年の参院選で議席が増えるから大丈夫だと言いたいのだろうが、次の参院選にかけようとしているお金がざっくり4億円。奇跡的に1議席を獲得できたとしても、参院選での投資をペイすることに費やされたら、上積みされるお金があっても相殺されてしまい、やっぱり借金が返済されることはないという計算になる。
 つまり、今回の「おかわり」はポンジスキームそのものであり、立花孝志の頭の中からすっかり「元金を返済しなければならない」ということが抜けているので、まず貸した金が返ってくることはないと考えていいだろう。しょせん、N国信者たちにとって私は「代表的なアンチ」としか見られていないと思うので、私の警告は無視されるのだろうが、お金が返ってこないのは自業自得なので、高い授業を払って学んだらよろしいのだと思っている。
 今回の「おかわり」によって、立花孝志はブタ箱に片足を突っ込んだ状態だと思われる。11月26日頃には政治資金収支報告書が発表されることになるが、これもまた面白いことになるだろう。こちらは本には間に合わないので、『チダイズム』でじっくり検証する予定となっている。カルトは崩壊する時が一番面白いとは言ったものだが、N国党が面白いのは、まさにこれからである。

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