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【選挙ウォッチャー】 陸前高田市議選2023・分析レポート。

 8月27日告示、9月3日投票で、岩手県の陸前高田市議選が行われました。定数16に対し、19人が立候補したため、3人が落選する選挙となったのですが、若い人もそれなりに当選しており、改めて、陸前高田市がどのように復興していくのかを見守りたいところです。
 田舎だということもあり、12年前の震災の記憶が生々しく残っている中で、さすがにN国党のようなクソが立候補してくることはありませんでしたので、とても平和な選挙であると言えるのではないかと思います。

 陸前高田市は、震災の記憶を残すところです。
 この12年間で、僕たちの生活はどう変わったでしょうか。震災に遭った場所も、そうでない場所も、日本全体でこの12年間を振り返って、日本は良くなっているでしょうか、悪くなっているでしょうか。
 僕は2017年から選挙ウォッチャーになりましたので、震災直後の選挙をよく知るわけではありませんが、少なくとも、昔は「NHKから国民を守る党」みたいなアホの政党は存在しなかったし、こんなにアホの声が選挙に反映されることもなかったのではないかと思います。震災から日本の景色がずいぶん変わりましたが、毎回、震災以前はどうだっただろうということを思い出させてくれる選挙だと思います。


■ 陸前高田市議選・選挙ボード解説動画


■ 震災の記憶を残す町・陸前高田市

震災遺産として陸前高田に残るユースホステル

 陸前高田市は、東日本大震災の津波で、尋常ではない被害を受けたところです。僕も震災から半年後ぐらいにボランティアに入ったことがありましたが、半年経っても瓦礫の撤去は進んでおらず、人々が生活を取り戻している様子はありませんでした。あれから少しずつですが、復興は進み、市内に仮設住宅がいくつも作られていきました。あの震災で、人生が大きく変えられてしまった人たちも多かったのではないかと思います。
 かくいう僕も、東日本大震災をキッカケに、日本全国に放射能が拡散されて、最終的に「選挙ウォッチャー」になりました。当時は民主党政権でしたが、東日本の広い地域で放射能の汚染があったことを隠し、SPEEDIの情報さえ公開しなくなってしまいました。そして、暫定基準値なるものが設けられ、人々は日頃から「カリウム40」を食べているのだから、原発由来の放射性物質を食べても問題がないというプロパガンダが大々的に行われるようになったのです。
 今回の「トリチウム処理水」と名付けた放射能水を海洋放出するのも、日本政府は「IAEAのお墨付き」だとして、まるで安全であるかのように宣伝をしていますが、実際、IAEAの報告書を見ると、「IAEAは、このレポートの使用に起因する結果に対して、いかなる責任を負わない」「このレポートはその政策(=ALPS処理水の海洋放出)の承認でも推薦でもないことを強調したい」と書かれるなど、けっして「IAEA」がお墨付きを与えてくれているわけではないことがわかり、かつ、もし海洋放出によって何か不都合なことが起こっても「俺たちは悪くないから」ということを一生懸命伝えている内容となっていました。
 こんな無責任なレポートを堂々と出せる奴も出せる奴ですが、このレポートを受けて、「ほな、大丈夫やで!」となっている奴が一番頭がおかしいのではないでしょうか。

 放射性物質をめぐる「誤解」というのは、まだまだ日本に根強く残っていると考えています。というのも、セシウムとカリウムの違いすら理解できずに、「人間はそもそも7000ベクレルを発している」とホザいてしまうアホがたくさんいて、何も知らない人たちは、こうしたアホのネトウヨたちの発信を信じてしまうからです。
 放射性物質は、「核種」によって、まったく危険度が異なります。かつてアメリカではラジウムの発光する性質を利用し、化粧品に使われたり、非科学的な健康法が流行して、よりによってラジウムを飲むということさえ起ったことがあります。当然、現在ではラジウムを化粧品に使うことは禁止されているし、健康法としてラジウムを飲んでいた人たちには健康被害が続出してしまい、大きな問題となりました。
 カリウムは世の中にたくさん存在していて、僕たちが日頃食べている食品の中にも存在しているけれど、ラジウムを食べた人には健康被害が出る。これは言うまでもなく「核種が違うんだから、別の核種を食べれば健康被害が出るのは当然」という結論です。カリウムは特定の臓器に集中することがないため、被曝の影響を広く受け流すことができますが、ヨウ素やストロンチウムなど、今、処理水のタンクの中に入っていて取り切ることのできない核種は、甲状腺や骨髄などに取り込まれます。そして、こうしたことが一切考えられないまま、日本の海産物の放射能汚染を深刻にしてしまう可能性があります。
 特に心配されているのは、原発事故の時にはあまり放出されなかった「ヨウ素129」という物質です。放射性物質ではない安定ヨウ素は、生き物に必要不可欠な栄養素であるため、海藻を中心にヨウ素を取り込む性質があります。もし海の水や海底の土が汚染されていなければ、海藻に吸収され、濃縮するヨウ素は、放射性物質ではない「安定ヨウ素」ということになろうかと思いますが、そこに放射性ヨウ素が混ざれば、海藻は汚染され、その魚が海藻を食べることで、生態系の中に放射性物質が取り込まれていくことになります。
 こうした海の生態系などのメカニズムについては、原子力工学の教授よりも、むしろ海洋学の教授の方が詳しいわけですが、こうした汚染水の放出をめぐっては、「どうせ人間はカリウム40で被曝している」とホザいてしまう原子力ムラの御用学者の意見が聞き入れられ、海洋学や環境学といった観点で考える人の意見は通りません。理由は簡単で、そんな人たちの意見をいちいち聞いてしまったら、海洋放出ができなくなってしまうからです。つまり、最初から海洋放出をするために、海洋放出に賛成してくれる人たちの意見だけを聞いて、「みんなが大丈夫だと言うので、大丈夫になりました」と発信しているに過ぎません。
 そして、最も罪深いのは、こうした海の放射能汚染が本格的に問題となってしまうのは、十数年後の未来になります。環境に放出して、どうすることもできなくなってから、「海洋放出という選択は正しかったのか?」と言われ始めるということです。そして、その頃の日本政府が今と変わらないぐらいにバカであれば、世界から海洋汚染の深刻さを指摘されても、「日本人は原発事故でも生き残り、放射能に負けない体ができている。さあ、どんどん食べて元気になろう!」と言いながら、平均寿命を短くしていくことになるのだろうと思います。 


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