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【選挙ウォッチャー】 愛媛県知事選2018・分析レポート。

まさに「これが日本の現実である」というような選挙になりました。伊方原発の再稼働問題、加計学園問題、水道民営化問題など、暮らしにまつわる大きな争点が横たわっているはずの愛媛県知事選でしたが、いまいち盛り上がりに欠けたまま、選挙をやる前から結果がわかっているような選挙になってしまったのです。こうなってしまう一番の理由は、そもそも「愛媛県知事になろう」という人がいないことです。魅力的な候補が現れないばっかりに、有権者に選択肢がないのです。「政治家」を素晴らしい職業にするには人々の関心が高くなければなりません。このレポートをキッカケに、少しでも興味を持ってくれる人が生まれるといいと思います。

中村 時広 58 現 自民・公明・国民民主党推薦
和田 宰  66 新 共産党・伊方原発反対団体
田尾 幸恵 49 新 看護師・ケアマネージャー

現職の中村時広さんは伊方原発の再稼働に賛成しています。また、愛媛県今治市は加計学園問題の震源地であり、この問題では安倍晋三総理周辺の思惑通りに進めてしまった前科があります。こうなってくると、当然、「愛媛県知事としてどうなの?」という声が聞こえてきそうなものですが、実際に愛媛県に行ってみると、中村時広さんに対して好意的な意見はあっても、ほとんど否定的な意見はなく、その責任を問おうとする人は少数派であることが分かりました。大阪に住んでいない僕たちが「松井一郎さんが知事なのっておかしくない?」と思うのに、意外と大阪に住んでいる人は「大阪を変えてくれるのは松井はんしかおらん」と言っちゃうものだったりするのと一緒でしょうか。


■ 伊方原発の再稼働問題

今年6月に行われた新潟県知事選では、東京電力の柏崎刈羽原発の再稼働問題をめぐり、「絶対に負けられない戦い」という位置付けで、白熱した選挙戦が展開されました。柏崎刈羽原発では今年11月にケーブル火災があったのですが、消防が火災の場所を特定するのに1時間以上かかるという連携不足で、相変わらず杜撰な管理をしていることが分かっています。こんな人たちに原発の運営を任せるなんて不安でしかありませんが、「あれは東京電力だから起こっていることで四国電力なら安心」ということはなく、万が一にも伊方原発が事故を起こすようなことがあれば、愛媛県には人が住めなくなるし、日本列島全体に壊滅的な被害を及ぼすことになりかねません。まさに日本という国そのものが滅ぶかもしれない中で、どのような決断をするのかが問われているところになります。


■ 愛媛県知事選の大きな問題点

実は、和田宰さんはこれまで2003年と2007年に愛媛県知事選に立候補し、ともに惨敗している人物です。長らく愛媛県で暮らしている人たちにとってはお馴染みの顔であり、「また出てきた」という感じになってしまっていて、既に決着がついている人物として扱われているので、期待感を込めて投票することができない候補になってしまっています。つまり、「票を積める要素がない」ということです。和田宰さんがポンコツかと聞かれたら、けっしてポンコツではありません。どうして伊方原発を再稼働すべきではないのかをしっかりとしたロジックで語れる人であり、その能力に疑いがあるわけではなく、けっして悪い候補ではありません。しかし、選挙というのは難しいもので、巷の人たちは口々に「あの人、前も負けてるでしょう」と言うのです。負けているからダメだというわけではありませんが、「勝てそうなら投票するけど、そうでないなら投票しない」という人もけっこういるのです。もちろん、選挙がこんな適当なことで良いはずがないのですが、同じ11月18日に行われた松戸市議選ではカボチャの覆面を被り、「黒猫使いの鈴木遼平」と名乗っている人間が600票以上も獲得してしまうのです。選挙がいかに適当に投票されているものであるかを物語る話だと思います。

この現実を踏まえていただくと分かりやすいのですが、今の日本はイメージで投票している部分も多く、多くの有権者がそんなに深く考えずに投票しています。もともと現職に不満がなければ、仕事ができるのかできないのかが分からない未知なる人に投票するより、今までやってきた人に投票した方が間違いないだろうという話なのです。愛媛県知事選に二度も挑戦して惨敗している和田宰さんが立候補するのは、共産党にすら立候補させられる「弾がない」という状態なのかもしれませんが、そうであれば「日本の闇」です。しかし、そうであったとしても勝つための努力を惜しんではいけません。和田宰さんは伊方原発を止めるための活動を続けていらっしゃいますが、三権分立がしっかりしていない現代の日本では司法の力で原発を止めることができなくなっています。そうであれば和田宰さんが勝つ以外の方法がないのですが、今回の選挙では相変わらずの共産党の選挙が展開されており、まったく魅力が伝わっていませんでした。やはりジジィばっかりで組織されているので、選挙に新しい手法が取り入れられず、新しい層にまったく響いていないのです。


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