見出し画像

【選挙ウォッチャー】 東京都議選2021・新型コロナを軽視する候補者たちの検証。

 新型コロナウイルスが問題視されるようになって約1年半。
 感染を防ぐためには、手を洗うこと、密を避けること、そして、マスクをつけること。これらが大事であることは小学生でも知っている常識中の常識であるが、世の中にはマスクをつけずに選挙運動をしている人たちもそれなりにいる。「そんなバカな!」と思うかもしれないが、いい大人が1年半経ってもマスクの有効性を軽視しているのだから、こんなに酷い話はない。
 今回は、東京都議選で「コロナを軽視している人々」について検証してみることにした。


■ 今も「国民主権党」は健在である

画像5

 「コロナはただの風邪」の代表格と言えば、「国民主権党」だ。
 NHKから国民を守る党のメンバーとして活躍後、離党して政党を立ち上げ、今も社会に迷惑をかけ続けている平塚正幸率いる「国民主権党」は、杉並区から中根淳候補を擁立していた。
 中根淳候補の主張は、もちろん「コロナはただの風邪」であり、「農薬入りの野菜も食べるべきではない」とか「得体の知れないワクチンを打つべきではない」などと訴えている。

画像6

 相変わらずノーマスクで選挙運動をしているのだが、一緒に政策ビラを配る人たちもノーマスクをキメているので、たびたび通行人が危険に晒されていた。
 しかし、党首の平塚正幸が東京都民ではないこともあって、国民主権党が擁立してきたのは中根淳だけ。そして、中根淳の選挙を手伝うスタッフもそれほど多くはなく、せいぜい4~5人ほど。都内でこれしか手伝ってくれないのだから、一時期ほどの人気はないように思える。
 本来なら、国民主権党が1人しか候補者を出さないのであれば、この手の候補は他にいないはずだった。ところが、実際は同じような主張をする人が別のところから発生していたのである。


■ 「つばさの党」と関わる人たち

画像1

 練馬区の須沢秀人候補は、「コロナは概念」と主張している。マスクを真っ二つに割っている写真が印象的だが、立花孝志率いる「古い政党から国民を守る党」の公認となっていて、推薦人には「つばさの党」の黒川敦彦が名前を連ねている。

画像2

 八王子市から立候補した押越清悦候補は、「最新テクノロジーを利用した集団ストーカー犯罪が存在する」と主張し、「目覚めよ日本党」という政党を立ち上げた人物だが、やはり「マスクより免疫力」と主張し、マスクは必要ないというスタンスだ。彼のところにもまた「つばさの党」の黒川敦彦が応援に入っている。

画像3

 中野区から立候補した沢口祐司候補は、選挙ポスターで「子供へのワクチン大丈夫?」と主張している候補で、もちろん、未成年へのワクチン接種については十分にリスクが検討されるべきであるが、肝心の「どうして子供にワクチンを打ってはいけないのか」という理屈を聞いてみると、「ワクチンを打つと病気になって死ぬから」というトンデモ理論だった。

画像4

 沢口祐司候補は無所属だが、選挙を半ばプロデュースする形になっているのは、やっぱり「つばさの党」だった。候補の隣にいるのは、2019年の参院選・神奈川県選挙区に「オリーブの木」から立候補した榎本太志で、彼もまた「コロナはただの風邪」という主張をしている。もともと「オリーブの木」は、元衆議院議員の小林興起さんや元レバノン大使の天野直人さんらが立ち上げた政党だったが、発起人たちが相次いで離党し、最終的に黒川敦彦が率いる政党になった。今年1月、「オリーブの木」「つばさの党」に名称変更したので、「オリーブの木=つばさの党」である。
 そして、この「つばさの党」は現在、立花孝志率いる「嵐の党(旧NHKから国民を守る党)」が掲げる「諸派党構想」に加盟していて、今度の衆院選は「嵐の党」の公認候補として立候補する計画となっている。つまり、この人たちは「N国の人間」なのである。

画像7

 かつて「コロナはただの風邪」の中心は「国民主権党」だったが、最近はトレンドが変わり、黒川敦彦が中心になりつつある。「国民主権党」も根強い人気はあるが、警察とバチバチやり合ったり、五輪中止デモにカウンターを仕掛けたり、過激な行動を繰り返したことで、かつてほどの人気は亡くなっているように思える。そして、そこに現れたのが「つばさの党」の黒川敦彦というわけだ。
 黒川敦彦は今、立花孝志と手を組むことで、地方選挙のみならず、国政選挙にも立候補できる環境を築き上げている。「コロナはただの風邪」と言いたい人たちに、まったく話題にならない地方選挙ではなく、テレビや新聞に名前ぐらいは載せてもらえる国政選挙に立候補できる環境を整えることによって、全国からメンバーを集めようとしているのだ。

画像8

 実は、コロナ禍の選挙では「ヤバい人」「ヤバくない人」かを見極める超簡単な方法がある。それは「マスクをしているかどうか」である。
 新型コロナウイルスの感染は、「唾(つば)」のような目に見える大きな飛沫だけでなく、目には見えない小さな飛沫「エアロゾル」でも起こることがわかっている。なので、網目の荒いウレタンマスクではなく、「不織布マスク」をつけることが推奨されているし、「KF94マスク」のような高機能マスクであれば、なお理想的である。だから、国民主権党のようなノーマスクは論外として、このご時世に「マウスシールド」をつけている候補者たちも、もれなくヤバいのである。


■ マウスシールドはノーマスクも同然

画像9

 この写真は、東京都議選の直前に行われた静岡県知事選のワンシーンである。
 候補者はマスクを外して演説し、スタッフがビニールシートを広げて聴衆を守る。岩井茂樹候補は、地元選出の参議院議員にして、国土交通副大臣をやっていた人物なのに、そんな候補の新型コロナウイルス対策が、ご覧の有り様なのである。
 新型コロナウイルスが問題になってから1年半。感染力が強いと言われるアルファ株(英国株)の、さらに上を行く感染力だという「デルタ株(インド株)」の流行により、いよいよ日本列島を「第5波」が襲おうとしている中、それでも国民の反対を押し切って東京五輪を開催しようと言ってしまうのは、そもそも与党の政治家たちが新型コロナウイルスに対して、甘く考えているからだと見ている。

画像10

 千代田区の内田直之候補の応援に駆け付けた「新型コロナウイルス担当大臣」である西村康稔さんは、壇上でスピーチをする際、それまでつけていたマスクをわざわざ外して、マウスシールドを装着している。
 西村康稔大臣は演説で、「ここは外で聴衆との距離が十分にあることからマウスシールドにしている」と説明していたが、感染力の高い変異株はこれまでの「2m」という距離を保っても、感染してしまうリスクがあると報告されている。つまり、これまで以上に広いソーシャルディスタンスを保たなければならないし、距離だけでなく「会話の時間」も重要だとされている。この日は雨だったため、すぐ隣に傘を持つ御付きのスタッフがいたが、肝心の「新型コロナウイルス担当大臣」が、この程度の認識で、マウスシールドで喋り出すのが、今の日本という国である。

画像11

 さらに、片山さつき先生は、常にフェイスシールドで登場。この状態でいろいろな人と触れ合っており、マスクをつける様子もない。こうした危機感の無さが、与党の新型コロナウイルス対策を物語っていると言えるのではないだろうか。
 マスクには他人に感染させないようにする効果もあるが、自分が感染しないようにする効果もある。もし、片山さつき先生が毎日PCR検査を受けていて、陰性であることが確認されているとしても、片山さつき先生の感染防御能力は極めて低い。万が一、片山さつき先生が感染した場合、一緒にいた人がもれなく濃厚接触者となることを考えたら、マスクをするのが当たり前である。


■ 高機能マスクを使っている人もいる

 今回の東京都議選において、マウスシールドを採用する候補者はそれほど多くなかった。ほとんどが不織布マスクの着用していて、ウレタンマスクの候補者もそれほど多くなかった印象だ。
 そんな中、ワンランク上を行くマスクを使っている人たちがいる。

画像13

画像14

 立憲民主党の女性候補たちに多く見られたのが「KF94マスク」だ。
 フィルターを使い、韓国の厳格な基準を満たしている高性能マスクのことで、口元に空間があり、密着性が高く、飛沫の漏れが少ないとされているマスクである。1枚あたり100円前後が相場だが、メイクが崩れにくいなどの利点がある。なお、蓮舫さんも不織布マスクの上からウレタンマスクで蓋をする「二重マスク」をしており、これも不織布マスクだけに比べると防御力が高くなる。

画像12

 加藤勝信官房長官が使っていたのは、ヤマシンのフィルタマスクだ。こちらは3枚800円前後と金額こそ高いが、独自特許技術のナノファイバー製のマスクで、医療従事者にも愛用されるくらいに信頼性の高い日本製のマスクとなっている。官房長官がコロナウイルスに倒れるようなことがあっては困るので、これくらいの危機管理は欲しいところである。

画像15

 今回の東京都議選でフル稼働していた今井絵理子参議院議員が着用していたのは、ユニ・チャームが開発した「顔がみえマスク」だ。1枚1480円と非常に高額であるが、聴覚障害を持つ人たちに口の動きが見えるように開発されており、あまりの人気のため、現在は品切れとなっている。こちらの商品はマスクシールドとは異なり、密閉された構造になっているため、漏れは少なく、通常のマスクと変わらない性能であると考えてよさそうだ。どうしても顔を見せたいのなら、マスクシールドではなく、このようなマスクを使う手もあるのではないだろうか。
 このように自民党の議員の中にも、しっかり新型コロナウイルス対策をしている人はいて、全員が全員、認識の甘いアホの議員たちだというわけではない。ただ、議員である以上、認識が甘いのは勘弁していただきたく、認識の甘い議員たちが集まって何かを決めているのだとすれば、それはもう判断を間違えるのは必然と言えるのではないだろうか。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

画像16

 コロナ禍の選挙において、「マスク」というのは、その候補者の人間性や考え方を表すアイテムとなっている。まずは、しっかり「不織布マスク」をつけているかどうか。最近はマスクの色をテーマカラーで統一する候補者も多くなっているが、布マスクやウレタンマスクの候補はかなり微妙だと考えてもいい。なにしろ、今は感染力の非常に強い「デルタ株」が流行する時代である。選挙は人と接する機会も多く、それなりに感染リスクの高いイベントである。そもそも感染症対策をしっかりできていない人間に、どうすれば新型コロナウイルスの脅威から日本や東京を守れるのかを考えられるはずがない。より良い候補を選びたいなら、まずはマスクを見ることである。

画像18

 最後に、今回は安倍晋三前首相も東京都議選の応援に駆け付け、マスクを着用していたのだが、そのマスクは布製の「アベノマスク」ではなく、ダチョウの抗体によって、花粉、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、新型コロナウイルスの表面の突起を「抗体」が覆うので、鉄壁の遮断力を持っていると説明する不織布マスクだった。
 奥さんは奥さんで、コロナ禍に88次元からやってきたという男とノーマスクで神社に参拝するぐらいにパチキレているのだが、当の安倍晋三前総理も、かなり前衛的なマスクを着用している。一応、ホームページには新型コロナウイルスに効果があると説明されているが、本当の効果はよくわからない。ただ、フィルター機能ではなく、ダチョウの力に頼ろうとするところが安倍晋三前首相らしい。

画像18

 このように、マスクひとつを見ても、非常に興味深い東京都議選。
 今回、『チダイズム』では、全42選挙区のうち、島部と無投票当選になった小平市を除く40選挙区をすべて取材し、レポートとしてお届けする予定だ。通常のレポートと変わらず、1選挙区ずつ単品で購入することもできるが、7980円で40レポートをお得に読めるマガジンも販売する。1本あたり199円で、毎日ポチポチとボタンを押す必要もないし、金額的にもお得になるので、ぜひ楽しんでいただきたい。
 また、7月8日にはロックカフェロフトの恒例イベント「ドッキドキ選挙報告会」が開催される。ここでは東京都議選を振り返り、各選挙区の勝敗ポイントをどこよりも早く解説する。


▼東京都議選・全40選挙区のマガジン▼


いつもサポートをいただき、ありがとうございます。サポートいただいたお金は、衆院選の取材の赤字分の補填に使わせていただきます。