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【選挙ウォッチャー】 尾鷲市長選2021・分析レポート。

5月30日告示、6月6日投開票で、三重県の尾鷲市長選が行われ、現職と元職、新人の3人が立候補しました。「陸の孤島」と言われるぐらいに遠い場所なのですが、車で鹿児島の南端にある南大隅町まで選挙ウォッチの旅をしたことがある僕としては、三重県の南端ぐらいだったら余裕で行ける人間になってしまい、「行ってきた」というだけで驚かれるようなレポートが出来上がってしまいました。これぞ全国の選挙を追いかけている「選挙ウォッチャー」の真骨頂です。

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加藤 千速 72 現 2期目を目指す
奥田 尚佳 53 元 公認会計士
野田 拡雄 64 新 元市議

僕のクラウドファンディングに参加してくださった皆様には、毎度、「当落予測キャス」をパスワード限定配信しているのですが、そこでは「選挙をやる前から結果が決まっているぐらいに現職が強い」と報告していました。新人の野田拡雄さんは組織がまったくなく個人で戦っており、元職の奥田尚佳さんは市民から「ヤバい奴」と認識されており、あんまり好かれている様子がなかったからです。


■ 加藤千速候補の主張

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加藤千速さんは、阪急百貨店の常務だった人物で、いわゆる一流企業のエリートだった人物です。そんな人が尾鷲市の市長になってくれるというのですから、町の期待は大きいものがありました。築地市場で尾鷲産の海産物をトップセールスで売り込むなど、「商売人」としての経験を活かし、今日まで活躍してきました。「陸の孤島」と言われながらも、尾鷲総合病院を維持するだけでなく、MRIとCTスキャンを順次導入。より高度な医療を受けられるように整備をして、ゴミ処理の問題でも東紀州の5市町で共同運営する方針に参加。ジジィなので公式ホームページなどはなく、公約は選挙公報で確認するしかないのですが、最も具体的かつ詳細な公約を掲げています。緊急課題として掲げるのは、やっぱり新型コロナウイルス対策。ワクチン接種の迅速な対応のみならず、国・県・尾鷲商工会と連携した社会経済対策を積極的に進めることを約束。もともと「陸の孤島」だけあって、観光で来る人がそれほど多いわけではないため、実は、経済的なダメージはそこまで大きくないと見ますが、情報は的確かつ迅速に伝達し、市民に注意を呼び掛けるとしています。尾鷲市のように、もともと人流の少ない所では、このようなことでも良いのかもしれません。通常の課題としては、港町ゾーンの活性化と「食の町・尾鷲」の振興。高齢化社会に対応し、リアニック(放射線治療できる機械)を導入する。若者が定住したいと思える街づくりを目指し、尾鷲中学校の給食実施と、尾鷲小学校の給食設備を整備。再来年4月の稼働を目指すとしています。さらに、財政の健全化に向け、行政組織の構造改革を進めるほか、ふるさと納税獲得作戦の強化で歳入増を目指します。ふるさと納税の寄付額は、前年比3億円増となる4億1000万円になり、加藤千速市長になって、町は良くなっている印象です。

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加藤千速さんは、ただのジジィではありません。出陣式には100人近い支持者が集まり、東紀州4市町の首長らが駆け付けたそうですが、恒例となっている「ガンバロー三唱」は自粛。選挙戦は、自転車に乗って市内を走り回るなど、市民と交流を深めながら訴えるスタイルを採用。尾鷲市ではパーキングエリアの売店でメシを食った程度になってしまったのですが、このあたりの「食」のポテンシャルは非常に高く、もっと多くの人に美味しさを伝えることができれば、実は、伸びていく分野なのではないかと魅力を感じています。加藤千速市長の手腕には、今後も期待できそうです。


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