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【選挙ウォッチャー】 鯖江市長選2020・分析レポート。

9月27日告示、10月4日投開票で鯖江市長選が行われました。メガネの街として知られる鯖江市は、街のいろいろな所がメガネのデザインになっていて楽しいのですが、この市長選に立候補したのは、県議のオジサン、市議のオジサン、若き会社社長の男性の3人。あまりに組織力が違うので、事実上の「県議vs市議」の一騎打ちとなっていましたが、若いのに選挙に挑戦しようという人は貴重です。

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佐々木 勝久 52 新 元市議
田村 康夫  60 新 元県議
山岸 充   30 新 会社役員

2004年から4期16年にわたって市長として活躍してきた牧野百男さんが引退し、その後の議席をめぐって熱い戦いが繰り広げられることになりました。牧野百男さんは、その前の市長が福井市などとの合流を勝手に協議してしまったため、住民によるリコールが成立。自民・民主・公明推薦、共産推薦で当選したという人です。かなり人気があり、2012年、2016年は無投票当選となっていました。今回は12年ぶりの市長選です。


■ 応援する人を明らかにする独特の文化

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鯖江市には、自分がどちらの陣営を応援しているのかを示すという独特の文化があります。通常、自分がどちらを応援しているのかは心に秘め、質問されても「そういう質問はしないでくださいよ」みたいな空気になることが多いのですが、ここでは「うちは、この候補者を応援しています」というのを旗などを使って示すということになっています。この家は赤い旗を掲げていますので、「田村康夫さんを応援している」ということをアピールしています。どうやらこの旗は「相手陣営に個別訪問されたくないから」みたいな理由で設置されているのではなく、純粋に「頑張ってくれ!」という応援みたいな気持ちで設置されていると言った方が近いと思います。

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時間を作って、もっと真剣に数えれば面白かったかもしれませんが、だいたいの感覚で言えば、7:3ぐらいで「赤」の旗を掲げている人の方が多かった印象です。つまり、街で見かける旗だけで言えば、田村康夫さんの方が優勢のように見えました。みんなが同じサイズの旗を掲げているので、おそらく事務所で配っているのだと思いますが、けっこう街のあちこちで見ることができるので、相当な数を配っていると思います。

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テーマカラーが「水色」の佐々木勝久さんを応援する人たちも、負けじと旗を掲げていたのですが、数では圧倒されていました。ここが「市議」「県議」の差ではないかと思いますが、福井県議選における鯖江市の定数は3なのですが、その3人は全員が「自民党」です。福井県はもともと圧倒的な自民党帝国になっていて、鯖江市は「ものづくりの街」ということで、物を作って商売しようと思ったら地元商工会などのつながりは不可欠で、自動的に自民党のコミュニティーに乗るというわけです。だから、自民党の県議が強いのはそれなりに納得です。しかし、選挙でどちらを応援しようと、選挙が終わった後はノーサイドになるという素敵な文化が広がっているのかもしれません。どちらを支持していたのかが、今後の仕事に影響してくるようなことがあるのなら、おそらくこのような行動にはならないと思うのです。そういう意味では、とても健全な街のように見えます。

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旗がない場合には、こんなふうにハチマキのようなものを軒先に結ぶことで応援を示しています。この「赤」の勢力は、水色の佐々木勝久さんの選挙事務所のすぐ近くにまで及んでいましたので、わりと鯖江市全体で「赤」が優勢になっていたと思われます。この様子を見て、僕は選挙をやる前から結果がそこそこ決まっているような選挙だと思っていました。しかし、これは完全に錯覚だったのです。田村康夫さんの陣営も市内の様子を見て気が緩んでいたのではないでしょうか。

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こんなふうに車のサイドミラーにリボンをつけて応援している人たちもそこそこいました。こんなふうに市民が車で応援している人を示すのは、沖縄県知事選の玉城デニーさん以来だと思います。これはもしかすると、そこそこ有効な作戦かもしれず、今後、いろいろな街で見ることになるかもしれません。ちなみに、今回の鯖江市長選の結果から、数が多ければ勝つというわけではないことが証明されたので、今後は惑わされないようにしたいと思います。


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