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【選挙ウォッチャー】 水道民営化問題について考えてみる。

USBを知らないサイバーセキュリティ担当大臣が話題を集める今国会で、おそらく年末にも強行採決されるであろうと考えられているのが「水道民営化」法案です。もう既に衆議院から参議院に送られており、国会は衆議院も参議院も自民党と公明党で過半数を占めているため、水道民営化が可決することは免れない状態となっており、僕たちの生命に関わるインフラが外国の企業に売り渡されようとしています。本当は「保守」とか「愛国」とか言っている人たちが大騒ぎしなければならない問題だと思いますが、彼らは何も言いません。なぜかと言うと、バカだからです。水道民営化が何を意味しているのかをまったく理解していないのです。とりあえず安倍晋三総理が進めていることだから良いことだとしか思っていません。もし、水道が民営化されることになったら、一体、どんなことが起こるのか。水道民営化については、これからいろんな角度から切り込んでいこうと思っています。


■ なぜ水道が民営化されることになったのか

この問題の始まりは「民営化」ではありません。蛇口をひねれば水が出てくる水道は、これまで当たり前のように使ってきましたが、実は、あらゆる場所で老朽化が始まっていて、水道管を交換しなければならない状態に陥っています。新しく水道管を敷くのは比較的簡単なのですが、水道管を交換するとなると、新しく水道管を敷く以上にコストがかかります。というのも、新しく水道管を敷くというのは、ざっくり言えば、穴を掘って水道管を入れて埋めればいいわけです。でも、水道管を交換するとなると、穴を掘って水道管を抜き出して、新しい水道管を入れて埋めなければならないのです。抜き出した老朽化した水道管を産業廃棄物として捨てる作業もあります。電線のように、電柱をよじ登れば交換できるというものではないため、大がかりな工事が必要となり、1kmの水道管を交換するのにかかる費用はざっくり1億円と言われています。街中の水道管を交換するとなったら、一体、いくらのお金がかかるでしょうか。想像するだけで気が遠くなるような金額になります。よく「大地震の時に電柱が倒れたら危ないから電線を地中に埋めたらいい」なんていう人がいますが、こんなに頭の悪いことを言っている政治家を見かけた時には、次から投票しないことです。地震の揺れで電線が切れた場合、地面を掘り返して電線を見つけ、それを引き抜いて新しい電線を通すのに、一体、どれだけのお金と手間と時間がかかるかを想像してもらえば、誰でも簡単にわかることです。もし水道管が地中に埋まっていないものだったら、けっこう簡単に交換できたかもしれません。ところが、地中に埋まっているものだから、整備するにも交換するにもベラボウなお金がかかるようになってしまうのです。そして、東京のように人口が密集しているところだったら、1kmを水道管に何人もの人が利用することになりますが、田舎になってくると隣の家まで1kmなんていうところも平気で存在してしまうわけです。つまり、田舎に行けば田舎に行くほど水道管を交換するコストが割に合わなくなってしまうのです。実は、水道管の老朽化はどこも待ったなしの状態になっているため、実は今、どこの自治体でどうするべきかに頭を悩ませています。特に、田舎では既に人口減少が始まっているため、集落を維持するためには水道は必要不可欠だけど、滅びるかもしれない集落のために数十億、数百億円をかけ水道を敷き直す必要があるだろうかということになるわけです。水道事業が赤字になっている自治体も多く、今は黒字になっている都会の水道事業団と赤字になっている田舎の水道事業団が一緒になったりして、広域水道事業団を作り、どうにかやりくりしていこうという局面だったりするわけです。


■ 水道民営化は日本のみならず世界の問題である

水道管が老朽化していて、どうにかしなければならないという現象は、日本だけの問題ではありません。世界中の至るところで同様の問題が起こっていて、海外では既に水道民営化を試みたところがたくさんあるのです。ところが、水道民営化がうまく機能しているところは極めて少なく、ほとんどの場所で再公営化が進められています。水道は一度でも民営化されてしまうと契約期間が長いため、まだ民営化されたままになっている自治体も残っているのですが、契約終了を待って再公営化するところもあれば、違約金を払って再公営化するところもあります。違約金を払うとなれば、それはそれでお金がかかってしまうわけで、日本は既に契約を結んでしまったTPP11、日EU経済連携協定、実質的な日米FTA、そして、これから契約を交わそうとしている中国を中心とした「RCEP」にも加盟する予定なので、もし水道を民営化し、外国の企業が利権を握ってしまうと、その契約を解除するのに法外な違約金を支払わなければならない可能性があり、水道というインフラが人質に取られてしまうかもしれないのです。


■ なぜ失敗すると分かっているのに水道民営化が進むのか

この国の政治家たちは、庶民のために仕事をしているわけではありません。では、誰のために仕事をしているのかと言うと、それは上級国民様です。上級国民様とは、どこかの上場企業の経営者だったり、どこかの大資本家だったり、簡単に言うと「セレブを極めている方々」ということになります。どこぞのしみったれた生活をしている庶民が困るのは庶民だからであり、上級国民様がより楽しいセレブライフを過ごすためにはどうすればいいかを考えるのが、今の安倍政権の仕事です。もちろん、その上級国民様の中には安倍ファミリー、麻生ファミリーなども入っていらっしゃいます。そして、かねてから水道を民営化してほしいと願っているのは、日本の大企業ではなく、フランスやスイスなどに本社を置く水事業を営む上級国民様です。安倍政権のスゴいところは、日本の上級国民様のためだけに仕事をするのではなく、海外の上級国民様のためにも仕事をするところです。トランプ大統領の娘であるイバンカお嬢様が「お金を欲しい」と言ってきた時もポンとお金を出したのは、上級国民様であればアメリカ人でもいいのです。安倍政権というのは、庶民よりセレブを大切にすることで支持され続けている政権なのです。もっとスゴいのは安倍昭恵夫人です。安倍昭恵夫人はセレブとだけ仲良くするのではなく、庶民と友達になることで「上級国民チャンス」をプレゼントするのです。大阪の豊中で幼稚園をやっていたオジサンが、突然、ほとんどノーマネーで小学校を作れるビジネスチャンスがやってくる。市議に土地の問題をめくられなければ、今頃、小学1年生から教育勅語を暗唱させられ、ネトウヨのエリート教育を受けられる小学校が誕生していたところでした。そんな感じで、水道を使って儲けたいと言ってきた会社に儲けさせてあげるために、たとえ庶民の生活が困ることがあっても儲けさせてあげる。僕たちの生命に関わるライフラインであっても、まったく慎重に考えることなく、軽々と多国籍企業に売り渡してしまう安倍政権の愚かさが、この問題にはギュッと詰まっているのです。


■ 水道民営化とつながっている空港民営化という問題

実は、安倍政権は次々といろいろなものを民営化しようとしています。水道民営化は強行採決される見通しとなっているため、今、皆さんが水道民営化の問題に気付き、法案が可決することを止めようと思っても止めることはできないので、ここから先にできる可能性があるとするならば、自分の街の水道民営化は止めること。そして、水道民営化と並んで問題になりそうなのが「空港民営化」です。既に民営化されている空港の一つに関西国際空港がありますが、先日、台風による高波の被害を受け、空港が閉鎖されてしまった時には「誰がお金を払うのか」ということでモメました。一時的に伊丹空港などが受け入れることになったため、どうにか海外からの観光客を大きく失うということは免れたのですが、電車や高速道路が止まってしまった時には大阪の街からも活気が失せてしまったため、経済的な打撃は計り知れないものになりました。経済的な影響があまりに深刻なので、政府も関西国際空港の早期再開を急がせましたが、民営化されているものに国が介入するのもおかしな話になってしまうので、もし関西国際空港に「早めに復旧することはできない」とか言われたら大変なことになっていました。その可能性もゼロではなかったのです。実は今、北海道の空港をまとめて民営化しようという話も密かに進んでおり、今もどこかの企業が虎視眈々と利権を握ることを狙っているのです。


■ 水道民営化で懸念されるデメリット

今、僕たちの水道は明朗会計です。行政に開示請求を出せば、何にどれだけのコストがかかっているのかを知ることができます。安倍政権になってから公文書が改竄されるようになってしまったので、それを信用できるかという問題はあるにせよ、さすがに今のところは利権がかかっていないと思われるので、きっと正直な数字を見ることができることでしょう。しかし、もし民営化されてしまった場合には、どうなっているのかがブラックボックスに隠されることになります。日産のカルロス・ゴーン会長の不正が今日の今日まで明らかになってこなかったように、水道運営会社の役員の給与がどうなっているのか、あるいは、その利益を何に投資しているのかは謎になってしまい、水道代が値上がっているのは水道管のメンテナンスにお金がかかっているからなのか、それとも、会社の誰かがアホみたいに高い給料をもらっているからなのかが分からなくなるというわけです。自治体には開示の義務がありますが、民間企業に開示の義務はないからです。しかも、今は運営しているのが公務員なので、いくら部長だと言ってもバカみたいに高い給料をもらっているわけではないはずですが、これからは1億円だろうが2億円だろうが、好きなだけ給料をもらえるようになります。現場で働いている下々の社員たちは低賃金でしょうが、役員となったら公務員では実現しなかった高い給料が実現するに違いありません。また、水道は飲める状態に持っていかなければならないため、さまざまな薬品を入れて飲める状態に整えるわけですが、利益を優先して「薬品代が高い」なんて言ってケチることになると、水道水を飲んで病気になる人が出るかもしれません。そうなってしまった場合の補償は誰がやるのでしょうか。福島第一原発事故を起こした東京電力を見ても、結局は国が補償することになり、水道会社はただ利益を貪る存在でしかなくなるかもしれません。なにしろ、水道と同じ「電気」という生活に不可欠なインフラを握っている会社に前科がある国なのです。何か事故があった時に責任を取れないものを簡単に民間企業に任せようというのが、そもそも狂った発想だったりするのです。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

ものすごくざっくりではありますが、水道民営化というのは百害あって一利なし。水道が民営化されたら水道代が安くなるんだという人がいますが、そんなことは絶対にあり得ません。民間企業が赤字になっても料金を据え置きにするということがあり得ないので、何をどう考えても「水道料金を変えません」なんていう契約を結ぶはずがないのです。契約時は他の企業より優位に立つために限界まで水道代を下げたプレゼンをするかもしれませんが、それがいつまでも続くとは限りません。水道は一般のビジネスとは異なり、絶対に使わないことがないのです。手を洗うにしても、トイレでウンコするにしても、一般の家庭から企業に至るまで、水を使わないということは絶対にない。つまり、努力をしなくても必ず売上が期待できるビジネスなのです。お客さんを集める必要がないので、あとは金額面で折り合いをつけるだけ。水道というインフラをビジネスにしようという人たちが「善意」で運営すると思ったら大間違いです。そんな善意があるんだったら、介護や保育といった人が足りなくて困っているようなビジネスをしているはずで、もともと自治体がやっていて、どう考えても自治体がやっていた方がいいものを横から入って儲けようとする人たちなのですから、利益のことしか考えていないに決まっています。僕たちも騙されちゃいけないのです。ただでも「国民のために使う」と言いながら消費税を上げられ、何に使うのかと思ったら東京五輪の無駄なスタジアムを作って「レガシー」とか言ってやがるのです。貧富の差はどんどん広がり、庶民の生活は確実に苦しくなっているのに、そこに水道民営化をぶち込み、さらに水道代を高くしてしまうのですから、そろそろみんなが政治のことを考え始めないと、僕たちはこの国の政治家たちに殺されてしまうことになるかもしれません。そうならないために、自分たちの手でこの国を変えていかなければなりません。その自分たちの手とは、本当は「選挙」なのです。[了]

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