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【選挙ウォッチャー】 福島県知事選2022・分析レポート。

 10月13日告示、10月30日投票で、福島県知事選が行われました。
 今年は、3期目を目指すゴリゴリの現職と、共産党が推薦する新人の一騎打ちとなったため、ある意味、選挙をやる前から結果が決まっているような選挙になってしまい、まったく面白みがありませんでした。
 実は、福島第一原発事故があった双葉郡の首長選もそうですが、「原発事故の後処理をどうするか」という非常にネガティブな課題を抱えている福島県では、政治家になりたい人がいません。キラキラした明るい未来を想像できないため、「政治家になっても、大変な思いをするだけ」なので、誰も政治家になりたいと思わないのです。だから、内堀雅雄さんは無敵です。

内堀 雅雄 58 現 3期目を目指す
草野 芳明 66 新 共産推薦

 今回の福島県知事選の争点は、ある程度の放射性物質を取り除き、貯蔵していた汚染水を海洋放出するかどうかです。唯一、取り除くことのできない放射性トリチウムの半減期は約12年。福島第一原発事故から、まもなく12年になりますので、当時、タンクに詰められたトリチウム汚染水は、半減期を迎え、まもなく半分になります。あと12年経てば4分の1になり、さらに12年経てば8分の1になり、環境に与える影響は格段に少ないものになりますが、タンクを維持すれば維持するほどお金がかかるので、政府としては、とっとと海に捨てちまって、これ以上お金がかからないようにしたいと考えています。
 もちろん、内堀雅雄さんは「政府の方針に従う」という人なので、汚染水の海洋放出には前向きです。対する草野芳明さんは、共産党なので、汚染水の海洋放出には明確に反対しているのですが、いかんせん共産党なので、この意見は通りません。このまま行くと、どこかのタイミングで国がゴリ押しをして、海洋放出をすることになるでしょう。せっかく回復しかけている漁業は、また打撃を受けます。


■ 草野芳明候補の主張

 草野芳明さんは、高校の教員を38年勤めたというベテランの熱血教師です。このたび、共産党の推薦を受けて立候補し、いかにも共産党らしく「命と暮らしを守る県政」をキャッチフレーズにしました。
 政策の一丁目一番地に掲げているのは、「原発ゼロ」「汚染水の海洋放出ストップ」です。福島が丸ごと壊滅してもおかしくないような世界最悪規模の原発事故を起こしておきながら、あれから10年が経ち、「原発を再稼働した方が良い」と考える人が半数以上となっている衰退国家・クレイジージャパンなので、本来であれば、真っ当なことを言っているはずの草野芳明さんは、まったく人気がありません。今回もダブルスコアどころか、8倍近くの差をつけられての大惨敗です。
 本当は、草野芳明さんのことを取材しようと思ったのですが、最終日を目前に控え、新型コロナウイルスに感染したことを発表されたので、危険厨の僕は、スタッフにどれだけ濃厚接触者がいるか分からないし、同じ空間にいた人がすぐさま隔離されてPCR検査を受けているとも思えないので、草野良明さんの取材は断念し、ポスターの紹介だけに留めることにしました。現職の内堀雅雄さんもコロナ対策が完璧にできている人間ではないのに、運が良いことに、新型コロナウイルスに感染することなく、無事に選挙戦を乗り切りました。「運も実力のうち」と考えるのであれば、必死に追い上げなければならない立場の草野芳明さんが、最後の「3日攻防」と呼ばれる期間に新型コロナウイルスに感染し、隔離生活を余儀なくされてしまったというのは、運も含め、今の世の中を象徴する話のような気がします。


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