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ふさわしい不倫(19)

そう言えば、大地はカップル喫茶に行ったことがあると言っていた。
アプリで知り合った女性が連れて行ってくれて、数回利用した時期があったそうだ。

カップル喫茶は、男女のカップルでしか入店できない。他のカップルと話して、お互いの同意があれば、連れを交換してエッチするらしい。

「大丈夫、嫌だったしなくていいんだよ。無理やりってことはないから。」

まさか昼間に営業してるとは、想定外だった。
こういうお店は夜営業だと思い込んでいたので、あまりに突然で驚く。

「ちょっと、なんで!?」

「何でって前話したとき、興味持ってたじゃん。」

大地の顔。
また、私が物分かりが悪いみたいな顔をしている。

「分かったよ。入るだけね。」

まぁ、社会科見学と思えば、それだけのこと。
40歳が動揺することでもない。


入口には若い男性が1人いて、大地は3000円を払った。安い。
店内は薄暗くて、カラオケのような雰囲気だ。ソファーとテーブル、棚には自由に飲めるお酒などが置いてあった。

とりあえず、大地と並んでソファーに座った。

1組のカップルがいた。
パッと見た感じ、普通の人たちだ。

50代くらいの白髪混じりで、昔飲んだ内科医のような穏やかな雰囲気のおじさんがこちらを見ている。
筋肉質で強面の半グレみたい男がいるのかと思ったので、少し安心した。

隣にいる女性は30代くらいかな。
黒髪ストレートのミディアムヘアで、かなり地味な顔だ。

すると、別のカップルが斜め前に座った。
私たちと同じ年代か、少し下に見える。

男女ともに、容姿が整っているが、男性は上半身は裸で、女性の方は羽織ったコスプレみたいなシャツから胸が見えていた。

男性が「よく来ますか?」と話しかけてきた。大地が「僕は前に来たことがあって、そこそこ。この子は初めてで。」と言った。

すると女性が、「私は、この人に連れて来てもらって、初めはびっくりしたけど、ぜんぜん危ない場所とかじゃないですよ。」と私に向けて言うので、
何か話さなきゃと思って、
「お二人とも、いい感じの、イケてる感じですよね!」と褒めてみる。

実際、美男美女と言われるレベルではあった。
しかし、男性の方が、私が大嫌いな貧乏ゆすりをしているのが気になる。

私は大地の影に隠れるような姿勢を取って、無言で必死に乗り気じゃないですよアピールをした。すると、男性が見切りを付けて、2人は奥の部屋に消えて行った。

「私、無理だよ!あの人なんかイライラしてたみたいだよ。怖いよ。」

「じゃあ、帰る?」

「え、あ、、あっちの部屋はどうなってるの?
せっかく来たから見てみたい。」

(つづく)



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